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今朝の日経新聞1面は、昨日に続き「TPP 国を開く 下」というTPP参加を煽る政治的プロパガンダ特集を掲載している。
“TPPへの参加が国を開くことになる”という表現や発想そのものが、異様であり、目くらましであり、曖昧なイメージで人々をなんとなくある方向に誘導しようとする詐欺師的やりくちである。
さらに言えば、TPPの交渉への参加を主張している日本のメディアが、「自分の国は経済的に諸外国に閉じられている」と説明するようなことは愚の骨頂である。
交易に関する国際交渉は、自国の利益を最大限に追求しつつ、相手国の利益にも配慮しながら落とし所を見出すものである。
そのためには、「自国は他の国々と較べてすでに十二分に開放されている」と明瞭に主張し、その上で、「交渉参加国さらには世界の経済発展のために一段と障壁を低くする」と宣言して交渉に臨まなければならない。
日経新聞は、それなのに、どこの国の利益を尊重したいのか、、自国政府に交渉の舞台に上がれと言いつつ、その舞台で外国政府からもっと“国を開け”と要求する後押しになるような自国観を披歴しているのである。
日経新聞は、いちおう日本を代表する経済紙ということになっている。
そのような新聞社が、政治的プロパガンダのための方便とは言え、自国の実態をウソと言えるレベルで悪く表現し、これから臨むよう主張している国際交渉で政府が不利な立場に陥るような言論を行っているのだ。
日本がどれだけ開かれた国かは、東証市場における取引高の半分ほどが外国人投資家によることや、カロリーベース食糧自給率が40%(輸入が60%)であることでもわかる。
貿易を問題しているようだから、日本がどれだけ開かれた国か、貿易指標をもとに確認してみよう。
輸出は、「輸出大国」というイメージがもたれているからともかく、保護主義や閉鎖的と考えられる根拠の一つになる輸入実績を見てみよう。
1955年 8897億円
1960年 1兆6168億円
1965年 2兆9408億円
1970年 6兆9772億円
1975年17兆1700億円
1980年31兆9953億円
1985年31兆0849億円
1990年33兆8552億円
1995年31兆5487億円
2000年40兆9384億円
2005年56兆9493億円
2010年60兆0764億円
高度成長期の晩期にあたる70年の輸入金額に対し、2010年の輸入は10倍近くに拡大している。
95年から10年にかけては、名目GDPが伸びていないから、GDPに対する輸入の比率は、2倍近く高まっている。
(ちなみに、輸出は、70年6兆9543億円・10年67兆3996億円)
引用した記事を読めばわかるが、TPP参加から生じる問題はまるで農業だけといった内容で貫かれている。
しかし、TPPは、農業だけでなく、銀行・証券・建設・保険・メディア・医療(医薬品・病院)・弁護士や会計士などの資格業務など幅広い分野の経営に深く関わるほどの包括性を有し、人々の労働の在り方や食品規制など重要な社会政策にまで強い影響を与えるものだ。
主権国家としての政策決定権を広く深く強く縛りかねないTPPに、交渉の進捗度もその内容もわからない(知らせない)まま短兵急に参加を決めるようなことは、少しでもまともな政権や政治家なら到底できないはずだ。
日経新聞社自ら、11月12日のAPEC首脳会議までにTPPは大枠で合意と書き、「日本が不在のまま、交渉は加速している」とも書いている。
そのような進捗レベルにあるTPPに“交渉しに来ました”と表明しても、日本の主張がどれほど通るものなのかは少し考えればわかることだ。
反対論が根強いことを受けて、日経の記事も触れているが、前原政調会長は「国益にそぐわなければ撤退もあり得る」とか、「交渉の中で新事実が出てきて、日本として受け入れられないものであれば交渉から抜ける選択肢は持っておくべきだ」と語った。
(※関連記事を末尾に転載)
ゴマカシによる国内向け政治手法であるとは言え、交渉に参加するということは協定に参加することが大前提であり、さらに、基本合意というすでに煮詰まった交渉段階にあるTPP交渉に参加しようとしている日本が、“交渉の内容から日本にとって利益にならないと判断したので参加はやめます”と表明できるものかどうか、少し利口なら子供でも分かることだ。
最終段階で交渉に参加してすぐに“気に入らないからやめます”という外交が引き起こす国際的摩擦と軋轢そして評価を考えれば、現段階で、「国論がまとまらないので、出来上がった協定の内容をベースに議論を重ねて結論を出します。そのときはよろしく」と表明したほうが、外交的にずっと得策である。
大枠で合意を得ている11月12日から交渉に参加して、すぐに、やっぱりやめますというような外交が、交渉参加国とのあいだで摩擦や軋轢を生じないで済むと考えるなら国会議員を辞してもらいたい。
「国益にそぐわなければ撤退もあり得る」という表明が反対論を和らげる方便なら、交渉に参加した後に内容から反対論が噴出してくると、“いまさらの撤退は国益を大きく損なうことになるので参加する”という逆方向の方便が出てくるだろう。
当該記事も、「TPPも交渉入りした後が反対論と向き合う本番」と予想している。
前原氏は、「米国や欧州も農業保護政策を取って門戸を開けている」と語っているが、インドやアフリカ諸国は、EUの農業保護政策のせいで、安いパック牛乳や果物などが入り込んできたために畜産家や農家が立ち行かなくなっていることをご存知なのだろうか。
「震災復興や2012年度予算編成を控え、党内抗争をしている余裕はない」から、早くTPP(交渉)参加を決断しろという日経新聞には、党内抗争をしている余裕はないからこそ、交渉の進展状況も、交渉で合意されている内容もわからないまま日本の国家社会に包括的な影響をもたらすTPPへの参加という重要案件をどたばた決めるのは愚の骨頂だと言おう。
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日経新聞10月24日朝刊P.1
TPP 国を開く 下
票の呪縛迷う政治
日本再生へ決断のとき
「必ずやります」。出席者が戸惑うほど、明快な口ぶりだった。数週間前、首相官邸であった環太平洋経済連携協定(TPP)に関する「ご進講」での一幕だ。今や野田佳彦首相の意欲を疑う首相周辺はいない。
ただ、首相の決断だけで物事は動かない。国会による承認、発効まで見据えれば、最低限、民主党との調整が必要になる。首相が党政策調査会のプロジェクトチーム(PT)の議論を待っているのは、そのためだ。PTは節目となる11月12日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前の提言とりまとめを目指す。
反対集会に120人
そのPTでは「なぜ今、TPPに参加しないといけないのか」といった反対論が噴出している。自由化で打撃を受ける農業分野への懸念だ。反対派が集まる超党派の議員連盟はもっと激しい。21日の総決起集会には約120人が集結。山田正彦前農相が「命懸けで阻止したい」と気勢を上げた。
「TPPで突っ走ったら農業票を失うぞ」。民主党議員がおびえるのはこの一言に尽きる。
議員のお名前は広く農家・組合員に周知する予定です――。全国農業協同組合中央会(JA全中)が進めるTPP反対運動。国会への請願書提出を支持するよう、西日本の県中央会からある民主党議員に届いた文書にはこんなくだりがある。
JA全中はすでに約1165万人分の反対署名を集めたという。政権交代後の迷走が響いて、政党支持率が思ったほど上向かない民主党は「見える組織票」を無視できない。超党派議連が仕掛ける署名運動への賛同議員は民主党だけで約200人にのぼる。
震災復興や2012年度予算編成を控え、党内抗争をしている余裕はない。何より、少子高齢化やデフレが続く日本で、自由な経済連携の枠組み抜きの成長戦略は考えられない。
内閣府の試算では日本のTPP参加は実質国内総生産(GDP)を0.48〜0.65%押し上げる。野村証券の木内畳英チーフエコノミストは「自由貿易推進の姿勢を示せば、企業の海外逃避に一定の歯止めがかかる」と指摘する。
民主党内では落としどころを探る動きも出始めた。前原誠司政調会長は23日、「交渉に参加し、国益に合わなければ撤退もあり得る」と発言。反対派の懸念に配慮をみせた。「農業は大事だが、TPPを通じてピンチをチャンスにすべきだ」。20日、国会内でJA全中の万歳章会長と会談し、こう呼びかけたのは輿石東幹事長だ。
政府は農業分野に十分な手当てをし、不安を払拭しながらTPP交渉を進める段取りを描く。
政府の食と農林漁業の再生実現会議がまとめた農業活性化の基本方針は「営農規模を20〜30ヘクタールに拡大」などの方向性を打ち出したが、現時点では反対が出にくい抽象論にとどまる。
「主役か脇役か」
コメ市場を部分開放した1993年のウルグアイ・ラウンド合意では6兆円超の対策費を投じた。資金の多くは土木工事などに使われ、規模拡大も世代交代も進まず、農業従事者の平均年齢は66歳に達した。労働力の確保と競争力強化で農業を再生しないと、当時の二の舞いになる。
交渉参加はスタートにすぎない。来年1月の発効を見込む米韓自由貿易協定(FTA)。06年の交渉開始から、互いの政府は国内の抵抗に悩まされ、妥結を危ぶむ声も多かった。TPPも交渉入りした後が反対論と向き合う本番だ。
「アジア・太平洋は日本のホームグラウンドだ。世界の成長拠点にいながら、後追いの脇役になるのか、主役を担うのかの選択だ」。薮中三十二前外務次官は言う。問われているのは日本の将来像であり、痛みを乗り越える政治の覚悟だ。
太田泰彦、佐藤理が担当しました。
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日経新聞10月24日朝刊P.2
TPP意見集約急ぐ 民主
前原氏「交渉参加後、撤退も」
民主党は週明けから、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を巡る協議を加速する。前原誠司政調会長は23日のNHK番組で「国益にそぐわなければ撤退もあり得る」と表明、交渉参加後でも撤退できるという選択肢を示して、反対派の理解を得る考えを示した。党TPPに関するプロジェクトチーム(PT)は24日に関係団体からの聞き取りを終え、意見集約に向けた作業に移る。
前原氏は「米国や欧州も農業保護政策を取って門戸を開けている」とも指摘。農家への戸別所得補償制度の充実など、農業対策の必要性に言及した。
民主党は11月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前に、一定の結論を出す方針。反対派は「一度交渉に参加したら抜けるのは難しい」と、交渉参加自体に否定的だ。前原氏は記者団に「交渉の中で新事実が出てきて、日本として受け入れられないものであれば交渉から抜ける選択肢は持っておくべきだ」と述べた。
反対派の山田正彦前農相は23日、近く野田佳彦首相に会談を申し入れる意向を記者団に示した。APEC首脳会議で、首相が交渉参加を表明しないよう求める考えだ。与党議員が中心の「TPPを慎重に考える会」が集めている署名は、民主党内だけで200人ほど集まっているという。
党PTは関係団体からの聞き取り調査を24日に終え、週内にも政府・民主党で論点整層案をまとめて、関係省庁の政務三役と意見交換する。今のところ、来月2日の総会で党の提言案をまとめ、4日の政調役員会で承認する段取りを描くが、遅れる可能性もある。
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