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新聞の見出しが「不公平感 解消遠く 働く女性の批判必至」となっていると、多くの人はそういう先入観で記事を読むことになるだろう。専業主婦の妻ら第3号被保険者制度の見直し案で、厚生労働省が29日に示した「保険料の半分を妻が払ったとみなす」二分二乗案は、専業主婦らの受給権を高めるとともに、働く女性たちの批判に応えようとしたものだ。こう続くと「なるほど」と頷いてしまう。
国民年金の3号制度について、小宮山洋子厚労相が「本当におかしな仕組みだ」と批判している。だが、ちょっと待ってと言いたい。今日の社会情勢にマッチしていないとしても、3号制度には歴史的な経緯がある。その歴史的な年金制度の下で働き、保険料を支払い、家族を養い、今は年金生活を営んでいる人が多数いる。その現実を忘れては困る。小宮山女史の世代で、キャリアウーマンはそう沢山いる訳ではない。
国民年金制度が始まった当時(1961年)、日本の社会では、男性が外で働き、女性は家事と育児で家庭を守る。夫婦で働くのは、横丁の八百屋、魚屋、雑貨屋などの個人店舗。戦後復興の中でこのような社会が出来上がり、その家族構成を前提に設計された年金制度であった。即ち、工場やオフィスで働く人を対象にした厚生年金に加えて、国民年金は家族経営の個人を対象にした年金としてスタートした。
85年に、いわゆる男女雇用均等法の改正により、雇用における男女の機会均等と待遇の差別解消が進められた。この背景には日本の経済成長と女性の高学歴化に伴い、女性の社会進出が増えたことが挙げられる。この時、働く女性とのバランスで、専業主婦について【二分二乗】が言われた。だが、今回言われている二分二乗とは、その意図する所は明らかに違っていた。
家庭を主婦が守るから、夫が仕事に邁進できる。これによって日本は世界第二の経済大国になった。だから妻の家事を高く評価しよう。そこで夫の収入を二分し半分を妻の収入と見做し、両者に課税する。これが当時言われた【二分二乗】である。所得税は累進するから、夫婦二人の合計所得税額は、夫一人の所得税額よりは少なくなる。この時、専業主婦の年金として3号被保険者制度が設けられたと記憶する。
バブル経済が崩壊し、日本の経済成長が停滞。増えぬ夫の収入だけでは、子供の教育費や住宅ローンが支払えない。そこで家庭の主婦がパートタイマーとして就業する。また、それより以前に始まったモータリゼーションにより、日本の多くの都市の郊外に大型店舗が次々と開店。一方、駅前商店街やアーケード街は次々とシャッター街へと衰退し、横丁の小売店の老夫婦は店を閉じた。日本の社会は大きな変化をした。
このような社会環境の変化が、保険料を納めない専業主婦に国民年金を給付するのはおかしいとの議論を生み出した。この環境変化に対応し対策を講じる。そのことは間違っていない。厚労省が示した、@妻に保険料負担を求める。A夫に追加負担を求める。B妻の基礎年金を減額する。――の3案は検討の価値はある。だが、おかしいのは、これに便乗した【二分二乗】である。
厚労省が示した【二分二乗】は国民年金だけではない。厚生・共済年金についても、「夫の保険料の半分を妻と共同で負担したとみなし、夫婦それぞれが年金を半額ずつ分割して受給する方式に見直す」と言うものである。新聞見出しの「不公平感 解消遠く 働く女性の批判必至」とは全く違う内容なのである。それを新聞は、「見直しが実現すると受給額が減ることになる」と一行入れているだけである。
「受給額が減る」を分り易く言うと、夫婦二人が健在なうちは年金受給額に変わりはない。だが、夫が先立つと、夫の厚生年金の四分の三の遺族年金が消滅する。妻が先立つと夫の年金は現在より少なくなる。その年金の減額幅に個人差はあるが、概ね最低で3割、多い場合は4割強が減ることになる。いわゆる1階部分の不公平を解消すると言いながら、2階部分の厚生年金の給付削減が、今回の案の骨子なのである。
見直す必要はあるが、「第3号被保険者」の年金受給権には、歴史的な経緯がある。処が、厚労省官僚は、その権利を無視して、働く女性と専業主婦の差別解消を掲げ、その実は【国民の財産権】を奪おうとしている。4年前は、高齢者は「姨捨山」に行けという後期高齢者医療制度を目論み、今度は寡婦・寡夫は長生きするなという制度設計を目論んでいるようだ。これが厚労省に限らず、霞ヶ関官僚の本音なのだろう。
http://www.olivenews.net/news_30/newsdisp.php?n=115044
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