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日経新聞よりも、「新成長戦略に混合診療を原則解禁する旨の表現を盛り込んだ」民主党政権のほうがより問題なのだが...
最高裁の判決が出たタイミングで出たものなので、社説の目的をTPPとは結び付けないが、TPPや米韓FTAが話題になっている今だからこそ、「混合診療」とTPPが融合した社会がどのようなものか推察してみたい。
覚えている方もいると思うが、「混合診療」は、実のところ、あの小泉政権時代の04年に解禁の方向が打ち出されている。
経済財政諮問会議で、竹中経済財政金融担当相と宮内オリックス会長という新自由主義者コンビが先導して当時の小泉首相から了承を得たが、医師会や厚労省(当時坂口力大臣)の強い反対があり流産した。
困ったことに、「混合診療」の解禁は、TPP参加問題以上に一般国民を納得させやすいテーマかもしれないと思っている。
ガンを中心に少ない負担で最先端の医療が受けられる“思いやり”のある“やさしい”制度変更だと説明できるテーマだからである。
では、小泉氏・竹中氏・宮内氏のトリオが、“思いやり”と“やさしさ”を発揮して「混合診療」の解禁を打ち出したと考えてよいのだろうか。
幸いなことに流産したので、解禁で変わった日本の医療制度を見ることはなかったが、徐々に次のようになっていったのではと思っている。
● 健保財政の危機もあり、「混合診療」の解禁が行われていたら、その流産から生まれた保険外併用療養費の「評価療養」(先進医療・医薬品の治験に係る診療・医療機器の治験に係る診療・薬価基準収載前の承認医薬品の投与・保険適用前の承認医療機器の使用・薬価基準に収載されている医薬品の適応外使用)が「自由診療」になっていたはずだ。
「評価療養」は保険が適用される特殊な診療で、保険適用の可否を決めるデータ収集という建前になっているが、藁にもすがりたいが経済的にそれほど余裕がない重篤な患者の救済という側面も持っている。
「混合診療」で「評価療養」が「自由診療」になっていたら、3割負担(例)から10割負担になる。月々100万円の費用がかかるものなら、月30万円(高額療養費制度で一般的に月当たり約8万7千円の負担)であったものが、月100万円の負担になる。
もちろん、「評価療養」の指定を受けていない診療を受ける人なら、「混合診療」の解禁で、健康保険適用部分ながら自費で支払っていた部分は、3割負担(もしくは高額医療費制度限度額)で済むようになる。
このような変化で、健保財政が少し楽になり、藁にもすがろうとする人には経済的負担がのしかかってくるようになる。
● このような医療状況になれば、散歩のおじさんやアヒルがテレビや巷で闊歩し出すのではと想像するのはそれほど難しくないはずだ。
宮内氏が「混合診療」の解禁を強く主張した背景にオリックス保険があることは間違いないと思う。
かつて民間の医療保険といえばガン保険だった。そのガン保険は、対米従属の一つの象徴でもあった。
国民皆保険の日本では必要性が低いこともあったが、ガン保険などの第三分野の保険は、日米交渉の結果、日本の生命保険会社や損害保険会社が取り扱えないという異様な話になった。
現在は国内の保険会社を含め様々な保険会社がガン保険を販売しているが、外資の独占が2000年いっぱいまで続き、自由化の期限を迎えた時点でも参入が許されたのは大手生命保険会社と損害保険会社子会社の生保のみだった。
ガン保険は、罹患と手術に対する見舞金や差額ベッド代の補てんという意味合いが強く、診療ができるかできないかとはそれほど関わりはない。
「自由診療」を受けたときに支払われる保険は、最近よく耳にする“最高1千万円まで先進医療保険”に近いものと考えればいいだろう。(重粒子線などの先進医療は望めばやってくれるものではなく、1万人に一人が適用されるかどうかというもの)
達観している人はいいが、なんとか生き延びたいと考えている人は、保険適用診療が「自由診療」に移ったり、新しい治療法が「自由診療」で出てくるにつれ、なんとしても民間の医療保険に加入しなければならなくなるだろう。
それは、民間の医療保険に入っていないから、標準的癌治療さえ受けられないという事態が生まれる可能性さえ示唆する。
● 標準的癌治療さえ受けられないという事態という今ではとんでもないレベルの話を持ち出したのは、民間の医療保険を販売する企業が、利益の拡大のため、「自由診療」の適用範囲を広げようと政府に働きかけると予測するからである。
オリックスの宮内氏は、「一度,混合診療になったものを健康保険の対象に入れてはならない」と言ったという。なぜなら、自分たちの保険適用範囲が縮小し、保険料収入が減るからである。
米国の保険会社は、公的健康保険がないなか、医療保険の商売について多大なノウハウを持っている。
「混合診療」が解禁されたとき、どこのだれが利益を手にし、その利益を誰が与えることになるのか見えてくるではないか。
確実なのは、利益を与えるのが我々国民であるということだ。
● さらに、「自由診療」に高価な“先進医療”や“特効薬”が次々と流れ込んでくるはずだ。
皆保険で保険診療が建前だった日本は、これまで、健保財政を維持するという目的もあるが、先進医療や新薬の保険適用は慎重に吟味されてきた。
間質性肺炎という副作用で多くの死者を出したイレッセの保険適用は、“夢の新薬”という言葉に踊らされて、まともな審査もなく特例中の特例で行われた。
(海外での治験データがデタラメだったことも明らかになっている)
医療には事故や副作用といった危険性が付きまとうので野放しになることはないと思うが、「自由診療」の価格は、経済論理(価格と需要の関数で最大利益)という歯止めしかなくなる可能性もある。
高価な「自由診療」が広がれば、民間の医療保険会社は、“この新しい治療を受けるために、月々あと1千円、保険料をアップされたほうが安心ですよ”と営業に精を出すであろう。
いろいろと書いてきたが、米国のこれまでそして現在の医療状況をみれば、「混合診療」の解禁がどういう社会をつくり出すか、それなりに想像できるはずだ。
危険性が高いとまでは言わないが、効果性に乏しい“先進医療”や“新薬”を手に入れるために、借金地獄や自宅売却という悲劇が生まれるかもしれない。
大げさだと思われるかもしれないが、『「混合診療」とTPPの混合』で生まれる“生き地獄”と言ってもそれほど的外れではないと思っている。
このような社会が生まれかねない「TPP」や「混合診療」を容認しますか?
※ 生きていたいという気持ちは昨年ガンで義父をなくしているので痛いほどわかる。「混合診療」よりも、「評価療養」の存続や吟味したうえでの拡大が好ましいと考えている。それを超えた“先進医療”は、民間の医療保険で賄うか預貯金で賄うことで受ければいいと考えている。
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[日経新聞社説]混合診療の解禁は立法府に委ねられた
2011/10/26付
健康保険が適用される保険診療と、適用外の自由診療を患者が併せて受ける「混合診療」を、厚生労働省は原則として認めていない。併用すると、健康保険が利く部分を含めて一連の医療費のすべてが患者の自己負担になる。
この混合診療の原則禁止の是非をめぐる訴訟で、最高裁第3小法廷は、同省の健康保険法の解釈を妥当とする判断を示した。腎臓がんの治療で保険外の治療法を併用していた原告の敗訴が確定した。
健保法に混合診療を禁ずる明文規定はなく、厚労官僚が解釈によって禁止としてきた。この状態は患者に不利益をもたらす。司法が裁量行政をただせないなら、国会が法改正を主導すべきである。
一審の東京地裁判決は禁止に法的根拠がないと判断した。だが二審の東京高裁は「健保法は一定要件を満たす先進医療などで例外として混合診療を認めており、それ以外の混合診療は原則禁止していると解釈できる」と、判断を覆した。最高裁もこれを支持した。
ただ田原睦夫裁判官は、明文規定を設けなかった厚労省や、混合診療の解禁を正面から議論してこなかった国会の不作為を指摘する補足意見を述べた。
混合診療の原則禁止によって、医師、患者の双方が治療の選択肢を狭められている。とくに患者が直面する不利益は大きい。
たとえば、がん治療の分野は革新的な新薬や治療法が各国で相次ぎ開発されている。日本国内で受けた保険診療の効果が芳しくなかった患者が、わらをもすがる思いで海外で開発された薬や治療法を試したいと考えるのは自然だ。
国内でそれらを保険適用していない場合、患者はすべての医療費を自費で賄うか、新しい治療法を諦めるか、どちらかを迫られる。
治療の選択肢は広い方が望ましい。高度な専門医療を手がける一部の大学病院の院長の間では、混合診療の解禁を求める声が強い。混合診療の禁止が技術革新の足かせになっている面も見逃せない。
もちろん、粗悪で有効性や安全性が定かでない薬などを提供することがあってはならない。患者に有害な行為をする医師を厳しく取り締まる仕組みづくりこそが、厚労省の役割である。
昨年、民主党政権は新成長戦略に混合診療を原則解禁する旨の表現を盛り込んだ。それを実現させるのは行政の長であり、与党の党首である首相の責務であろう。
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