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昨日行われた参議院と衆議院の代表質問を見たが、野田首相の答弁は、内容も話し方も官僚の答弁と同じで、ズラシ・はぐらかし・無視・あいまいといった手法を駆使しながら事務的に答えるというもので愕然とさせられた。
TPP参加問題については、共産党の志位委員長と新党日本の田中代表のように本質的で多面的な質問もあったが、「アジアの成長を取り込むために必要」と「交渉に参加した後は、協定が国益に沿ったものとなるよう最大限努力することば当然」で終始する不誠実さを見せた。
(昨夜のBSフジの「プライムニュース」が田中康夫氏の代表質問を取り上げ、田中氏がTPPの「経済効果は小さい」と指摘したとまとめたのには驚き笑った。田中氏は、「TPPは国家社会をめちゃくちゃにするのに、肝心な経済効果はほとんどない」(趣旨)と指摘し、国会議員全体にTPP参加阻止を訴えたのにである)
野田首相の口から、政治を行う上でのモットーは「正心誠意」だとか、「被災者の支援と災害からの復興が第一優先の政策テーマ」や「生まれて良かったとプライドが持てる国」という言葉が発せられると、言語というものがいとも簡単に魔性や毒性を帯びるものだと痛感させられる。
後ろに転載している日経新聞の記事によると、それで党内の慎重派や反対派が説得できるとは思ってもいないだろうが、民主党のPT総会に外務省の官僚を送り込み、アリバイ以上の意味はない説明を行ったようだ。
交渉参加表明が差し迫っているなかで、関税などの例外品目について「極めて限られてはいるが、一定程度の例外的な扱いが認められる可能性はある」という一般論を語ってもお遊びでしかない。
この時点なら、たとえば、コメの関税措置は譲らないとか、10年間は最低○○○%の関税をコメについて確保するといった条件を示し、それが実現できない場合はTPPには参加しないという話でなければ、子どもの使い未満である。
こんな話でごまかすのなら、仮にコメの関税がまず大幅に引き下げられ、その後も段階的に引き下げられ、10年後に関税撤廃という合意になったとしても、「国益に沿ったものとなるよう最大限努力」し「一定程度の例外的な扱いが認められた」と言い張れる。
(それはないと思っているが、米が即時関税撤廃になっても、「例外的な扱いが認められる可能性はあくまで可能性であったが、最大限の努力はしたが大局的見地から受け入れた」と説明するだろう)
笑えることに、日本にも「一定程度の例外的な扱いが認められる可能性はある」の根拠が、「農業大国の米国もTPP交渉で、FTAを締結済みのオーストラリアとは関税交渉を再実施しない方針を表明。米豪間では乳製品や砂糖を引き続き関税撤廃の例外にする」からだという。
どういうロジックで、日豪間の交渉内容が日本にとって「一定程度の例外的な扱いが認められる可能性」につながるのか説明してもらい。米豪間は、FTAで相互の利益の在り方で合意しているから、TPPでことさら変更をする必要はないというだけだ。
日本がすぐに脱がされてスッポンポンにされることはないと思うが、すぐに“夏服”レベルには着替えさせられるだろう。
TPP推進派のメディアは、韓国の対米FTAを垂涎の的のように扱っているが、韓国は、主要輸出先である米国とはFTAを締結したが、オーストラリアやニュージランドといった農産品の輸出を基礎としている先進国型国家とはFTAの交渉さえしていない。
それでも、韓国の農家は、チリとのFTA締結で生活と共同体が破壊されると激しく抵抗した。
韓国の対GDP貿易依存度は、開発独裁のなかで70%近くあったが、民生安定的経済成長のなかで60%以下に落ち着いた。しかし、97年のアジア通貨危機を契機に、80%を超える異常ともいえる高い貿易依存度を示すようになった。
輸出ドライブで経済的苦境から脱却し対外債務を履行するという動きの反映だが、少数に再編された財閥系輸出企業は、その後も、国民生活を疲弊させながら“輸出マシーン”として肥大化していった。
(韓国は、輸出のために、日本などから部品や生産財を輸入しなければならない構造のため貿易依存度が80%を超える。日本は貿易依存度が20%前後で一時的に高くなっても30%ほど)
野田政権は、放射能汚染と震災で激しく痛みつけられた日本の農家を、米国・オーストラリア・ニュージーランドという穀物・肉類・乳製品で抜群の価格競争力を持つ国々との競争に一気に投げ込もうというのだから、韓国政府をはるかに超えた悪逆非道の農村破壊政権と言えるだろう。
極めつけが、「実際の交渉に加われるのは来年3〜4月。その頃には関税撤廃の例外品目を巡る交渉もヤマ場を迎えている」というスケジュールである。
このスケジュールからも、「交渉に参加した後は、協定が国益に沿ったものとなるよう最大限努力することば当然だ」という答弁や説明が、空手形であり、とんでもないマヤカシであるかわかるはずだ。
日経新聞は、それを受け、「日本に不利なルールを押しつけられないためにも参加表明を急ぐほうが得策といえそうだ」と書いているが、ルール交渉にはほとんど実質的に参加できないのなら、仮にTPPを是と思うにしても、慌てふためいて参加表明するより、9カ国の交渉がどうなるか見守り、その結果をじっくり検討してどうするか考えるべきだと主張するのがまっとうな判断力であろう。
TPP参加は「米国の保護国=日本」としての義務だと言いたいのなら別だが...
そんなことも言ってられないのだが、野田政権や官僚機構は、慎重派や反対派が「コメの関税がゼロになる」とか「公的健康保険制度が破壊される」と騒いでくれるのを陰で喜んでいるフシがある。
とんでもない約束をさせられる、ヒドイ状況が生まれると言ってもらっておいたほうが、「国益に沿ったものとなるよう最大限努力したので、米の関税撤廃は10年の猶予を勝ち取り、混合診療の導入や株式会社の病院参入も阻止した」と、交渉の“実績”を高らかに謳い上げることができるからだ。
国民のある程度の部分も、TPP反対と大騒ぎしてたけど、それほどひどいもんじゃなないと受け止めてしまうかもしれない。
混合診療の導入や株式会社の病院参入は、TPPで扱ってことを荒立てるより、すでに日本政府には通告済みでもあり、“日米交渉”を通じて実現をめざすだろう。
ただし、病院は、国立・県立・市立・公立大学付属病院など政府保有が多いので、それを理由に門戸をこじ開けられる可能性もある。
なにせTPPは社会活動を網羅する包括的な協定だから、ネガティブリストにない限り、理念的表現や抽象的な文言を根拠に、様々な“規制緩和”を押し付けられる可能性がある。
とにかく、保護国や信託統治国ではない独立主権国家が、内容もよくわからないまま、交渉にロクに参加できないまま締結に至ることがわかっている条約(協定)に参加を表明するなぞあり得ないことだ。
米国の意に沿うことこそが日本が生きる道という考え方も理解できないわけではないが、現時点でのTPP参加はあまりに度を超えた売国的所為であり、被災者にも顔向けできない悪行である。
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TPP例外品目も 政府、民主に交渉見通し
政府は31日、民主党の環太平洋経済連携協定 (TPP)に関するプロジェクトチーム(PT)の総会で、外務省がまとめた交渉の見通しに関する新たな見解を示した。
関税などの例外品目について「極めて限られてはいるが、一定程度の例外的な扱いが認められる可能性はある」と説明。同時に「いったん交渉に参加した後は、協定が国益に沿ったものとなるよう最大限努力することば当然だ」と強調している。
配布した資料は党会合で出た質問に、外務省や経済産業等など関係省庁が答える形でまとめた。政府が17日に同PTに示した資料では、関税の扱いに関して「個別に考える必要性は認めるとの考えを示す国もあり、コンセンサスに至っていないもよう」としていた。
政府は党内に交渉参加への根強い慎重論があることを考慮し、コメなどの例外扱いが認められる可能性について言及した格好だ。
混合診療や営利企業の医療分野への参入は「議論の対象となっていない」と指摘。米国への自動車輸出に伴う関税支払額は、2010年で年間700億円程度かかってると明らかにした。
(日経新聞11月1日朝刊P.1)
関税協議、関与が必要 TPP、早期交渉参加で
環太平洋経済連携協定(TPP)について、政府は民主党に示した資料で関税撤廃の例外品目が認められる可能性に言及した。TPP交渉参加国の間でも関税を巡る協議はこれから。日本は早く交渉に参加してルール作りに関わる必要がある。
TPPはすべての品目の関税を撤廃するのが原則。日本はすでに13カ国・地域と経済連携協定(EPA)を結んだが、コメや乳製品などの関税を残し、関税ゼロの品目は全体の84〜88%。TPPでは打撃が大きくなる恐れがあり、農業団体は強く反対する。
ただ、農業大国の米国もTPP交渉で、自由貿易協定(FTA)を締結済みのオーストラリアとは関税交渉を再実施しない方針を表明。米豪間では乳製品や砂糖を引き続き関税撤廃の例外にする考えを示す。
政府が「一定程度の例外的な扱いが認められる可能性」を指摘したのはこのため。すでに交渉を始めている国の間でも宗教上の理由で例外品目を設けたり、関税撤廃までの期間を延ばしたりする例がある。いずれにしても議論はこれからだ。
日本が11月に交渉参加を表明しても、米議会への90日間の「通告期間」などを考慮すると実際の交渉に加われるのは来年3〜4月。その頃には関税撤廃の例外品目を巡る交渉もヤマ場を迎えている。日本に不利なルールを押しっけられないためにも参加表明を急ぐほうが得策といえそうだ。
TPP 各省の見解要旨
外務省などが民主党の環太平洋経済連携協定(TPP)に関するプロジェクトチーム(PT)に示した見解の要旨は次の通り。
【TPPの利点】
人口が減少し内需が縮小していく見込みの中、旺盛な海外需電を取り込み、国内立地の競争力を維持することが不可欠。鉄鋼、化学、繊維、非鉄金属などの生産高の3〜4割は最大の輸出産業である自動車の国内生産用であるなど輸出産業は裾野が広いが、輸出が減ればスケールメリットを得ることができなくなり、国内生産そのものの産業としての成り立ちにも影響を及ぼす。
TPP協定は国内の事業環境を関税面などで諸外国と対等にすることで、輸出産業に限らず、地域の雇用を支える企業の海外移転を防ぐことにつながる。
【関税撤廃の例外品目】
TPP交渉では高い水準の自由化を基本とし、すべての品目を交渉の対象として原則として関税撤廃を目指すべく交渉が行われている。(関税撤廃の例外となる)重要品目については除外や再協議は原則として認めず、長期間の段階的関税撤廃というアプローチをとるべきだとの考え方を示す国が多いが、各国の状況によって個別の対応を考える必要性は認めるとの考え方の国もあり、合意には至っていない。
我が国がTPP交渉に参加する際には、すべての品目を交渉の対象とする意思を示す必要があるが、交渉の中で、極めて限られてはいるが、一定程度の例外的な扱いが認められる可能性はある。
【輸入食品の安全性】
TPP交渉では現在のところ、遺伝子組み換え食品の表示ルールなど個別の食品安全基準の緩和は議論されていないが、今後、提起される可能性は排除されない。しかし複数国間の交渉では、ある国の食品安全に関する措置の変更が他国から一方的に求められることは
想定しがたい。
【医療制度】
混合診療の解禁や営利企業の医療参入はTPP交渉で議論の対象となっていない。交渉参加国間の自由貿易協定(FTA)では金融サービス分野で公的医療保険制度は適用除外されている。
(日経新聞11月1日朝刊P.5)
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