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TPPに潜む危険性というタイトルの、あおぞら銀行の前原レポートを参考に要約しています。
TPPに関しては
「TPPに参加することでアジアの経済成長の勢いを日本にも取り込める」
「TPPに参加しなければ日本は世界の孤児となる」
と言う論調で賛成を求める動きが政府、マスコミにあります。
輸出に活路を得たい財界と自民党、民主党の半分が、この協定の参加を求めているのです。
そもそもTPPとは何かと言いますと、Trans-Pacific Partnership(環太平洋戦略的経済連携協定)の略称であります。
最初はシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に発行した自由貿易協定で始まりました。
この中身は商品を輸入する際の関税を原則全品目について、即時ないし10年以内に撤廃し、貿易面や情報面でお互いの流通を促進することで少しでも経済成長のスピードを高めて行こうとする、弱者連合の性格が強いものでした。
現在、TPP参加国は、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアを加えて9カ国になります。
超大国アメリカが参加をしたのは2008年です。
参加国を見れば判るように、各国の市場の大きさを見れば、アメリカ、日本、オーストラリアがずば抜けています。特にアメリカと日本が大変大きな市場を持っていて実質上、アメリカと日本の貿易協定のようなものです。
アメリカ大統領、オバマは2010年の一般教書演説で「今後アメリカの輸出を2倍に増やす」と言う国家戦略を提唱しており、サブプライムローン・バブル崩壊で国内の消費・需要が急速に縮小している現状を輸出を増やすことで乗り切ろうとしているのです。
その戦略の主目標が日本であることとは間違いなく、農産物をはじめ、建設業、サービス業など従来日本が門戸を閉ざしていた分野に風穴を開け、参入することでアメリカの雇用を確保することを目的としています。
さてTPPの中身について検証しましょう。
TPPの交渉項目があります。一般的に食糧部門と工業生産品の輸出入の増減のことが言われていますが、他にも22項目のことがあります。全体象は巻末に一覧表示します。
最初の2項目については、すでに多くを語られているので、それは割愛して残りのものを見てみましょう。
注目すべきはサービス貿易の障害の撤廃を謳っていることです。
例えば医療において「混合診療」を求めると言うのがあります。
我が国は国民皆保険制度の下、保険診療が原則で誰でもそれを受けます。ところがアメリカは、保険診療と保険外診療の2頭立てです。
それでも構わないではないかという人もあるでしょう。
しかしながら、実際にその制度が発足すれば病院の立場に立つと裕福な患者から高額の治療費を取ることの方が魅力となり、医療に格差が発生します。
金持ちが実費で診察をけるようになれば保険には加入しません。国民皆保険の根底が壊されてしまいます。
また、TPP補足時にはなかった、金融・投資についても障害の撤廃を求めています。これは言わずとしれたアメリカの策略です。
TPPに対応するために、日本が農業に株式会社の参入を認め大規模営農に切り替えると、早速、アメリカ資本が進出することになります。
かつ、農産物相場もアメリカの思い通りに展開して行き、自給率の問題以外でも、日本の農業は壊滅に追い込まれて行きます。
TPPではありませんが、小泉政権が行なった郵政民営化は、アメリカが年次要望書で出していた、120兆円市場となっている郵便局の簡易保険に割り込むために求めていたものであり、民営化で弱体化した、これから弱体化するであろう、簡保の顧客を横取りするための戦略に日本が乗ったという事です。自動車の」輸出と引き替えに。
なを、一般的には理解しづらいが紛争解決の項目の内容が問題とされています。
「収用と補償」「投資家と国家の紛争解決」と言う言葉で示されています。
「収用」とは、政府が民間企業を国有化したり資産を強制的に接収することだそうです。これに対して「補償」とは外資系企業が「収用」により被害を蒙った損失の代償を求めることだそうです。
TPPで言っている「収用と補償」の意味は、これを拡大解釈して、実際に国有化したり、資産の強制接収をしなくても、その国の法令などにより外資系の企業の営業活動に制約が生じた場合、外資系企業は政府に補償を請求できると言うことが含まれているようです。
これなどは、もうヤクザの因縁のようなものであり、これを行使できるのはアメリカが殆どであると言えます。
「投資家と国家の紛争解決」と言いますのは「上記の収用と補償」の分野で問題が発生した時の解決の方法のことです。
これには第三者機関が絡んで裁定することになっていますが、その審理の内容は、国家間の政策の検討ではなく、外資の公平な競争の条件が満たされていたか、否かであり、被害を受けたとして提訴した方が負けると言う事態も想定されています。
これらの条項は、殆どアメリカ主導で取り入れられたものであり、貿易により御互いの国の発展を促進するのではなく、単に企業の利益確保の為の協定であることが鮮明に現れています。
そもそも、関税は置かれた環境が異なる国々が御互いを守るために考えた知恵であったはずです。
国民は関税に守られて自国の経済活動が出来てきたのです。
経済のセーフティネットと言えば、これに勝るものはありません。
それが、何故、関税を撤廃することが善のように言われだしたのか。もちろん関税制度にも不都合はあるとしても、全ての国民の為に、国民自身が選んだ制度ではなかったのでしょうか。
その関税の撤廃に拘っているのは誰なのか、何の為にと問うならば、はっきりと見えてきます。企業の競争の論理に過ぎないのです。国家間の弱肉強食の論理に過ぎないのです。
この様に言えば、我が国は資源小国であるので膨大な資源を輸入しなければならない、そのために輸出を伸ばすことは必要であるというが、そもそもその輸入資源の多くは輸出の為に使われているのではないでしょうか。
それよりも我が国の国民が共生できるための最低必要な案件を、守れるシステムを堅守することの方が大切ではないでしょうか。
アメリカの生活様式が我が国のそれより望ましいのであればアメリカナイズされるのも良いでしょう。
伝え聞くところに拠れば、両国とも長短はあるとしても、総合して我が国はアメリカを見ならう必要はなにもないと考えます。
決して保守的見地から言っているのではありません。世界各国はそれぞれの地政学的特徴の中で、天候もそれぞれの中で長い間、その地域に根ざした文化を創り生きてきました。
科学の発達した現在でも、地域に根ざした生活環境は、まだまだ守って行かねばならないでしょう。
最後にTPPの交渉項目 24項目と内容を記しておきます。
1 主席交渉官協議
2 市場アクセス(工業)
3 市場アクセス(繊維・衣料品)
4 市場サクセス(農業)
(2・3・4説明)
物品貿易の部分で関税率などの設定について定める。
原則関税撤廃であるが、各国の事情により品目によっては関税が認められている。
ちなみに、アメリカの農産物で10品目くらい。
5 原産地規制
(説明)
関税の減免は締約国で生産したもの(原産品)にしか認められない。
6 貿易円滑化
(説明)
貿易ルールの透明性向上や貿易手続きの簡略化について定める。
7 衛生植物検疫
(説明)
食品の安全基準を設定し検査を行なうことや、動植物についての病害虫の進入を防止するための検疫処置など。
8 強制規格、任意規格や適合性評価手続き
(説明)
工業規格品など貿易の技術的な障害について。
9 貿易救済(セーフガード)
(説明)
相手国のある産品の輸入が急増した場合の、一時的関税削減処置停止。
10 政府調達
(説明)
入札の際の仕様、参加資格、実施の原則を定める。
海外事業者に対して内国民待遇を求める。
※ これで日本の公共事業への参入が容易になる。
11 知的財産
(説明)
知的財産の十分な保護、模倣品、海賊版の対策の徹底。
※ ある意味で弱者いじめである。
12 競争政策
(説明)
カルテル等防止策についての政府間の協力を求める。
13 越境サービス
14 金融サービス
15 電気通信サービス
16 商業関係者の移動
(13・14・15・16説明)
サービス貿易に関する一般協定。
加盟国間のサービス貿易の障害を排除するルールを設定。
※ 工業生産の集約化に伴う雇用の喪失を各国ともサービス産業の分野で補おうとしている矢先、この領域でも強者の利権を確保するために先手を打っています。
17 電子商取引
(説明)
電子商取引の為の環境・ルールの整備。
※ 実際の整備事業において、日本、アメリカのシステムが入り込んで行くことになります。
18 投資
(説明)
外国投資家に対して国内投資家と無差別の待遇を与える。
19 環境
(説明)
投資、輸出促進の為の環境保護規制の緩和禁止を定める。
20 労働
(説明)
国際労働機関(ILO)加盟国としての義務を再確認。
21 制度的事項
(説明)
加盟国間で意思決定を行なう「合同委員会」の設置や、その権限、開催頻度などを定める。
22 紛争解決
(説明)
協定の解釈の不一致などによる国同士の紛争を解決する際の手続き。
※ 先に記した問題があります。
23 協力
(説明)
合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に対しては技術支援や人材育成を実施。
24 分野横断的事項
(説明)
従来の分野別交渉では手当てされない複数分野にまたがる規制や規則について定める。
(以上)
追記
日本がTPPに参加するとして、都合10カ国のGDPは、日本とアメリカの2カ国で90%を超える。
それほど、経済の基盤が異なるTPPが、他の加盟8カ国にとって有益なものとは思えません。
アメリカに加入によって、TPP自体の趣旨が歪んだものとなっていると思います。
EUもヨーロッパ地域で経済環境の統一化を図って結成されましたが、ギリシャ危機、スペインの危機など、結局は格差が開いただけで、強者にとっては利益があっても、全体としては地域の疲弊へと進んでいるでしょう。
これは、本当の意味で国民の側に立った経済統合策ではないからです。
同じことを、アメリカがしようとし、日本も強国で一員である故に、参加することに利益があると踏んでいるのでしょうが、EUでドイツが困っているように結局は日本の利益にも結びつかないのです。
しかしながら、そのドイツもそうであるように、システムの失敗は国民の税金で埋め合わせをします。
巨大資本は、当座であっても繁栄をすれば、元は取って引き上げてしまう魂胆です。
そのような資本の策略に身を任せる愚は冒したくないものです。
(終わり)
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