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「人生を左右する誤報を恥じない新聞」(EJ第3160号)
"http://electronic-journal.seesaa.net/article/230329730.html"
2011年10月14日:{Electronic Journal}
人間の記憶は曖昧なものです。多くの日本人は、とくに年配者ほど大新聞の書く記事はおおむね信用しています。ある事件の記事が大きな見出しで報道されればそのまま素直に受け入れてしまうものです。しかし、その記事が完全な間違いであったとしたらどうでしょうか。
こういう場合、新聞は一応訂正記事を書きます。しかし、そういう訂正記事は非常に小さいのが一般的です。新聞社のミスですから、あまり目立つようには書きたくないのです。
しかし、この場合、記事が小さいので、大きな記事の報道を見て、そういう訂正記事を見落としてしまう人もたくさんいます。そうすると、それらの人たちは、大きな見出しの記事の内容を正しいと信じてしまいます。
陸山会事件にはこういうことがあまりにも多いのです。そのひとつの例が石川知裕氏に起きているのです。石川氏は2010年1月15日に逮捕されましたが、その5日後の1月25日(月)の日本経済新聞夕刊に次の記事が掲載されたのです。
関係者によると、水谷建設の元幹部は特捜部の事情聴取に対し2004年10月15日に東京都港区の全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル東京)で、石川議員に現金5千万円を渡したと供述している。特捜部が供述した石川議員の手帳には、04年10月15日の欄に「全日空」と書かれていた。横には人の名字が記載。(一部略)特捜部は、この日に水谷建設の関係者がこのホテルに宿泊していたことを確認。「授受」の3日後の同月18日には陸山会の銀行口座に同額の5千万円が振り込まれていたことが判明している。
──2010年1月25日付、日本経済新聞夕刊より
この新聞記事を読めば、ほとんどの人が「やはり、石川は水谷から金を受け取っているな」と思うはずです。金を渡した日と石川氏の手帳の15日の欄にある「全日空」の文字。さらに18日に陸山会の口座に振り込まれた5000万円、同月の29日に支払ったとされる土地代金の4億円──完璧です。真っ黒です。
しかし、これはとんでもない誤報であったのです。その次の日の朝刊に掲載された次の訂正記事をご覧ください。
25日付、夕刊「手帳にホテル名メモ」の記事で、石川知裕衆院議員の手帳でホテル名の記述がある欄は「2004年10月15日」ではなく、水谷建設の元幹部が小沢一郎氏側への2回目の現金提供の時期と供述しているとされる「05年4月」の誤りでした。記事、見出しの一部を削除します。
──2010年1月26日、日本経済新聞、朝刊
しかし、これはひどい話です。石川議員に対する国民の心証は真っ黒になってしまいます。ちなみに「水谷建設の元幹部が小沢一郎氏側への2回目の現金提供」とあるのも何の証拠もない検察のリークであり、夕刊の記事中の18日の5000万円の入金はちゃんと根拠のあるものだったのです。
しかも、新聞やテレビはそれらの訂正すべき情報を無視して報道せず、大久保、石川両氏が全否定しているのに、証拠もないのに水谷建設側からの2回にわたる5000万円ずつの献金──すなわち、計1億円の献金を執拗に報道し続けたのです。
そして、陸山会事件の公判において検察は、訴因に関係のない水谷建設の元社長の川村尚氏ら関係者を証人として次々と出廷させ、水谷マネーがいかにも小沢事務所に渡ったかのような印象を裁判長に与えたフシがあるのです。そして、登石裁判長はこの水谷からの裏献金があったと推認して、小沢氏の元秘書3人に対して有罪判決を下しているのです。
なぜ、これほど証拠のない水谷建設の裏献金に執拗にこだわるのでしょうか。これに関して、「週刊朝日」10/21号は次のように書いているのです。
そもそも「天の声」や「水谷マネー」があったからこそ、虚偽記載が「悪質」だとされてきた。だからこそ東京地裁は、石川議員らの判決で「法と証拠」を逸脱してまで、その悪質性を認定しようとしたのだ。いったい、この裁判にどれだけの意味があるというのか。
──「週刊朝日」10/21
陸山会判決では、胆沢ダムの工事の受注に関して、大久保隆規元秘書が業者に対し、「天の声」などを発する中心的存在であったとしていますが、大久保氏をよく知る東北の大手ゼネコン幹部のA氏は次のようにいっているのです。
判決では小沢事務所の大久保元秘書が「天の声を発した」なんて決めてかかっていましたが、大笑いです。業者にパーティー券の大量購入や選挙協力などムチャなことを言ってきたのは、00年まで小沢事務所で秘書を務めた高橋義信氏です。東北談合のドンといわれた鹿島の幹部と太いパイプを築き、われわれも仕事欲しさにムチャな注文に渋々従った。大久保秘書は鹿島とのパイプを高橋氏になかなか譲ってもらえず、鹿島のドンからはほとんど相手にしてもらえなかった。大久保氏は迫力もないし、紳士。パーティー券の購入枚数を減らして欲しいと頼んでも、文句さえ言いませんでした。
──2011年10月5日付、日刊ゲンダイより
どうやら、大久保隆規氏のイメージは大きく違うようです。1億円の裏献金など「100%あり得ない」とゼネコンのA氏はそういってクビをひねっているのでいす。
── [日本の政治の現況/86]
≪関連情報≫
●金の受け渡し場所についてのA氏の証言
ホテルの喫茶店でカネを渡すのは、建築業界の常識としては考えられない。渡すなら、料亭の個室など人目につかない場所にします。それにただの下請けにすぎない水谷が5000万円を2回持って行っていますが、どうしても信じられません。100億円の工事を元請けのゼネコンが取っても経費が約3割で、残りを複数の下請けに叩いた金額で割り振る。元請けならともかく、下請けが1億円もの巨額の裏金を捻出できるはずがない。「ようやく利益が出せる」というのが、下請けの実情なんです。
──2011年10月5日付、日刊ゲンダイより
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