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暗黒夜考〜崩壊しつつある日本を考える〜
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【注目記事】 アメリカの狙いは農業じゃない! TPPは日本経済を襲う真っ黒な巨大津波となる
2011年10月12日
「TPP参加」が如何に日本にとって不合理であり、日本のあらゆる産業分野を危険に晒すことになるかについては、つい先日のエントリーにてコメントした通りである。
以下に転載するのは少し前の特集記事であるが、野田政権がいよいよ「TPP参加」に向けて大きく舵を切った今だからこそ、改めて確認いただきたい内容である。
アメリカの卑しい陰謀については、記事の冒頭部分にて、ロナルド・カークが「現時点でTPPに日本を駆り立てるのは人の弱みにつけ込むようなもの」と、自ら日本を食い物にすることを露呈しているコメントに凝縮されているといってよいであろう。
(転載開始)
◆農地、共済まで根こそぎ──標的となるのは「金融」「投資」分野だ
アメリカの狙いはコメじゃない! TPPは日本経済を襲う真っ黒な巨大津波となる
(SAPIO 2011年6月29日号掲載) 2011年7月11日(月)配信
文=東谷暁(ジャーナリスト)
東日本大震災を受けてUSTR(米通商代表部)のロナルド・カーク代表は「現時点で(TPPに)日本を駆り立てるのは、人の弱みにつけ込むようなものだ」と述べた。被災した日本を気遣っての発言と受け取られたが、裏返せば菅政権が「第三の開国」と喧伝するTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)がそれだけ日本に不利になることを示唆している。ジャーナリストの東谷暁氏が日米に広がる欺瞞を暴く。
○TPP「輸出伸びる」は幻想
TPPについては、恐るべき誤解が蔓延している。問題の核心に触れるまえに、ゴキブリのように増殖する誤解を叩き潰さなくてはならない。
まず、東日本大震災が起こったため、TPPは先送りになったという報道からして間違っている。菅政権が先送りしたのは、6月までに閣議決定をすることだけで、TPPそのものを先送りしてしまったわけではない。
大震災が襲ったにもかかわらず、アメリカの高官は陰に陽に圧力をかけてきたし、日本への輸出を狙うTPP参加国は繰り返し日本に参加を促してきた。菅政権もまた、行政刷新会議で着々とTPP受け入れのための準備を進めており、先日のG8では、オバマ大統領にTPP参加決定を早めるという約束すらしてしまったのである。
○「TPPで輸出が伸びる」という議論自体が幻想
これまで菅政権や日本の経済マスコミが垂れ流してきたTPP情報もほとんど詐話といってよい。まず、TPPを締結するとコメの開放が中心的問題となるから農業従事者たちが反対している、というのが嘘話なのである。
アメリカはいまでも日本に36万tものカリフォルニア米を何の努力もなしに押し込んでいる。WTO(世界貿易機関)での取り決めで、日本はコメに高関税をかけることの見返りとして、毎年、77万tの「ミニマム・アクセス米」を輸入することを受け入れているのだが、その半分近くを、すでにアメリカ米が占めているのだ。
そもそも、アメリカが作っているコメのうち、日本人の嗜好に合うジャポニカ種は30万tほどにすぎず、そのすべてを日本に押し込んだとしても、日本のコメの消費量は900万tだから、日本のコメが乗っ取られるという試算や報道じたいが、馬鹿げた妄想なのである。
事実、アメリカのUSTR(通商代表部)が毎年発表する『外国貿易障壁報告書』でも、アメリカのコメが加工食品などで表示されていないことに不満を鳴らすものの、コメ輸出増加などにはまったく触れず、「アメリカ政府は、日本政府がWTOにおける輸入量に関する約束を引き続き果たしていくことを期待している」とだけ述べている。後に述べるように、農業分野におけるアメリカの本当の狙いはもっと別のところにある。
また、財界などが流しているTPPで対米輸出が伸びるという説だが、これは、韓国の輸出増加が根拠となっている。韓国はEUやアメリカとFTA(自由貿易協定)を結んだから輸出を伸ばすことができたというわけだ。しかし、韓国が輸出を急伸させたのは2008年からで、EUやアメリカとのFTAを結んだ後ではない。輸出が伸びたのは韓国の通貨ウォンの価値がリーマン・ショックで一時は2分の1にまで下落したので、この通貨危機を文字通り奇貨としてアメリカに輸出攻勢をかけることができたのだ。
逆に、日本は2007年夏のサブプライム問題発覚以来、アメリカの金融緩和政策のために円が約30%も高くなった。日本の対米輸出が振るわなくなったのは、この円高のせいであって、FTAやEPA(経済連携協定)を結ばないからではない。日本はこれまで12か国とEPAを結び、数の上では7つに過ぎない韓国を超えている。
アメリカはオバマ政権が中間選挙にボロ負けして、金融政策でドル安を維持するしか景気刺激策はなくなったから、これからもドル安円高誘導政策は続く。そのときに、自動車で2・5%、テレビで5%ほどの関税を10年かけてなくすというTPPによって対米輸出を増やすことなど、およそ幻想というべきものだ。
さらに、自称保守派の論者がいいたがることだが、TPPは日米の安全保障を強化するという説もおかしい。これも、安全保障問題がこじれた後にTPPが出てきたから、TPPはアメリカが差し伸べてくれた救いのように信じ込んでいるにすぎない。菅政権がオバマ政権に安保問題で足元を見られていることは確かだがTPPで安全保障を強化することなどできはしない。
例を挙げると、NAFTA(北米自由貿易協定)参加国のカナダとメキシコは、イラク戦争への参戦を拒否したが、NAFTA違反にはならなかった。オーストラリアは、豪米FTAの協議中に、イラク戦争への参加がFTA交渉を有利にするとそそのかされたため、敢えて参戦したが、豪米FTAはオーストラリアに不利なものとなった。
そもそも、いまのTPPには安全保障例外条項があって、自国の安全保障に関する情報を締結国に提供することを拒否できるし、また、自国の安全保障のための行動をTPPによって邪魔されることはない。アメリカが中東の小国と結んだFTAを別とすれば、いま経済協定で安全保障を例外にするのは常識なのである。TPPで安全保障を強化できるという話は、それでひと儲けしたい某シンクタンクなどが発信源だから、真に受けると馬鹿を見るだろう。
○郵政の簡保から医療、弁護士分野も危ない
小さな4か国による地域経済協定だったTPPを、アメリカが乗っ取ったのは、金融を含むサービス輸出と投資促進によって景気浮揚と雇用増加を達成するためだ。それまでWTOやFTAを通じてアメリカが輸出を試みてきたのは、金融を含むサービスと投資であり、今年1月にアメリカとの情報交換後に日本政府が「TPP24作業部会」を作ったさい、4か国TPPにはないのに新たに登場したのも「金融」と「投資」だった。
日本がTPPに参加すれば、アメリカの金融と投資が日本国内で加速し、郵政の簡保は市場を開放させられ、投資の対象として医療は民営化を要求され、政府事業へのアメリカ企業の投資が容易になり、これらの分野でトラブルを処理するアメリカ人弁護士の活動が拡大されるだろう。
では、農業分野についてはどうなるのだろうか。農業分野も金融と投資が中心でコメが狙いではない。まず、農協の保険である共済をアメリカ保険業界が狙っていることは、USTRの『外国貿易障壁報告書』が強く開放を要求していることからも分かる。
また、これまでアメリカの多国籍企業は経済協定を結んだ国の農産物加工を支配し、農地への投資を試みてきた。NAFTAではカナダの農産物加工業の7割から9割はアメリカ系企業のものとなり、メキシコの農産物の輸出先の76%はアメリカとなってしまった。いまも、菅政権は行政刷新会議で農地の自由売買化を推進し、農業生産法人への外資による投資を加速しようとしているから、同じ轍を踏まないともかぎらない。
日本がTPPの妄説に惑わされて参加すれば、アメリカは日本のほぼ全領域にわたって制度変更を要求し、それはまさに東北の東海岸を襲った真っ黒な巨大津波のように、日本全土をまたたく間に侵食してしまうだろう。
(転載終了)
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