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東京電力・福島第一原発事故の賠償はどう進んでいくのか。これは国民の大きな関心事である。10月4日付けのこのコラムで、東電の経営・財務調査委員会が出した報告によれば「東電がリストラすればするほど、被災者や国民ではなく、銀行や株主がほっと一息つける仕組みになっていた」と私は書いた。菅直人前首相のときから民主党政権は「国民負担を極小化するために、東電に徹底したリストラを求める」と説明してきた。ところが、これは真っ赤な嘘だったのだ。
報告書を読んでみれば一目瞭然
ちょっと複雑なので、念のためにもう一度、説明しておく。調査委員会報告は肝心の賠償負担について、こう書いている。長くなるので要約する。「東電が実施する賠償債務の支払いに充てる資金は、支援機構が東電に対して同額の資金交付することで同額の収益があるとの前提をおいたうえで、連結純資産には損害賠償引当金を反映させていない」
つまり賠償金は支援機構が払ってくれるので、東電の財務シミュレーションでは考慮していない。ここが議論の出発点である。では、東電は機構に肩代わりしてもらった賠償金は「全然、返済しなくてもいいのか」といえば、そうではない。原子力損害賠償支援機構法によれば、機構から資金援助を受けた事業者(東電)は「特別負担金」を払って返済する仕組みになっている。だから、いずれ東電は賠償金を返済しなければならない。問題はここからだ。
この特別負担金について、調査委報告がどうなっているかといえば「東電の今後の収支状況に照らし、電気の安定供給等にかかわる事業の円滑な運営に支障がない限度において、主務省令で定める基準に基づき定められることになっているため、また将来にわたって東電が負担する費用であるため、実態純資産の把握にあたって考慮していない」(一部要約)と書いている。
さらに、次のような記述もある。「(東電は)2012年3月期において多額の欠損金が発生する見込みであり、特別負担金の支払い金額および期間がどの程度になるか不確定な状況にあることから、課税所得が分からず、税効果の調整は反映していない」(同)つまり特別負担金の金額は「主務省令で基準を定める」から財務シミュレーションで考慮せず、金額だけでなく支払い期間も分からないと言っている。
「返済は無理しなくても結構」 報告の別の部分では、ずばりこう書いている。「特別負担金の支払いについては、損害賠償の総額が不確定であること、各年における支払額確定のルールが現時点では定まっていないことから、試算では取り込んでいない」以上をまとめれば、ようするに、こういうことだ。・・・東電は支援機構から賠償金を払ってもらう。ところが、賠償額がいくらになるか分からない。だから東電は機構への返済計画も示さない。
これは話を住宅ローンに置き換えたら分かりやすいだろう。住宅がいくらになるか分からないが、資金は全部借ります。でも返済計画は示しません。こんな話でローンに応じる銀行がないのは当たり前である。政府は東日本大震災の復旧・復興にあたって、今後5年間で残り13兆円の支出を予定している。一方で、財源として年金流用分などを含めて総額11兆円余の増税を国民にお願いしている。
復興増税では国民に「財源がない」話をさんざん広めて増税計画をしっかり立てておきながら、東電に支払う賠償金の立て替え払いは返済計画を求めない、という話になっているのだ。経済産業省を退職した元改革派官僚、古賀茂明の表現を借りれば「ある時払いの出世払い」という話である。こんなばかな話があるだろうか。
賠償額がいくらになるか、見通しがついていないが、調査委報告は4兆5000億円余にのぼると一応、試算した。今後、膨大な除染作業や海を汚染したために海外から求められるかもしれない損害賠償などを考えれば、とてもそんな額では済まず、ゼロの桁が違うだろう。この賠償支援枠組みが当初、報道されたころは「(東電の支払いは)10年間の長期返済で年1000億円程度」などという話が広がった。それで総額1兆円である。ところが返済枠組みが決まっていない以上、10年返済どころか100年返済、あるいは1000年返済のようなひどい話にならないとも限らない。
調査委報告が指摘しているように、そもそも特別負担金は「電気の安定供給や原子炉運転にかかわる事業の円滑な運営に必要な資金を確保できるものであること」「収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しない範囲である」などの基準が内閣府・文部科学省の省令で定められている。言ってみれば「払える分で払えば、無理しなくても結構」という話なのである。
本当の責任は経産省にある
こうした「ある時払い」の返済計画を認めて資金を出すかどうかは、出す側の原子力損害賠償支援機構が東電の事業計画を承認するかどうかにかかっている。ところが、ここにも問題がある。支援機構の業務を司る運営委員会の委員長には、先の調査委員会の委員長だった下河辺和彦弁護士が就任している。下河辺以外の4人の調査委メンバーも全員、支援機構の運営委員に収まった。どういうことか。
つまり、カネを出すかどうかを決める支援機構側の責任者たちが「機構はカネを出せ。返済はある時払いでいい」という報告をまとめた側の人間なのだ。これでは初めから話がまとまるに決まっている。典型的な利益相反ではないか。
調査委報告は先のコラムで指摘したように、廃炉費用も1兆円余と低く見積もっていた。それで厳しいリストラをすれば財務状態は無事、資産超過のピカピカ会社になって、銀行や株主の責任は問えない仕組みになっている。初めから「銀行と株主の救済ありき」で資産超過という結論を導くために、あの手この手で細工したといっても過言ではない。こんなでたらめがまかり通るようでは、普通の民間会社にガバナンスをしっかりせよ、などと言えた話ではない。そういう仕組み作りを主導してきたのが経産省なのだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/22120?page=4
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