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http://president.jp.reuters.com/article/2011/10/07/B0CA4D4C-E979-11E0-9608-06F83E99CD51.php
・・国や社会の在り方や運営についての重要な情報は、すべて政府、官僚の側が独占していた。
九州電力のいわゆる「やらせメール」問題を受けて、経産省は各電力会社に調査を指示した。この調査の結果、経産省側が電力会社に対して原発説明会への動員、発言要請を行っていた事実が明らかになり、原子力発電所をめぐる「やらせ」の問題が大きな社会的関心事となっている。しかし、そのような「やらせ」と言われる行為がなぜ悪いのか、どこに問題があるのか、という点について十分な議論が行われているとは言い難い。
この問題を考える際に無視することができないのは、05年10月末に表面化した国主催のタウンミーティングをめぐる「やらせ問題」である。このタウンミーティングは、政府と国民との対話の場として小泉政権の一つの目玉として実施された。問題となったのは主催者の国の側からあらかじめ発言者が決められ、発言要請が行われていたこだとだ。この問題は、当時、大きな社会的問題となり、内閣府に設置されたタウンミーティング調査委員会に、私もコンプライアンス問題に関する有識者委員として関わった。
かつては、国や社会の在り方や運営についての重要な情報は、すべて政府、官僚の側が独占していた。そのような状況においては、国が企画する説明会、イベント等は、国の政策、施策について国民の理解を広め、浸透させる目的で行われるものだった。
しかし、バブル経済の崩壊により、旧来の日本の経済・社会の構造は大きな変化を余議なくされた。また、IT技術の進歩やインターネットの普及により、コミュニケーション手段に大きな変革が起きていた。こうした中で、小泉政権下で実施されたタウンミーティングは、まさに、内閣と国民との対話、市民とのコミュニケーションを目的として行われるものであった。
ところが、タウンミーティングの運営を行う官僚には、この国民との対話が求められるに至った社会環境の変化に対しての認識が希薄であった。従来の閣僚が出席する企画、イベントと同じような対応を行い、国民から厳しい批判を受けた。環境変化への不適応のために生じた不祥事ともいえ、このことは、大震災と福島原発事故によって原発の安全神話が崩壊し、国民の原発に対する認識が大きく変わったなかで、やらせメール問題を起こしてしまった九州電力と共通する。
「理解活動」は反社会的か
06年12月13日に公表されたタウンミーティング調査委員会報告書は、国主催の討論の場において、主催者側が特定の参加予定者に特定の内容の発言の依頼をすることを厳に禁止すべきであるとした。同報告書により、そのような行為は「世論誘導」に当たり許されないとの「規範」が明確に示されたと見るべきであり、この問題を境に、国や、それと同等の立場に立った場合の地方自治体にとっても、この規範は重要な意味を持つようになったと考えるべきであろう。
原発の説明会における主催者である行政側が、電力会社社員への参加要請や発言の依頼が今回明らかになりつつある。この行為をどのように評価すべきかに関しては、小泉内閣のタウンミーティング問題の表面化や、その調査委員会報告書の公表の前か後かで行為の評価は大きく異なってくるのだ。
電力会社側の対応に関しても同様である。福島原発事故以前は、原発が安全であることの「理解活動」の延長上で、説明会において原発への賛成意見を確保しようとする行動も、明らかに反社会的とまでは言えないものであった。 しかし、それが、タウンミーティング調査委員会報告書により主催者による「世論誘導」的行為の不当性が指摘された後の出来事で、電力会社側の独自の判断ではなく、主催者である行政の要請に応じて行われたものであれば、社会規範に反する行為への協力という面で問題があると言わざるをえない。
重要なことは、過去の説明会などで行われていたことの真相を明らかにし、それを踏まえて、今後、原発問題について国民が公正な判断を行う基盤をつくっていくことである。(郷原信郎)
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