http://www.asyura2.com/11/senkyo120/msg/481.html
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(1)ほぼ予想通り、東京地裁は、先月(2011年9月)26日午後、小沢一郎元民主党代表の元秘書ら3名に有罪の判決を下しました。
(2)この判決につき小沢氏は、「何の証拠もないのに、裁判官が独断で推測に基づいて有罪」にしたと批判したようです。
毎日新聞 2011年10月2日 21時03分(最終更新 10月3日 1時19分)
『小沢元代表:「証拠なく有罪考えられぬ」ネット番組で批判
民主党の小沢一郎元代表は2日、インターネット番組に出演し、石川知裕衆院議員ら元秘書3人が政治資金規正法違反事件で有罪判決を受けたことについて「何の証拠もないのに、裁判官が独断で推測に基づいて有罪を決めてしまうのは民主主義国家では考えられない。本当にびっくりした」と強く批判した。
9月26日の有罪判決後、小沢元代表が公の場で発言するのは初めて。元代表は「既得権益を持ち続けてきた人にとっては、(自分が)最大の狙いだった。政権交代のスケープゴートにされた」と述べ、判決を不服とする姿勢を示した。
判決が水谷建設からの裏献金を認定したことについては「不正な金銭の授受があったということを推測で前提にして、有罪だと決めたので二重にびっくりした」と批判。「最も国民の生命、財産、人権を守らなくてはいけない裁判所までが、そういうことになってしまっている。非常に心配だ」とも述べた。【葛西大博】』
(3)しかし、この小沢氏の判決批判は全く的外れどころか、判決を曲解するものです。
ひょっとすると、あえてデマを流しているのではないかとの疑念さえも生じます。
そもそも、元秘書ら3名の有罪は客観的な証拠に基づいて帰結できるものでした。
まず、西松建設の他人名義の違法献金についてですが、西松建設側もそれを認めていました。
それを受け取る側の二階大臣(当時)の秘書も略式起訴されていましたし、小沢氏の元秘書らも違法性を認識していることを示す物証(業務用ノートと書面における寄付の内訳明記)があり、被告人大久保氏の冒頭陳述も、役員報酬に寄付分の上乗せがなされていることを認めており、墓穴を掘っていました。
ですから、小沢事務所が公共事業につき「天の声」を発していたとの認定をしなくても、被告人大久保氏の有罪を結論づけることが可能だったのです。
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51618618.html?blog_id=2778940
また、土地取得をめぐる事件では、冒頭陳述などで、小沢氏が陸山会に貸付けた「4億円」につき被告人石川氏は政治資金収支報告書に記載していると簡単に見破れる嘘をついていましたし、被告人池田氏は当該「4億円」は「預り金」だと通用しない弁明をしていましした。
政治団体間の政治資金の移動の不記載や虚偽記載につき、被告人池田氏は「一つの財布」だ思っていたと驚くべき弁明をしていましたし、取得した土地の報告を1年遅らせる工作をしていたことを「自白」していました。
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51618710.html?blog_id=2778940
ですから、水谷建設からの裏金について認定しなくても、両者の有罪を結論づけることが可能だったのです。
(4)現に、裁判所は、いずれの事件についても、政治資金収支報告書や銀行口座記録など客観的な証拠に基づいて、他人名義、虚偽記載・不記載による有罪判決を下していました。
決して「何の証拠もないのに、裁判官が独断で推測に基づいて有罪」にしたなどという判決ではありませんでした。
ですから、小沢氏の批判は、判決を曲解しているか、あるいは、それを分かった上で主張しているデマなのです。
(5)小沢氏は、裁判所が西松建設違法献金事件で「天の声」を認定し、土地取得をめぐる事件で裏金を認定したことが気に食わなくて、そのような批判をしているのでしょう。
しかし、そのような認定は、有罪か無罪かを決定づけるものではありませんでした。
裁判所は前述のようにして有罪の判断をした上で、他人名義の寄付、虚偽記載・不記載の背景や動機を判断する際に、そのような認定をしていただけなのです。
わかりやすく言えば、量刑(執行猶予の有無)を決める際に「天の声」や裏金など小沢事務所と業者との癒着の認定を考慮しただけなのです(もちろん、量刑での認定も軽視できないので「天の声」や裏金などの認定については、別の投稿で取り上げます)。
(6)今月(2011年10月)6日、被告人小沢一郎氏本人の刑事裁判の初公判がありました。
そこで、小沢氏は以下のように意見を述べたと報じられました。
毎日新聞 2011年10月7日 東京朝刊
陸山会事件:小沢元代表初公判 意見陳述(全文)
『6日の東京地裁の初公判で小沢一郎・民主党元代表が読み上げた意見陳述は次の通り。
起訴状への見解を申し上げます。検察の不当な捜査で得た調書を唯一の根拠にした検察審査会の誤った判断に基づくものに過ぎず、裁判は直ちに打ち切られるべきと思います。百歩譲って続けるにしても、罪に問われる理由は全くありません。政治資金収支報告書に間違った記載をした事実はなく、虚偽記載に当たる事実はありません。まして、虚偽記載の共謀をしたことは断じてないのであります。検察は、特定の意図で国家権力を乱用し、議会制民主政治を踏みにじったということにおいて憲政史上の一大汚点として残るものであります。
そもそも政治資金規正法は収支報告書に間違いがあったり不適切な記載があった場合、会計責任者が総務省に報告書を修正することが大原則と思います。贈収賄、脱税、横領など実質的犯罪でないものについて、検察などが報告間違えや不適切な記載を捜査すると、自由な政治活動を阻害する可能性があります。国民主権を侵害する恐れもあります。何百件、何千件と数え切れない報告間違えがあっても実質的な犯罪でないものは、すべて収支報告書の修正で処理されてきました。唯一、私と私の資金管理団体だけが、実質的犯罪を犯した証拠は何もないのに、東京地検特捜部によって強制捜査を受けたのであります。
もちろん私は収賄、脱税、背任、横領など実質的犯罪はまったく行っていません。なぜ、私だけが単純な虚偽記載で、何の説明もなく、突然に原則を無視して強制捜査を受けなければならないのか。到底、公正で厳正な法の執行とは言えません。
西松事件の強制捜査、陸山会事件の強制捜査など、延々と捜査を続けたのは明らかに常軌を逸していたと思います。検察が政治家・小沢一郎個人を標的としたとしか考えられません。政治的、社会的に抹殺することが目的だったと推認できますが、明確な犯罪事実と根拠がないのに特定の政治家を対象に強制捜査をしたのは明らかな国家権力の乱用であり、民主主義国家では到底許されない暴力行為であります。
特に許せないのは国民から何も負託されていない検察・法務官僚が議会制民主政治を踏みにじり、公然と国民の主権を侵害したことであります。一昨年の総選挙の直前、証拠もないのに検察は国家権力を乱用し、野党第1党の代表である私を狙ったのであります。とりわけ2年前の総選挙は本格的な政権交代が十分に予想された特別なものでした。こんな時に、総選挙の行方を左右しかねない権力の行使が許されるなら、日本はもはや民主主義国家とは言えません。
戦前、軍人と官僚や検察・警察官僚らが結託し、マスコミを巻き込んで国家権力を乱用し、政党政治を破壊しました。その結果は無謀な戦争への突入と敗戦という悲劇でありました。昭和史の教訓を忘れ、権力の乱用を許すなら、日本は必ず同様の過ちを繰り返すに違いありません。
東日本大震災からの復興はいまだ本格化せず、福島第1原子力発電所の事故は収束のめどすらつかず、加えて欧米の金融財政危機による世界恐慌の恐れが目前に迫ってます。政治の混迷が深まると、国民の不安が遠からず爆発して、偏狭なナショナリズムやテロリズムが台頭し、日本の将来は暗たんたるものになります。悲劇を回避するには、国家権力の乱用をやめ、政党政治への信頼を取り戻し、真の議会制民主主義を確立するしかありません。まだ、間に合うと私は思います。裁判官の皆様の見識あるご判断をお願い申し上げ、私の陳述を終わります。ありがとうございました。』
(7)この小沢氏の意見については、朝日新聞(2011年10月7日)で私のコメントが紹介されましたが、ここでは、それを敷衍して書いておきます。
小沢氏は、東京地検特捜部が自身の不起訴(秘書らの起訴)をしたとき、確か、妥当な判断をした旨、コメントしていたのを、私は記憶していますし、小沢氏が起訴されたのは検察審査会が2度の「起訴相当」議決をしたからなのに、初公判の意見では、なぜか「検察批判」を行なったようです。
これは、前述したように、秘書ら3名の有罪判決が客観的証拠に基づいて行われているため、自分が窮地に立たされていることを自覚した結果なのでしょう。
(7)小沢氏は虚偽記載、不記載が単なる形式的な犯罪であるかのような発言をしていますが、4億円もの高額な不記載が修正をすればそれで済まされるようなことがあれば、虚偽記載や不記載に罰則を定めている意味はなくなってしまいます。
小沢氏は、1993年に発行した自らの著書『日本改造計画』講談社のなかで、政治資金規正法違反の言い逃れを封じるために連座制を強化するよう提案していました(73頁)。
これは、当時、政治資金規正法違反容疑について、政治家が秘書のせいにして言い逃れをしてきたことを批判し、連座制により政治家本人の責任を追及しようと提案していたことを意味しています。
このような提案がなされるということは、虚偽記載や不記載のような政治資金規正法違反が単なる形式的な犯罪ではないと考えていたからでしょう。
それなのに、自分とその秘書らが刑事責任を追及されたら、これまでの認識・評価と矛盾することを主張するのは、論理一貫しないだけではなく、政治家として無無責任です。
裁判官は小沢氏に対し良い心証を抱いたとは思われません。
その逆でしょうね。
(8)初公判のあと、小沢氏は、記者会見を行なったようです。
毎日新聞 2011年10月6日 23時56分(最終更新 10月6日 23時59分)
陸山会事件:小沢元代表、初公判後の会見・一問一答
『民主党の小沢一郎元代表が6日、衆院第2議員会館で行った記者会見の要旨は次の通り。
−−議員辞職や離党について。
元代表 私も私の秘書も、有罪と認定されるようなことは何もしていない。(石川知裕衆院議員ら元秘書3人に対する)判決も、法的な証拠も何もない。裁判官が自分の推測と推断で事実を認定し、それに基づいて判決を下す。司法の自殺に等しい。何も違法なことはしていないので、そのようなことを考えるつもりは全くない。
−−国会で説明責任を果たす考えは。
元代表 君はどう考えているのか。司法の公判が進んでいる時、他の立法権やその他のことをいろいろと議論すべきだと思っているのか?
−−国会での説明も重要だ。
元代表 三権分立をどう考えているのか。いろいろな力や干渉によって、結果が左右されるようなことになってはいけないから、司法は独立している。
−−今回の虚偽記載の件に関して、元代表が用立てたとされる4億円の原資は。
元代表 原資は私のお金です。詳しく聞きたければ検察に聞いてください。強制捜査を1年以上もやって、国会で説明する、君たちに説明するどころじゃないでしょ。
−−小沢さんが検察とマスコミに狙われるのは、検察人事や記者会見のオープン化のためか。
元代表 マスコミも、法律的にも集中排除の原則というのは規定されている。どういう分野でも、自由な競争は必要だ。
−−司法のあり方を疑問視する声がある。
元代表 テレビ、新聞の世論調査、国民の声が、必ずしも、全国民の意見を代表しているとも思えない。「頑張ってくれ」という大勢の方もいる。』
(9)以上の記者会見の紹介記事を読むと、小沢氏が自分に不都合な質問には答えず、都合の良い質問には答えることがわかります。
また、小沢氏が国政調査権、司法権の独立、三権分立制の憲法上の意味を知らないこともわかります。
たとえば、小沢氏の支持グループが小沢氏のために裁判長の訴訟指揮などを批判するために(あるいは元秘書らの判決内容そのものを批判するために)国政調査権を行使するのであれば、それは”司法権の独立”を侵害することになるのですが、記者の質問したのは、そのような国政調査権の行使ではないでしょう。
国政調査権の行使は個人の刑事責任を追及するものでもないし、そのような行使は許されません(そもそも問題になっている事件で衆参各院は刑罰を加えられませんので、そのような行使は不可能とも言えるのですが)。
さらに、政治家の説明責任の重要性もわかっていないようです。
国民主権を採用している以上、政治家は、国民の代表者として疑惑を払拭するために説明する責任があるのですが、これは、刑事責任とは別なのです。
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51312692.html?blog_id=2778940
つまり、政治責任があるかどうかとは別に、政治家には、主権者国民に対し政治的責任を負っているのですから、説明責任を負っているのです。
特に小沢氏は、これまで「政治資金は全てオープンにしている」旨、豪語していたのですから。
(10)小沢氏の弁護側が提出した冒頭陳述については、小沢氏の罪状認否での意見とは異なる(矛盾する)ことが書かれていますし、墓穴を掘っているような内容もあります。
これについては、またの機会に投稿します。
(http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/)
[コメント]
>小沢氏の判決批判は全く的外れどころか、判決を曲解するものです。
ひょっとすると、あえてデマを流しているのではないかとの疑念さえも生じます。
>そもそも、元秘書ら3名の有罪は客観的な証拠に基づいて帰結できるものでした。
これ以降の説明は理路整然としたもので説得力があります。
そして下記が結論です。
『ですから、小沢氏の批判は、判決を曲解しているか、あるいは、それを分かった上で主張しているデマなのです。』
会見でも小沢は真摯に質問に答えずに、質問した記者を怒鳴り散らして、質問から逃げようとする有様でした。
小沢には国民に真摯に説明する意思など毛頭ないのでしょう。
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