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2011年10月30日(日)「しんぶん赤旗」
主張
農業「再生」計画
再生どころか、なりたたない
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関税を原則ゼロにして農産物の輸入を完全自由化する環太平洋連携協定(TPP)への参加が日本の農業に壊滅的な打撃を与えると懸念されているなか、TPP交渉への参加を狙う野田佳彦内閣がこのほど、「我が国の食と農林漁業の再生のため」とうたった、「基本方針・行動計画」を閣議決定しました。TPP参加に直結しないと説明していますが、野田首相が交渉参加を表明するといわれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を目前にしているだけに、TPP参加への条件づくりの一つとみられています。
危機の原因にはふれず
「基本方針」は、「我が国の食と農林漁業は、所得の減少、担い手不足の深刻化や高齢化といった厳しい状況に直面している」とし、「食と農林漁業の競争力・体質強化は待ったなしの課題」だとしています。そのために「農林漁業再生のための七つの戦略」を掲げ、今後5年間の工程表だという「行動計画」を持ち出しています。
農林漁業の危機打開は緊急の国民的課題ですが、それには原因を明らかにした適切な対策が不可欠です。原因は多面的です。長年の輸出産業を中心にした大企業優遇策のもとで歴代政府がアメリカの農産物輸入拡大の要求を受け入れ、国内ではアメリカの農産物とできるだけ競合しないよう政策誘導し、そのあげく、生産を奨励してきた畜産や果実まで自由化するなど、国内農業を軽視してきたことに最大の原因があります。
「基本方針」は、危機の原因や外国との自然条件の違いを考慮せず、もっぱら国内農業に競争力の強化を求めています。農業では、「平地で20〜30ヘクタール、中山間地域で10〜20ヘクタールの規模の経営体が大宗(たいそう)を占める構造を目指す」と大規模化を中心におき、「農林漁業関係者の意識改革を図」り、1次産業の農林漁業に加工や流通の役割も持たせる「6次産業化」をすすめるなどというものです。
大規模化は、ほ場の大区画化と担い手に農地を集積できる仕組みづくりで、農業への企業参入を広げることです。「基本方針」は小規模経営を「政策の対象から外すことを目的とするものではない」といいます。しかし、現に生産を担っている多くの農家が対象外になり、地域の農業や集落の破壊が懸念されます。
「6次産業化」は農林漁業者に付加価値をつける努力が弱いとして打ち出された対策です。生産者の自主的努力に光をあて生かすことは大切ですが、すでに加工食品や外食の割合は高くなっており、「6次産業化」にすべての担い手が参加でき、競争力強化の切り札になる条件はありません。
食料主権ふまえ見直しを
TPP参加との関連ではとくに、「高いレベルの経済連携と両立しうる持続可能な農林漁業」の実現を「目指すべき姿」として掲げているのは重大です。大規模化の目標が達成できても関税撤廃に対処できる保証はありません。根拠も示さず「両立」できるようにいうのは欺瞞(ぎまん)です。TPP参加はやめるしか道はありません。
国内の農林漁業を立て直すには、適切な国境措置と価格・所得補償など、日本の条件にみあった政策が保障される食料主権の確立を展望し、農林漁業政策を根本から見直すことがいよいよ必要です。
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