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http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1109win.pdf
TPPと原発
TPP交渉へ参加するか否かの議論は,東日本大震災の発生を受け,実質的に中断の状態
となっている。しかし,本年11月のハワイでのAPEC首脳会議にむけて,TPP推進派は震
災復旧と原発事故処理の混乱の中においてさえなお,参加にむけて「いまこそ開国,高度
な経済連携が必要」の主張を繰り返すことになるだろう。TPPについてはすでに反対ある
いは慎重論の立場から多くの疑問・問題点が指摘されているにもかかわらず,残念ながら
推進論からの論理的・説得力のある説明はなく,議論は深まっていない。警戒すべきは,
TPPが及ぼす影響についての議論が深まることなく,多くの国民にその問題点を十分に知
らされないまま,外部圧力に応じる形で交渉参加容認の世論形成が進められることである。
福島第一原発の事故により,我々は原子力災害がいかに多くの人々の安寧を損ねること
になるか,を思い知らされた。奪われた故郷,放射能後障害についての不安,は金銭的な
賠償で回復できるものでもない。原子力発電の安全性と発電コストの優位性およびクリー
ンエネルギーであるとの喧伝は,すでに多くの識者が指摘していた問題を無視することに
よって成り立っていたということも明白になった。核を完全に制御することは不可能であ
り,一旦事故が発生した場合は多くの人々の基本的人権を著しく侵害することになる,と
いうことは容易に想像できたはずである。にもかかわらず,あえて不都合な事態の予測は
行わず,単純な疑問にも答えない,という手法で多くの国民はいわば「だまされてきた」
といえる。
TPP推進論についても,原発安全神話を形成した過程に共通するものがある。第一に情
報の不足。「TPPは21世紀型の新しい貿易秩序で,貿易立国たるわが国に不参加の選択肢
はない」という結論が最初にあり,その結論に不都合な情報は示されない。例えば,推進
論者は「FTAAPに拡大する」と主張しているが中国の参加は見込まれず,そのような主
張は非現実的な希望にすぎない。第二は,想像力を欠いた狭量さに基づく一面的な利益の
優先。グローバル企業の利益優先がもたらす地域社会の荒廃が容易に想像されるのに,推
進論者は根拠もなく「なんとかできるはず」と言う。しかし,例えば通年放牧が可能で舎
飼いの必要がないニュージーランドの酪農に伍していける環境はわが国には存在しない。
関税措置を直接支払に代えればよい,という主張も財源の確保が懸念される現状で説得力
は乏しい。
菅首相が「脱原発依存」を表明した際,原発維持論者から「唐突だ」「これまで議論が
されてこなかった」「思いつきだ」の声が一斉にあげられた。そして,「原発からの脱却は
電力料金の上昇につながり,産業の国際競争力を阻害する」結果,「企業の海外移転が余
儀なくされ,雇用を失う」との主張が続く。しかし,唐突かつ議論が不十分なのは,TPP
交渉参加論である。また,「企業の海外移転と国内産業の空洞化」はTPP推進論者がTPP
不参加で懸念されるデメリットとして強調しているものでもある。
原発事故で多くの人々が故郷を奪われた。我々はTPPによってさらに広範囲に故郷が奪
われることを恐れる。原発が人々の安寧を奪ったと同様にTPPによって社会の安寧が失わ
れることを危惧する。このような思いから,当社は『異常な契約〜TPPの仮面を剥ぐ〜』(オ
ークランド大学ジェーン・ケルシー教授編著)の翻訳に参加した。また,今月号にはあらため
てTPPの問題を指摘する石田・清水の論文を掲載しているので,ぜひご一読いただきたい。
((株)農林中金総合研究所 専務取締役 岡山信夫・おかやま のぶお)
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