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今朝の日経新聞1面に「TPP 国を開く 上」という記事が掲載されている。
これを書いた日経新聞記者(編集委員?)は、たんなる政治的プロパガンダだと思っているのだろうが、質があまりに悪すぎる。まるで、米国政権の代弁者だ。
記事の結論部分が、「米国の目標は、11月12日からハワイで開くAPEC首脳会議までのTPP大枠合意。残された時間は少ない。日本が不在のまま、交渉は加速している。孤立の道を歩むことはできない。国を閉じる選択はないはずだ」なのだから、推して知るべしである。
国民(読者)への脅かしなのだろうが、「日本が不在のまま、交渉は加速している」のなら、日本は交渉の結果を待ちその内容を吟味してTPPに参加するか否か決めればいいことだ。そうでなければ、自主外交権を持つ独立国家とは言えないだろう。
仮にTPPが国民経済に有意義なものであるとしても、それで十分なのは、日経新聞社自ら、米国以外経済規模が小さい国8カ国の集まりということで、「このままでは米国と「小国連合」の色彩が強い。日本は連携の成否を決めるカギのひとつを握る」と認識しているくらいだから、日本が後からでも参加を表明すれば9カ国とりわけ米国はウェルカムのはずだ。
そうであるのに、交渉の進展度もその内容も知らせないまま「交渉への参加」をせき立てるのは、内容がわかると都合が悪いと思っているとしか考えられない。
ちょっと様子を見に来ましたというレベルで国際交渉に参加できないことぐらい、新聞記者や官僚そして政治家なら当然のように知っているはずだ。
記事は、「自由貿易の構想を掲げ」と書く一方で、「いま世界で起きているのは、多国間のルール構築ではなく、仲間づくりの囲い込み戦だ」とも書いている。TPPは、「ブロック経済」化の協定であり自由貿易に反するものだ。
さらに、たかだか9カ国が参加するにすぎないTPPをもって、「環太平洋地域で貿易や投資を自由化する新ルール」と書くのも誇大妄想か恥知らずだろう。
おまけに、「輸出市場で日本製品の敗退が続くのは、開国が遅れた結果でもある」とまでもっともらしく書いているが、そうである理由を示さなければ、たんなる“煽り”でしかない。
日本が貿易制限(輸入規制)や直接投資制限(資本規制)を敷いていた60年代にぐんぐん競争力を高め輸出を拡大していった事実をどう説明するのだ。
さらに言えば、輸出市場で日本製品の敗退が続いているわけでもない。今のところは、韓国が輸出を拡大するためには、日本製品を輸入しなければならない産業構造になっている。韓国や中国が台頭するなか、日本はどのような製品で世界市場にアクセスするかが問われているのだ。
シンガポール当局者の名を借りているが、「米主導のTPPを脅威と感じる中国がコメの大量輸入というアメ玉で日本を引き寄せようとしている」というのはあまりに子供じみた文章だ。
中国は、日本に対し、主として直接投資と資本財及び基幹部品の輸出を期待している。日本からの投資と資本財や基幹部品を活用して、EUや米国に製品の輸出を拡大し経済成長を持続させたいというのが現在の中国である。
そのような中国が、米国主導のものであっても、TPPを脅威に感じるいわれはない。
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TPP 国を開く 上
足踏み続けば迫る孤立
アジアの活力をどう取り込むか。経済のつながりを深めようと、米欧や中国がそれぞれ自由貿易の構想を掲げ、アジアで仲間づくりを急ぐ。生き残りをかけて激化する国家間の攻防。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に、日本が足踏みする余裕はない。
9月21日、ニューヨーク国連本部の一室。初めて顔を合わせる野田佳彦首相に、オバマ米大統領は険しい表情をみせた。
「世界の経済大国として日米は成長の努力を続けなければならない」
いらだつ米国
日米間の貿易や投資のパイプを太くし互いに市場を開けば、両国の経済は元気になる。成長力を押し上げるTPPに、なぜ参加をためらうのか。決断ができない日本に、米国のいら立ちが募る。
TPPは米国を含む環太平洋地域で貿易や投資を自由化する新ルール。市場開放の対象は関税だけでなく、検疫や技術基準、知的財産権、政府調連など24分野にわたる。
日本が交渉に加わるか否かは、日本国内だけの問題ではない。現時点でTPP交渉に参加するのは、米国とベトナム、マレーシア、ブルネイなど9カ国。このままでは米国と「小国連合」の色彩が強い。日本が入れば世界の4割を占める「巨大経済圏」に発展する。日本は連携の成否を決めるカギのひとつを握る。
日本国内でTPP論議が本格化するとともに、世界の各地にさざ波が広がっている。各国は対日・対アジア政策を再考し、アジアとのつながりを探り直し始めた。
10月6日、ブリュッセル。日本と欧州連合(EU)の経済連携に向けた予備協議で、双方は正式交渉に入るための文書を交換した。「これまでの逃げの姿勢とは違う」。対日交渉に消極的だったEUの姿勢変化は、日本側の交渉団を喜ばせた。
ロシアではプーチン首相が、アジアを視野に入れた「ユーラシア同盟」を提唱した。来年はアジア太平洋経済協力会議(APEC)議長国として、極東ウラジオストクで首脳会議を主催する。ロシア経済の停滞を打ち破ろうと、熱い視線を東アジアに向ける。
北京では、東京ドームほどもある会場で、日本産品の展示販売の準備が進む。開館予定は2カ月後。目玉商品は日本産のコメだ。「米主導のTPPを脅威と感じる中国がコメの大量輸入というアメ玉で日本を引き寄せようとしている」。シンガポール当局者はこんな見方をしている。
多国間に見切り
世界の貿易自由化は、20世紀末まで日米欧が主役を担った。だが、中国やインドなど新興国の発言力が強まり、利害調整は難しくなった。約150カ国・地域による世界貿易機関(WTO)の交渉は、10年たっても成果が上がらない。
百家争鳴の多国間交渉に見切りをつけた国々は、特定の相手と戦略的に手を組む自由貿易協定(FTA)にカジを切った。いま世界で起きているのは、多国間のルール構築ではなく、仲間づくりの囲い込み戦だ。
アジアの中の日本。ライバル韓国は先んじて国を開き、貿易相手にも次々と市場開放を迫った。輸出市場で日本製品の敗退が続くのは、開国が遅れた結果でもある。
FTAを結んだ国との貿易額の割合を比べると、韓国は36%。米国は37%、EUは域内貿易を除いて30%。輸出大国であるはずの日本は17%にとどまる。主な貿易相手との距離が開いたままではグローバル経済の荒波の中で孤立する。
米国の目標は、11月12日からハワイで開くAPEC首脳会議までのTPP大枠合意。残された時間は少ない。日本が不在のまま、交渉は加速している。孤立の道を歩むことはできない。国を閉じる選択はないはずだ。
日経新聞10月23日朝刊
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