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TPPに賛成する人の言い分の視点は決まっている。それは「関税と農業」である。曰く、「自由貿易は経済理論上正しい」とか、自由貿易・加工貿易立国として日本が生きて行くには、TPP=関税撤廃だという。そして返す刀で、TPP加入により日本の農業を、国際競争力のある農業に改革すべきだと言う。このようにTPP賛成論者の多くは、TPPを「関税と農業」の問題だけだと誤解している。
これに対し、TPPに反対する人は、それ以外のことについて具体的な事柄を挙げてTPPの危険性を訴えている。将に好対照である。筆者は自由貿易・加工貿易立国論者であるが、だからと言ってTPP加入に賛成はしない。過去の農業政策が、高関税と補助金漬けであったため、農業が駄目になったとか、「TPPは『やる気のある農家』に生き残ってもらえるチャンスだ」とか言う古閑某なる評論家にも賛成しない。
中には、アメリカによる発展するアジア経済圏への橋頭堡であるとか、オバマ政権の景気浮揚策とか、アメリカの経済戦略であると認識した上で、中国との貿易自由化交渉を有利に進めるために、TPP加入は一つの方法だと言う者もいる。世界第一と第二の人口を擁する中国とインドの経済成長が、21世紀の世界経済の牽引車になる。日本がその市場拡大に備えるのは当然であるが、それがTPPだとは限らない。
TPP賛成論者には、決定的に欠けているものがある。それは【国家主権】への視点である。以前本欄で紹介したISD条項と呼ばれる「投資家vs国家の紛争解決条項」がある。国民の生活や健康を守るため、国が制定した法律や規制により、外資系企業の営利活動が規制された場合、その企業は現地国に損害賠償請求ができる、という取り決めである。こんな【国家主権】を無視した馬鹿な話があるのがTPPである。
東京大学名誉教授宇沢弘文氏は「世界各国はそれぞれの自然的、歴史的、社会的そして文化的諸条件を十分考慮して、社会的安定性と持続的な経済発展を求めて、自らの政策的判断に基づいて関税体系を決めている」と指摘したそうだ。確かにその通りであるが、TPPは関税・経済だけの問題ではない。非関税障壁の撤廃であり、さらには【国家主権】が侵害される問題なのだ。
既にTPPに加盟しているニュージーランドのジェーン・ケルシー教授が、今年の7月仙台でTPP問題について講演し、次のことが明らかになった。即ち、参加する場合は次の4点の承認が条件になるそうだ。@文書は協定に署名するまで非公開。A協定は脱退しない限り永続。B規則や義務の変更は米議会の承認を必要。C投資家は政策的助言に参加し、規制を受ければ投資家が加盟国政府を控訴可能。
先ず「文章は協定に署名するまで非公開」では、TPPの是非を国民が判断できないではないか。主権在民の民主主義に反する協定である。次に、なぜ「米議会の承認」だけを必要とするのかである。これでは加盟国は対等ではない。他の加盟国はアメリカの植民地乃至は隷属国ということになる。そして最後の「投資家は政策的助言に参加」ということは、他国の政策に外資が介入するということを意味する。
先月、外務省が民主党の「TPPに関するプロジェクトチーム」に提出した資料によると、ベトナムはTPP加盟により「脱中国経済とアメリカ向け輸出の増加」を、またマレーシアは「東南アジア諸国連合(ASEAN)での主導権」を目指す方針だそうである。経済小国ならば、アメリカに奪われるものは少なく、得るものが大きければ、アメリカの力を借りるという選択肢もある。だが、日本は違うだろう。
TPP賛成論者の多くが、なぜ【国家主権】への視点が欠け、「関税と農業」だけを言うのか。多くの場合は情報不足によるものだと思う。上記のジェーン・ケルシー教授の講演内容を報道したマスコミはおそらくゼロ。筆者も最近ネットで知ったばかりである。官僚は、国民に知らせて拙いことは一切隠して来た。そして先月末になって「TPP協定交渉の分野別状況」と題する79ページもの分厚い資料を出して来た。
マスコミもTPPの問題点を承知の上で、TPP賛成の世論誘導を図っている。上記の「分野別状況」について詳しく報道したマスコミは無いだろう。前回の本欄で紹介したように、「米国が最も評価するタイミング」だとかいう馬鹿げたことしか報道しない。官僚に完全に操られている野田首相、玄葉外相そして枝野経産相らが気にするのは、そのマスコミの評判だけである。どう叩いても「国民の生活が第一」という声は、彼らから聞こえてこない。
http://www.olivenews.net/news_30/newsdisp.php?n=117300
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