http://www.asyura2.com/11/senkyo120/msg/722.html
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DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html
目次
■ @ 2012年米大統領選挙とロムニーの「強い米国の復活」
■ A アジア版NATO
■ B 米国の軍需経済復活と当事国である日本
■ 結語:米ソ冷戦との違いと構想の大きな問題点
※ 本稿は、「米国によるオフショア戦略」の第5回として書かれたものです。
■ @ 2012年米大統領選挙とロムニーの「強い米国の復活」
来年11月のアメリカの大統領選挙まであと1年余りとなった。
米国主要都市で拡大しているリベラル左派が主体の抗議デモの大統領選挙への影響は不透明であるが、リーマンショック後のアメリカ経済の衰退と荒廃をもたらしたオバマの再選は難しいだろう。オバマをホワイトハウスへ送り込んだウォール街は、現在猛烈にオバマをバックアップし、ふんだんな選挙資金を再び提供しているそうだ。またアメリカ東部のマスコミには、ウォール街の力がかなり及んでいるようだ(注-2011.10.日高)。
2012年の米大統領選に向けた共和党候補の指名争いで、主流派が支持を固めている有力候補ロムニーは、「強い米国の復活」を掲げ、中国に対する強い警戒感を表明している。ロムニーは10月6日の外交政策の演説で、オバマ政権が方針を示している国防予算の大幅削減の流れを反転させ、国防支出を増加させることを公約した。オバマ政権は10年間で1兆ドルの国防予算の大幅削減をする方針を打ち出している。
In foreign policy address, Romney stretches on Obama’s record (10月8日 ワシントンポスト)
http://www.washingtonpost.com/national/national-security/fact-check-in-foreign-policy-address-romney-stretches-on-obamas-record/2011/10/08/gIQA5zdjUL_story.html
「強い米国」の復活目指す―ロムニー氏が外交政策演説 (10月8日 世界日報)
http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/111008-160530.html
本稿と共通のテーマを扱った前編の4編では、オバマ民主党政権のもとで米国防総省が主体として進めている、「オフショア戦略」と「統合エアシーバトル構想」について述べてきた。
「米国による中東からアジアへの軍事力シフト―米国のオフショア戦略(4)―」 (9月24日)
http://www.asyura2.com/11/senkyo119/msg/775.html
今回はアメリカの政権交代が行われた際の、次期共和党政権での「米国によるオフショア戦略」について述べてみたい。
アメリカの次期共和党政権での対日政策は、平和ボケした日本にとって苛酷である。
それは戦後66年に及ぶ軍事的な米国依存から、前方戦略の前線へと立たされる当然とも言うべき責務を担わされる。もう、「ぶらさがり国家」ではいられなくなるのだ。
■ A アジア版NATO
前ブッシュ政権を支えた保守系シンクタンク、アメリカンエンタープライズ研究所は、現在、穏健保守のハドソン研究所やヘリテージ財団とともにアメリカ保守派に大きな影響力を持つ(注-2011.4.日高)。
8月の終りに、アメリカンエンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンソールは、軍事系シンクタンクProject 2049 Institute の4人のスタッフらとともに ” ASIAN ALLIANCES IN THE 21st CENTURY” (21世紀のアジア同盟)という論文を発表した。ダン・ブルーメンソールはブッシュ政権からの北東アジアを専門とする軍事専門家で、同政権で国防総省中国部長を務めた。これまでに多くの彼の記事がAEIのHP上で公開されている。
Project 2049 Institute は、アジア太平洋地域と中央アジアを研究対象とするシンクタンクで、2008年1月に設立された。CEOのランドール・シュライバーはブッシュ政権前半で国務次官補代理を務め、リチャード・アーミテージ国務副長官の政策スタッフの責任者であった。Project 2049 Instituteの研究アドバイザーとしては、クリントン政権とブッシュ政権からの多くの人材を有し、日本では岡崎研究所をアドバイザーとしている。
この論文(PDF39ページ)の終りの5人の執筆者の略歴を見ると、いずれも保守派に属し、アメリカンエンタープライズから二人の構成となっている。また東アジア、とくに北東アジアを全員が専門としていることが共通している。
ASIAN ALLIANCES IN THE 21st CENTURY (2012年8月30日 公開)
http://project2049.net/documents/Asian_Alliances_21st_Century.pdf
この論文は、戦略国際問題研究所(CSIS)などと契約を結ぶ「The Diplomat」が9月8日付で取り上げ、日本ではワシントン駐在特別委員を兼務する古森義久氏が、9月30日の産経新聞サイトで紹介している。
http://the-diplomat.com/flashpoints-blog/2011/09/08/%E2%80%98counter-bismarckian%E2%80%99-diplomacy/
この論文の構想の最大の目的は、アジア・太平洋地域における集団安全保障体制の確立である。米ソ冷戦時代に、欧州にNATO(北大西洋条約機構)という米国と西欧に多国間軍事同盟を構築して、旧ソ連の脅威に対抗し封じ込めて成功したように、現在の中国に対して新しく「アジア集団同盟」を構築し打ち立てて、中国を封じ込めるのが目的だ。
つまり、「アジア版NATO」である。
NATOは北大西洋条約に基づいて結成されている。条約の根幹は「いずれの加盟国に対する攻撃も全加盟国に対する攻撃とみなし集団的自衛権を発動する」ことにある。
“ ASIAN ALLIANCES IN THE 21st CENTURY”の論文では、軍事力の主力として、米国、オーストラリア、日本、韓国の4カ国を挙げ、南シナ海での戦力ではインドを加えている。「アジア版NATO」では、日本の軍事力行使と軍備増強がとくに強調される。
論文後半では、東アジアにおける台湾、北朝鮮、南シナ海という3つの防衛ケース挙げているが、このうち分量が最も多くウェイトが置かれているのが台湾防衛についてだ。
中国が台湾沿岸に配備している1500発以上の短距離弾道ミサイルと中距離弾道ミサイルをベースにしたA2AD戦略(接近阻止・領域拒否)で、有事の際はアメリカの空母が台湾防衛の活動を半ば阻止される状態になっている。国防政策委員のR.カプランによれば、アメリカは台湾の主権をこの先保障し続けることが不可能になってくると言う。
A power shift in Asia (9月23日 ワシントンポスト)
http://www.cnas.org/node/7042
カプランは、2009年のランド研究所の調査から、2020年にはアメリカのF22、空母打撃群による台湾防衛と、沖縄嘉手納基地へのアクセスが阻止されると述べているが、それから2年たった現在は2020年という時期が年々早まっている。
(※ アメリカが台湾にこだわる大きな理由の一つに、台湾が米国債保有で世界第5位の保有額を持っていることが挙げられる。台湾が中国に併合された場合、首位の中国と合計される米国債保有額は群を抜いたものとなり、米国は中国に牛耳られてしまう。)
現在ワシントンで共和党や保守派の軍事専門家によって、米軍のオセアニア・シフトにより生じる、東アジアでの前方配備の空洞化を埋めるため、様々な軍事戦略が検討されている(注-2011.5.日高)。
A2AD戦略(接近阻止・領域拒否)が脅威を及ぼす地域は、台湾のみならず既に日本列島全体に及んでいるが、この領域内に位置する日本を、米軍の前方戦略として最大限に活用しようという計画が、アメリカ保守派グループから出てきているのである。この計画での台湾の防衛はアメリカと日本の2ヶ国が主力となる。
実際の有事における「アジア版NATO」での戦闘行動は、アメリカとオーストラリアの海空軍が戦争地域へ向かうまでの時間を、前方戦略を担当する東アジアの同盟国の軍隊が戦う。米海軍はグアム、米空軍はグアム、ハワイ、アラスカを拠点とする。
ブルーメンソールのチームの戦略構想では、北東アジアにおいて米軍を支援するために、日本に対して、@沖縄諸島での軍備増強、A多くの空軍基地の建設、B東シナ海・フィリピン海における潜水艦部隊による防壁の強化、C中国による日本へのミサイル攻撃を抑止し報復攻撃を可能にするために、巡航ミサイルと弾道ミサイルを地上配備するなどが必要であるとしている。
To help the United States participate in Taiwan's defense, Japan needs to more heavily militarize the Ryukyu island chain, construct more airbases, harden the ones it already has and create an anti-submarine barrier to deny China access to the Pacific Ocean, where the PLA Navy would seek to interdict US forces.
Finally, Japan should consider deploying conventionally armed, ground-launched cruise and ballistic missiles of its own to retaliate in the event that China strikes the Japanese homeland.
■ B 米国の軍需経済復活と当事国である日本
「パネッタ米国防長官は、米議会で国防費の削減を求める声が強まっていることを受け、今後アメリカ軍の規模縮小は避けられないとして、日本など同盟国に対し、自国の防衛について今以上の役割を求めていく考えを示した。パネッタ米国防長官は10月11日、『同盟国には、アメリカによる軍事的な支援を引き続き保障する一方で、自国の防衛に今以上の責任を担ってもらう』と述べ、今後、日本などの同盟国に対しより大きな役割を求めていく考えを示した。」 (10月12日 NHK)
「アジア版NATO」の構想が出てきた背景には、オバマ政権での天文学的に拡大した米国債による米国の深刻な財政赤字がある。クリストファー・レインらが提言した「オフショア戦略」の基本的考え方に沿って、財政赤字の限界に達したアメリカは、冷戦初めに欧州で旧ソ連に対して集団安全保障体制を構築して対抗したように、中国に対する「アジア版NATO」を構築しようというのだ。
(※ 「オフショア戦略」とは脅威を及ぼす国から遠く離れた所から、外交・軍事力配置・経済政策などを用いて、その対象国を封じ込めるアメリカの伝統的な基本的軍事・外交戦略である。offshore:沖合いへ向かって)
但し、今回の「アジア版NATO」では、NATOのようにアメリカがソ連との軍拡競争の先頭に立って中国に対峙するという形ではなく、北東アジアや東南アジア諸国にアメリカ製兵器の軍備増強をさせ、かつアメリカの軍需産業を盛んにして国家的な経済成長を狙うという重要な意図があるようだ。
「ベトナム戦争以降の現代戦は、国家財政を大きく消耗させてしまうため長期的な需要とはなりづらい。国家の軍需産業にとって最も望ましいのは冷戦のような軍拡競争であるといわれる。」
『「戦争」による、アメリカの経済恐慌からの脱出は可能か』 (拙稿 2009年1月)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/22192317.html
この「21世紀のアジア同盟」と名づけられた戦略構想は、アメリカの冷戦型軍需経済の復活によって、中長期にわたるアメリカ経済の復興に大きく貢献するだろう。
このような説明をすると日本のマスコミなどは米国アレルギーに見舞われるが、自国の主権を真面目に考えようとすれば、中国の危険な射程圏に位置する日本としては、アメリカ保守グループが構想する「アジア版NATO」の中で、多くの役割を果たすことを余儀なくされる。
それが嫌なら話は簡単だ。中国の支配下に置かれ、傀儡政権として属国として、中国に自分達の平和な生活を守ってもらうことを選択すれば済むことだ。
このアジア同盟という集団安全保障体制では、南シナ海での防衛では東南アジア諸国の参加の中で、とくにベトナム軍とインドネシア軍の役割を重視し、北朝鮮に対しては米軍のほかに韓国と日本を中心に据えている。
また、有事の際の中国のシーレーンの海上封鎖(マラッカ海峡、ロンボク海峡など)については、米国、オーストラリア、インドのほかに、やはりここでも日本の軍事力を主力の一つとして重視している。
■ 結語:米ソ冷戦との違いと構想の大きな問題点
さて、共和党保守派から出てきた「アジア版NATO」では米ソ冷戦との大きな違いを持つ。このブルーメンソールらのこの論文では、「アジア版NATO」のもとでの中国とアメリカの軍事的な競争は、米ソの「冷戦」とは異なったものになるという。この大国間の競争は、貿易の増大や経済的な統合が、激しくなる軍事的競争と共存する。米中の間には経済的に強い相互依存関係があるからだ。この協調と競争の関係は、アジアの安全保障に作用し、米ソ冷戦の時よりもはるかに脅威の高い抑止力の働きを持つと述べている。
Sino-American security competition, however, does not prefigure a new Cold War. That is too simple a metaphor to describe the new complex reality. In this great power competition, increased levels of trade and economic integration will coexist uncomfortably with an intensified military rivalry. For Washington, this mix of cooperation and competition makes the tasks of reassurance and deterrence much more difficult than during the Cold War.
米ハドソン研究所の予測データでは、中国の老齢化は急速に進み、60才以上の人口は、2020年には17.1%、2030年には国民の約4分の1の23%と推計されるという(日本の2010年の65才以上の人口が全体の23%)。中国の1人の老人を支える労働者の比率(依存比)で見ると2006年の5.2が、2030年には2.2へ急上昇する。中国には労働者2.2人で老人1人を養う、つまり9億の労働者が4億の老人を養う時代が待っている(注-2010.3.日高)。
「アジア版NATO」が構築され、米中冷戦を2025年までアメリカが継続させた場合、中国は急激な高齢化と極端に遅れている社会福祉医療制度の急激な支出の増大により、旧ソ連と同様な財政的理由による冷戦敗北の結果を見る。
また2020年から2025年にかけては、アメリカが開発を進めている軍事衛星を使ったサイバー兵器の実用化が始まり、サイバー兵器により中国の核兵器、ミサイル、空母、戦車などの機動を停止させてしまう時代が来る。サイバービームが最初に実際に使われたのは、2008年8月のロシアによるグルジアの通信システムへの攻撃であった(注-2010.10.日高)。
中国はアメリカとの冷戦で軍事力の面でも敗北するだろう。
最後に、この論文の戦略構想がもつ最大の問題について私見を述べてみたい。それは日本国債の暴落を考慮に入れていないことだ。R.カプランは中国の問題について、「予想される経済的・政治的な大混乱と激変を考慮に入れずに、実際の政策を立案することは本当は軽率なことだ」という意味のことを述べているが、この言葉は日本国債暴落による日本の国家破綻についても該当する。
http://www.cnas.org/node/7042
「アジア版NATO」で大きな軍事的役割をもち、軍備増強の圧力をかけられる日本が国家破綻してしまったら、ブルーメンソールらが描く「アジア版NATO」の骨組みは大きな変更を余儀なくされるだろう。
また、一国平和主義の日本の世論の激しい反発が起こり、日本の政権がアメリカの要求どおりに動けるかという非常に困難な問題が出てくる。
しかし、国債の長期金利が急上昇を始め、日本国債が暴落するまでは次期アメリカ政権の対日ベクトルは「アジア版NATO」の方向へ向かうというのが現時点での私の予測だ。日本の財政難によりベクトルの強さや質量には程度の強弱が出てくるだろう。しかしベクトルの向かう方向は、ブルーメンソールらのこの計画の方向へ向かうと考えられる。
■ 注:
・注-2011.10.日高:『アメリカの歴史的危機で円・ドルはどうなる』 日高義樹著 徳間書店 2011.10.8刊
・注-2011.5.日高:『世界の変化を知らない日本人』 日高義樹著 徳間書店 2011.5.31刊
・注-2011.4.日高:『いまアメリカで起きている本当のこと』 日高義樹著 PHP研究所 2011年4.1刊
・注-2010.10.日高:『アメリカにはもう頼れない』 日高義樹著 徳間書店 2010.10.31刊
・注-2010.3.日高:『アメリカの日本潰しが始まった』P.190 日高義樹著 徳間書店 2010.3月刊
■ 参考リンク:
Project 2049 Institute
http://www.project2049.net/
‘Counter-Bismarckian’ Diplomacy JamesR. Holmes, The Diplomat, September 8, 2011
http://the-diplomat.com/flashpoints-blog/2011/09/08/%E2%80%98counter-bismarckian%E2%80%99-diplomacy/
地政学&地経学で読み解くTPP:「アジア太平洋国家・米国」の東アジア積極的関与戦略、TPPの先にあるFTAAP構想実現が狙いか (10月16日 「園田義明めも」)
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2011/10/16/6158108
『「戦争」による、アメリカの経済恐慌からの脱出は可能か』 (拙稿 2009年1月)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/22192317.html
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