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今日の日経新聞朝刊は、P.5全面を使って、TPP参加キャンペーンを展開している。
そこで見られる論調は、「米、貿易ルール作り主導 中国への対抗、強く意識」、「日米安保との2本柱に」、「政府、中国の動向を意識」、「外交上の重要課題」、「米中の戦略にらむ」といった見出しのオンパレードを見てわかるように、“経済の問題で済む話ではなく国家の安全にかかわる根本問題なのだから、TPPには参加するしかない”というものに彩られている。
あげく、日経新聞は、「日本が一部自由化に強く反対して交渉が遅れれば、その間にも中国が勢力を増すと、米政府関係者は懸念している」とまで書いて、交渉さえ不要で、米国の要求の丸呑みしてさっさとスッポンポンになるべきと言わんばかりの書き方までしている。
このような論調は、親米学者として名を馳せている中西輝政京都大教授と森本敏拓殖大教授の二人が、BSフジのプライムニュースで「TPPに参加するとかしないとかという話はないんです。経済問題なんかではないんです。安全保障の問題なんですから、日本は無条件に参加するしかないし、それが正しい選択なんです」(趣旨)と語った内容を少しオブラートに包んだものだ。
さすがに、TPPのどこが日本の防衛(安全保障)に関わるかについては、米国のご機嫌を損ねるからまずいとか、国際問題で米国と共同歩調を採らないと日米関係をおかしくするといった程度で説明するできないから、中国との関係を持ち出して、重大な“安全保障”にも関わっているのからTPPへの参加は不可欠だという気分をなんとなく醸成し、政府のめざす方向に世論を誘導しようとしているのだ。
中国諸都市で起きた日系商店破壊騒動、日の丸焼打ち事件などもあって日本人の対中感情は悪化している。
政府・メディア・親米学者なども、「米中の対立」、「米中の覇権争い」、「中国の軍事的台頭」、「アジアの海や島嶼に領土的野心を持つ中国」と中国脅威論を浸透させてきており、感情と論理が一体となった中国嫌悪意識が募っている。
政府が中国を使って望む方向に外交を誘導できる条件は熟している。
しかし、ターゲットになっている中国は、中国高官が米国高官に「TPPは中国包囲網を目的にしているものではないですよね?」と訊いたという話がある程度で、TPP潰しやTPP反対キャンペーンの動きには出ていない。
(「TPPは中国包囲網を目的にしているものではないですよね?」と笑いながら冗談で言った可能性はあるが、中国高官が本気でそれを訊くことはありえない。そうですよね、森本さん)
政府自らがアジアの成長を取り込むといっているくらいで、その中心である中国は、量的にアジア経済の雄であり今後も成長を続けていく。
米国がそのような中国に、深くて広い経済関係を築きたいと戦略的に働きかけることはあっても、敵対するような通商政策を採るわけがないことはちょっと考えればわかる。
財貨の貿易も、雑貨や衣類などは米国企業の中国拠点からの対米輸出であり、それ以外の物品に関しても、劣化するドルの価値を補って安価に輸入できるメリットを享受している。(米国の労働者はそのためにひどい状況が強まっているが..)
米中間でも、包括的なものでなく、知的所有権や金融サービスなどの個別案件で交渉が行われており、航空機など政府系企業の調達をうまく使いながら徐々に経済関係を強化している。
高度成長期までの日本と違って、条件付きながらも外資を積極的に誘致している中国と米国の経済関係は、それほど悪くはないのである。
米国にとって、日本はこれから先は期待できない国だが、中国はこれから先こそ期待できる国である。
日本と中国の関係では理解できている政府が、米国と中国の関係では理解できない(ふりをしている)のだ。
中国の国策としてあり得ない話だが、仮に、現在や近未来の中国がTPPに入っても、得するのは米国であり日本ではない。
日本と中国は、中国の対米輸出増大を条件として、今まさにWIN―WINの関係を享受している。
TPPを築くことで、将来的に中国をTPP的ルールに引っ張りこめるという理屈も繰り出されているが、米国と日本で90%以上のGDPを占めるような歪なTPPがそのような役割を果たすはずもない。
そのようなゴマカシのために使う期待論よりも、10年よりも先の話だろうが、将来の中国が、TPPに参加せずに、TPP的な門戸開放を日本などに迫ってくる可能性を危惧したほうが利口だ。
13億の人口を抱え、食糧をある程度輸入に頼るしかない中国は、内陸部の農家を“自給自足”+金銭援助に押しとどめ、農産品の障壁を大きく下げることも可能である。
そしてその見返りに、財貨の「自由貿易」や政府調達で「中国人労働者込み受注」ができる条件を要求するかもしれない。労働者込みの受注形態は、アフリカなどの政府調達事業で実際に広く行われており、プロジェクトが終われば中国に引き上げるから、「単純労働者の流入」にはあたらないだろう。
何より、米国は、中国の将来にさらに期待をかけているのだから、金のガチョウを絞め殺すような愚策を採ることはしない。
育たない日本と育つ中国、米国がどちらを選択するか自明ではないか。
育ち終わった鶏やガチョウは締められて食べられることを忘れないほうがいい。
野田首相補佐官である長島氏は、「『アジア太平洋の秩序は日米でつくる』というぐらいの積極的な視点が必要」とも強調したそうだが、カラ威張りやカラ念仏はみっともないからやめたほうがいい。
愛国心や道徳心を声高に叫んだり、強腰外交を!と訴える連中のほうが売国の輩であることが一般的だ。なぜなら、そのような言動で、自分の売国性を隠すことができるからだ。
独立主権として最低限のかたちさえ採れない国家が、世界秩序を領導してきた大国と一緒にアジア太平洋の秩序がつくれると言っても寝言でしかない。
米国が望むアジア太平洋の秩序のために犠牲になるのが日本というのが正鵠を射ている。
日経新聞は、「アジア太平洋地域の経済連携を進める枠組みとしては、TPPだけでなくASEANに日本、中国、韓国が参加する「ASEANプラス3」も有力な候補になる。米中が枠組みを巡って綱引きを演じる構図だ」と書いているが、現実の覇権国家米国がいない「ASEANプラス3」でEUにおけるドイツのような中心的役割を担えないなら、米国が主導しているTPPで日本が中心的役割を担いことは自明であろう。
同じ紙面に、「貿易自由化によるGDPの押し上げ効果」の試算が掲載されているが、TPPは0.54%であるのに対し、「ASEANプラス3」は1.04%である。
別に、だからといって多国間の経済連携を進めるべきだとは言わないが、「ASEANプラス3」の交渉を主導できるかどうかが今後の日本にとって大きな試金石と言える。
現在は、中国も韓国も、輸出を拡大するために必要な基幹部品・最先端素材・機械装置などを日本に依存している。 東南アジア諸国との関係も、企業進出やODAで良好だ。
これだけ有利な条件に恵まれている「ASEANプラス3」で交渉を主導できなければ日本の外交力はなきに等しいとのそしりを受けてもやむを得ないだろう。
日経新聞は、「日本のTPP参加については、基本的に歓迎するが、絶対条件とは考えていないようだ。むしろ「米国が日本に参加を強く求めている」と言われるのを嫌う雰囲気が強い。TPP交渉に参加している9カ国の経済規模は名目GDPで世界の27%程度。日本が加われば、36%と大幅に拡大する利点がある」と書いて、TPP参加が米国の押し付けではないと必死になっている。
米国政権は、日本国内にそれなりの割合でTPP反対論があることを承知しているのだから、わざわざ“反米感情”を煽り反対論に油を注ぐような言動を公にするわけがないことも自明だ。
米国が強く求めていないかどうかは、日本がTPPへの参加を渋ればわかるだろう。米国政権は本気で日本に圧力をかけてくるだろうし、日本が参加しなければTPPの交渉自体が中断する可能性も高いと思っている。
「9カ国の経済規模は名目GDPで世界の27%程度。日本が加われば、36%と大幅に拡大する」と数字のマジックを駆使したつもりの説明をしているが、27%のうち米国が24%(88.9%)、36%のうち日本(8.7%)と米国で合わせて33%(91.7%)を占めているのだから、日米の経済規模は大きいと言っているだけものだ。
こうして考えると、昨年起きた「尖閣列島中国漁船船長逮捕」問題は、中国脅威論をさらに浸透させるための仕掛けだった可能性もある。なにせ、国交大臣としてその“指揮”をとったのは、親米学者ほどの思考力もないまま、尻尾ふりと鳴き声(口先)で現在のポジションを手にした前原氏だからである。そして、時期的にも菅前首相が唐突にTPPを持ち出したタイミングと同期している。
(米国政府は認めているわけではないが、尖閣列島は日本の領土である。しかし、日中平和条約でも領有権は確定しておらず、漁業については「日中漁業協定」で中国船規制地域外になっている。それまでも、尖閣列島海域には入域許可証を持つ中国漁船が来航し漁をしてきた。仮に、あの漁船がただ漁をしていただけで海上保安庁の巡視艇から「停船命令」を受ければ、衝突行為は犯罪で正当防衛だとは思わないが、“ふざけるな!”となっても別段おかしなことではないのだ。台湾との関係もあるが、中国との間で決着を付けていないツケがあの事件でもある)
※ ベトナムなどがTPPに参加する狙いをまとまた外務省の文書にも批判を加えたいが別の機会にする。
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[以下の記事はすべて11月4日日経新聞朝刊P.5からの引用]
米、貿易ルール作り主導 中国への対抗、強く意識
米国はTPPを通じて、今後の貿易・投資のルール作りを主導したいと考えている。強く意識しているのは中国だ。
10月下旬の議会証言。米通商代表部(USTR)のマランティス次席代表は「中国がアジア・太平洋で(自由貿易)協定を増やす中で、TPPは米国の競争力を維持するのに必要不可欠だ」と強調。プレイナード米財務次官(国際担当)も「中国を我々が望む知的財産や市場原理に基づく為替相場、公平な競争条件に引き寄せる戦略の一部だ」と語った。
一方、日本のTPP参加については、基本的に歓迎するが、絶対条件とは考えていないようだ。むしろ「米国が日本に参加を強く求めている」と言われるのを嫌う雰囲気が強い。
TPP交渉に参加している9カ国の経済規模は名目GDPで世界の27%程度。日本が加われば、36%と大幅に拡大する利点がある。だが、日本が一部自由化に強く反対して交渉が遅れれば、その間にも中国が勢力を増すと、米政府関係者は懸念している。
(佐藤大和、島谷英明、佑藤理、御調昌邦、本田幸久、亀井勝司が担当しました。)
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政府、中国の動向を意識 「外交上の重要課題」
政府が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を目指す背景には、アジア・太平洋地域の外交・安全保障をにらんだ戦略もある。軍事、経済の両面で急速に大国化した中国への懸念は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に潜在する。日本としては、TPPを日米安保体制との2本柱に据える狙いだ。
野田佳彦首相が外交・安保の専門家として首相官邸に迎えた長島昭久補佐官は1日、都内の講演で「中国から見て『なかなか手ごわい』と思わせるような戦略的環境を整えていくということだ」とTPP交渉参加の意味を明言した。長島氏は「『アジア太平洋の秩序は日米でつくる』というぐらいの積極的な視点が必要」とも強調し、対中国の観点で日米がTPPで連携すべきだとの認識も示した。
ASEAN各国はTPPで米国のこの地域への関与を高めることを模索する。
外務省がまとめた文書では、シンガポールがTPPに参加する理由を「中国の影響力を過度に大きくさせず、ASEAN地域への米国の持続的関与を引き出す」と分析し、ベトナムについても「対中国依存からの脱却」と明記した。経済だけでなく、安保戦略上からも、TPPが重要な枠組みに浮上している構図がうかがえる。
米国も欧州の混乱や潜存的な経済成長力、安保上の観点からもアジア太平洋重視に軸足を移している。当初シンガポールなど小国主導で発足したTPPの枠組みは米国にとっても好都合だった。
アジア太平洋地域の経済連携を進める枠組みとしては、TPPだけでなくASEANに日本、中国、韓国が参加する「ASEANプラス3」も有力な候補になる。米中が枠組みを巡って綱引きを演じる構図だ。
この意味からも、米国の影響力が強いTPPへの参加は「日本にとって重要課題だ」と外務省はみている。
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