http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/299.html
Tweet |
21日の毎日新聞によると、国会に設置されている裁判官弾劾裁判所をめぐり、20日の衆院議院運営委員会の理事会で民主党の松野頼久筆頭理事が「形骸化している。長期間服役した人の冤罪(えんざい)が分かった時に、(有罪)判決を下した裁判官に何らかのことを考えるべきではないか」と、問題提起したそうだ。
裁判官弾劾裁判所とは、裁判官の裁判官の身分に相応しくない行為をしたり、職務上の義務に違反したとして、裁判官訴追委員会から、罷免の訴追を受けた裁判官を辞めさせるかどうかを判断する裁判所のことである。憲法64条に基づいて設置した、おおやけの弾劾を行う【常設の機関】で、衆議院と参議院の合計14名の国会議員(各議院ごとに7名ずつ)で構成されている。当然、国会内に事務局もある。
1948年に弾劾裁判所が設立されて以来、2010年までの63年間に、1万5千件強の訴追請求があったが、実際に弾劾裁判が行われたのは僅かに8件だけである。刑訴法の起訴に該当する罷免の訴追は、これも国会の常設機関である国会議員からなる裁判官訴追委員会から、弾劾裁判所に出される。その訴追件数は39件であった。以上の数字は、これも国会に常設されている裁判官訴追委員会の資料による。
憲法第76条3は「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めている。その担保として憲法78条により、裁判官の身分は保障され、弾劾裁判所の審理を経ない限り辞めさせられないことになっている。それにしても、これらの数字を見る限り、松野議員が指摘するまでもなく「形骸化している」と言われても致し方ないだろう。
処で、裁判官弾劾法の立法趣旨とは何であるかだ。昭和22年8月23日の国会で、当時の議院運営委員長の浅沼稲次郎氏は、この法律の制定に当たり「司法権独立の原則に従って裁判官の地位を尊重しつつ、公務員を罷免するは国民固有の権利であるとする主権在民の憲法の原則とをよく調和せしめ、もつて裁判官彈劾制度の適正妥当なる運用を期そうとした」と述べている。即ち、「司法権独立」は尊重されるが、国民には、公務員である裁判官を罷免する権利があるということだ。
日本人の多くは三権分立とは三権の相互不干渉だと誤解している。先進民主国家での三権分立とは、国の主権者ではあるが、一人ひとりは弱者である国民の権利を国家権力から守るための制度なのである。従って、三権相互不干渉よりも、日本国憲法で定めるように、議院内閣制、違憲立法審査権、そしてこの弾劾裁判所など、三権相互のチェックが、民主国家ではより重要なのである。
日本では、天皇主権の明治憲法下での大津事件で、「司法権独立」が確立したことより、「司法権独立」が不可侵かの如く誤解されている。憲法第78条に定める行政機関(=検察)による裁判官の懲戒処分は禁止されるが、主権者である国民からは、訴追される。しかし、訴追の約半数が冤罪判決など判決の不当性を理由としているが、これを理由に弾劾裁判が行われた例が1度もないと言う。
その理由は、裁判官弾劾裁判所による裁判官の罷免事由が、@職務上の義務に著しく違反し、または、職務を甚だしく怠ったとき、A裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき、との2つに限定されていることにある。戦後の日本は、民主国家と言いながら、冤罪により国民の権利を侵した裁判官は不問にされて来た。つまり裁判官よりは、主権者である国民の権利の方が蔑ろにされて来たと言うことになる。
松野氏が鳩山由元首相の側近で、小沢一郎氏にも近いことから、小沢氏の公判が東京地裁で進められている最中だけに、野党からは「裁判官に対する圧力だと受け取られても仕方ない発言」と批判する声が上がったと新聞は報じている。だが、どのような思惑があろうとも、多くの冤罪判決があったのは事実であり、それを主権者の代表である国会が正そうとすることは、三権分立・主権在民から見て、間違ってはいない。
最後に小沢氏擁護だと批判されることを承知で書くが、先の陸山会裁判での裁判官のように、推認とか推測だけで有罪判決を下す裁判官が存在するのも、裁判官弾劾裁判所が形骸化しているからである。憲法第76条3に反した「ひらめ」化した裁判官はどんどん排除されるべきなのである。「司法権独立」の陰で、「ひらめ」裁判官が続出する今の司法を改革するには、裁判官弾劾裁判所を活性化させることである。
http://www.olivenews.net/news_30/newsdisp.php?n=116909
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK121掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。