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内容云々はともかく“入り口”=手続きですでに問題アリということで、TPPに関する投稿では、農業など個別分野の話やアジテーションになるような書き方は避けてきた。
しかし、31日の衆議院代表質問で、野田首相がぼやかしてはいるとはいえ「全力を尽くして交渉に臨むべきだ」と、党内及び国内での合意形成の有無や合意内容の如何を問わず、TPPに参加しようという方向を見せた今、農業問題に絞り少し過激なことも書かせてもらう。
100%とは言わないが、TPP参加を声高に叫んでいる人たちと原発を推進してきた人たちはほぼ重なっているように見える。
日本政府(官僚機構)・大手メディア(新聞・TV)・日本経団連(その他経済団体)・政府や経済団体からお呼びがかかる学者たちである。
ウソとゴマカシで3.11まで原発を強硬に推進し、福島第一原発の莫大な放射性物質放出事故後も、小休止期間はわずかで、電力不足問題や燃料資源問題を使いながら原発存続に向けた動きをじりじりと強めている人たちだ。
30日のNHK「日曜討論」でもTPP参加問題がテーマになっていたが、そこでのTPP賛成派の人たちの言動、とりわけ農業に関する言動を聞き、この人たちは、学識や論理思考力の前に、人として最低限の心を持っていないのではないかとおぞましさを覚えた。
TPP賛成派の農業問題に対する基本的な説明内容は、その他の機会でもほぼ共通しており、
○ 米の関税はすぐにゼロになるのではなく10年後の話だから猶予期間がある。
○ 日本の米や果物は食味や外観に優れている(さすがに安全性はあまり言及しない)。
○ 大規模化を進め、直接支払いの所得補償制度もしっかりすれば、外国とも競争できるし、輸出に活路を見出すことさえできる。
○ 農業従事者の平均年齢は65歳ほどであり、このまま時が進めば、農業は否応なく衰退する。
といったものだ。
締めくくりには、「日本の農業は優れており潜在力もあるのだから、TPP参加を絶好のチャンスとして農業改革を進めるべきだ」といった言葉が使われる。
このような説明も、“平時”なら、価値観や経済論理の違いと受け止め、自分の価値観や経済論理をぶつければいいと思う。
しかし、ほんの8カ月前、広島型原爆160個分以上と見積もられている放射性物質が福島第一原発から大気中に放出され、農地・森林・住宅(建物全般)・道路を放射能で汚染したという現実をまるで無視したような話を見過ごすわけにはいかない。
(大気中とは別に、海洋や地下水にも、大気中に匹敵する量の放射性物質が漏出している可能性がある)
福島を中心に東北から関東・甲信越・東海にはとりわけ高い濃度の放射性物質が降り注ぎ、農地から住宅・道路・森林まで、これからどうやって“除染”し、その後始末をどうするのかという途方もない難題の前に立たされている。
宮城・岩手・福島・茨城・岩手・青森・千葉は、地震と津波によっても、人や土地・施設が甚大な被害を受けている。
仮に、TPP推進派が語る農業に関する説明が100%正しいとしても、高い放射能濃度で耕作そのものが禁止された広い農地、耕作や栽培の見通しも立たない津波や地震による地盤沈下や塩害の農地、原発事故からの避難などのせいで失った家畜、糧や商品にできない森のめぐみ、そして、住居も仮設という被災者が多くいるという状況で通用する話では断じてない。
人的災難である放射能汚染の代表とされるセシウムは137で、半減期が30年である。米の関税がゼロになる10年後でも、期待する環境的半減期で半分になるかどうかなのである。(5年で半分という期待値もある)
住んでいる東京の野菜や果物の多くは、放射能に濃く汚染された地域から届く。原発事故後一時期は西日本から野菜も届いていたが、今はほとんど3.11前と同じような産地構成になっている。政府や大手メディアはなんとか流通している食品の危険性を払拭しようとしているが、同じ価格であれば、福島からより遠い産地のものや輸入品を選択するという人も多い。
物理的半減期が30年と長いセシウム137の汚染は、環境的半減期は短くなる可能性はあるとは言え、東北から関東の農産品に対する忌避意識が長期にわたって続くことを意味するのだ。
地震や津波は自然災害だから、国家と国民とりわけ地域の人たちが、支え助け合って難局を乗り越えていかなければならない。
しかし、原発事故による放射能汚染は、直接は東京電力と中央政府、さらには、原発を有用・必要・安全なものとしてその建設・増設の推進運動に与してきたメディアや経済団体そして学者の責任である。
(国民にも責任ありという論もあるが、今回のTPP参加問題とまったく同じで、ゴマカシ優先で基本情報さえきちんと出さない政府や電力会社そしてメディアにすべて責任があると考えている。そのような政府を選択してきた(させられてきた)国民は被曝や不安で十二分に責任をとらされていると言えるだろう)
菅そして野田と、民主党政権は、「命がけで復旧・復興に取り組む」と言ってきた。
しかし、政府が東電と並んで責任を負う放射能汚染と千年に一度と自ら言う歴史的大震災により被災地の農業条件がとんでもなく毀損されているなかでTPPに参加するというのなら、その言も、相変わらずの口先だけのゴマカシでしかないということになる。
東電の責任のようになってはいるが、民主党政権は、東電の従業員には給与がきちんと支払われているのに、避難で仕事ができなくなったり、出荷停止で収入に途絶えた人たちへの損害賠償がなされていない状況を放置してきた。
被害者にはそういう仕打ちをする一方で、東電には、特別損失となる損害賠償相当を原子力災害賠償機構から受け取って特別利益にすることで債務超過にはならない仕組みを与えた。
東電の損害賠償は、除染費用(数十兆円とも)を含めれば、資産売却や人件費・年金圧縮をしたとしても、ほとんどを全国の電気料金支払者と納税者が負担することになる。
全国ほとんどの人が、被曝はともかく、これまでにない不安に襲われたわけだから、被害者が東電に代わって損害賠償をするという信じられない話になってしまったのだ。
このような政府が目論むTPP参加は、はっきり言わせてもらうと、放射能や地震と津波でこの先明るい展望が見えない農村地域は、たいしたレベルではない輸出優良企業の経済的メリットや我が身がかわいいか愚かな政治家のために犠牲になってくれという政策なのである。
最低限の心を持つ政治家であれば、復旧が終わるまでは、他の産業分野でメリットがあるとしても、被災地域の生活や復興を阻害するような政策は採らないものだ。
きっちりとした所得補償制度等の農業強化策も、TPPに参加せずとも実施されなければならないものである。
ともかく、震災と原発事故から立ち直るまでは、被災者の経済活動が不利になったりおかしくなるような政策は採らないのが、「命がけで」と言わない政府でも当然のようにとる態度だ。
TPPに参加すると、関税撤廃後の日本向けに輸出される米の多くが商社を含む日系企業の手によるものになるのではないかと思っている。ベトナム北部は気候風土的にジャポニカ米の育成に適しており、地代も人件費も安いから、日本向け高付加価値農産品ということでベトナム政府とうまく交渉すれば、そのような条件が手に入る可能性があるだろう。
米国やオーストラリアは、土壌や水(干ばつ)の問題もあり、米の持続的で大量の対日輸出は難しいと思われる。
ベトナムなど諸外国で日本向け米作が行われるようになったとしても、必ずしも日本向け輸出が継続されるという保証はない。気象条件や世界的経済変動などの要因で、輸出がシャットアウトされたり他の国に輸出されてしまうこともあるだろう。
TPPに参加するとわかれば、福島を中心とした東北・北関東の農村の人々は、将来やってくるはずの経済的打撃を受ける前に、精神的に深刻なダメージを受けるに違いない。
喪失感と不安を抱えながらも、助け合い支え合いながら粘り強く復旧に尽力している人たちも、TPPへの参加を選択した政府を見て、“棄民”という意識を持ちかねないとも思っている。
被災者をそのように追い込みかねないTPPに参加しようとしている野田首相の口から、「被災者のために」とか、「復興に命がけで取り組む」という言葉を聞くのはあまりにシュールだ。
国民多数派の生活条件の向上よりも、ごく一部の利益のために貨幣価値を維持することに熱心な先進諸国の政策動向から、中国やインドで経済成長がうまく続いたとしても、「利潤なき経済社会」はそれほど遠くない将来にやってくると考えている。
経済的利益がどうの、競争力がどうのという話も、国民経済レベルで利潤が確保されている状況があればこそだ。
「利潤なき経済社会」では、社会主義や共産主義ではない共同体主義に依拠した国家社会の運営が行われなければ、おぞましい修羅場と化すだろう。
農村の経済基盤を確固たるものにし、農村社会の伝統的様式が維持される政策は、そのためにも重要なのである。
※ 古いもので恐縮だが「利潤なき経済社会」について参考にしていただきたい投稿
「【利潤なき経済社会に生きる】「利潤なき経済社会」の“経済論理” 〈その3〉」
( http://www.asyura.com/2002/hasan13/msg/948.html )
「【世界経済のゆくえ】 「定常状態」あるいは「歴史段階的動態均衡」という経済状況」
(http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1190.html)
「【「近代」から一歩先を見据えて】 「利潤なき経済社会」に生きる 〈その1〉」
( http://asyura.com/2002/hasan13/msg/386.html )
「【「利潤なき経済社会」に生きる】 「利潤なき経済社会」における市場と競争 − 「近代的市場」とは何か − 〈その4〉」
( http://asyura.com/2002/hasan14/msg/910.html )
「【「利潤なき経済社会」に生きる】 「利潤なき経済社会」における市場と競争 − 「近代的競争」とは何か − 〈その5〉」
http://www.asyura.com/2002/hasan14/msg/926.html
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