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【読み解き鍵】小沢裁判もう1つのインパクト!司法制度に大きな影響
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20111014/dms1110140850003-n1.htm
2011.10.14 夕刊フジ
馬の視界は350度、死角は真後ろ10度だけ。草食動物の馬は、その10度に、隠れた事象を察知し防御行動を取る。人の視界ははるかに小さく、死角は180度超。今求められるのは、その大きな死角に隠れた事象の「読み解き能力」。目指すは、まずは馬と同じ350度視界良好。
◇ ◆ ◇
小沢一郎元民主党代表の政治資金規正法違反(収支報告書への嘘記載)の公判が始まった。検察審査会の起訴議決に伴って起訴の後、開始された初めての公判。報道では、検察審査会の起訴議決によって起訴されたパターンを「強制起訴」と呼んでいる。
しかし、私は、検察審査会の議決に基づく起訴パターンを「市民(による)起訴」と呼び、これに対比させ、検察官による通常の起訴パターンを「検察(による)起訴」とあえて呼びたい。
「強制起訴」という用語は、確かに検察審査会が「起訴すべし」と2度にわたり議決をすれば、検察官の判断を介さずに起訴になる強い効果があるとの意味で、その用語が頻用される理由はうなずける。しかし、通常の検察起訴の場合とて、被告人にすれば、検察官の裁量で強制的に起訴されるのであるから、強制起訴とも言える。
また、検察審査会の議決に基づいて起訴された事件をどのように見ていくべきか、その判決をどのように見るべきかとの視点に立てば、「強制起訴」という用語よりは「検察起訴」と対比させた「市民起訴」の用語の方が分かりやすいと思う。本日は、「市民起訴」と「検察起訴」とはどう違うのかなどについて視界良好としたい。その「読み解き鍵」は、「起訴基準の区別」である。
従前、検察官の起訴不起訴に係る判断は、市民にその基準が見えにくい上、不起訴事案の中には、起訴すべきであった事案も間違いなく存在する。そのため、その判断を透明化すべく、戦後間もなくから、無作為の抽選で選ばれた11人の市民が、検察官の不起訴判断が相当か否かにつき事後的にチェックする検察審査会制度が存在した。
しかし、以前は、検察審査会で検察官の不起訴判断がいかに誤っていた旨議決だとしても、検察が不起訴判断を変更することは少なく、その議決効果はほとんどなかった。その経緯を踏まえ、検察審査会の議決に絶大な効果を与えたのが、2009年5月に裁判員裁判法と同時に施行された改正検察審査会法だ。
同法により、検察審査会が2度にわたり起訴すべきと議決した場合、検察の判断抜きに自動的に起訴される制度が創設された。検察官には、有罪判決が得られない可能性が少なからずある場合、不起訴にする実情があるが、事案の中には、公開裁判のもとで有罪か無罪かの決着をつける方が、国民に開かれ透明性を備えた司法の発展に資するものもある、という原則に基づいた新制度だ。
検察起訴の起訴基準は、有罪判決が得られる高度の見込みがある場合に限定される。市民起訴の起訴基準は、有罪になる可能性が相当低くても(有罪と無罪の確率が50:50でも)、公開裁判で決着を付ける必要性があれば起訴が可能になる。これが検察起訴と市民起訴とで異なる「起訴基準」にほかならない。
公開裁判で決着を付けるとの趣旨を貫けば、検察審査会の起訴議決に基づいて起訴された事件の多くが無罪になろうと、刑事司法の透明性という価値観は実現されることになる。もっとも、起訴されれば、市民起訴であろうとも、被告人のダメージは計りしれない。
結局、市民の声を司法に反映させ、透明性を確保するという利益と、被告人の人権とをてんびんにかけて、国民がどう選択をするかに帰結する。有罪の可能性が50:50の政治案件についても、透明性確保の観点から現行のように検察審査会の議決対象にするのか。あるいは、除外するのか。さらには、起訴基準に応じて、裁判所の判決基準は変える必要はないのか。
小沢元代表の裁判の結果は、将来における検察審査会制度や司法制度の在り方を見据える上で多大な影響を与える。
■若狭勝(わかさ・まさる) 元東京地検特捜部副部長、弁護士。1956年12月6日、東京都出身。80年、中大法学部卒。83年、東京地検に任官後、特捜部検事、横浜地検刑事部長、東京地検公安部長などを歴任。2009年4月、弁護士登録。座右の銘は「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」。
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