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全国民必読 新聞,テレビはビビッて報じない どじょう野田を操る"本当の総理" 勝栄二郎の正体
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/21453
2011年10月03日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
国民が知らぬ間に、この国は乗っ取られていた。「正心誠意」は勝海舟の言葉なり
泥沼のような民主党から財務省が掬い上げた1匹のどじょうは、2年の間に肥え太り、食べごろとなった。大物次官の最後の仕上げは、「増税色」に染まったこのどじょうを国民に踊り食いさせることだ。
■国を動かすのは野田じゃない
「野田政権は、財務省に完全に支配されている。真の総理は野田佳彦ではなく、その背後にいる勝栄二郎事務次官である」
いまや永田町と霞が関の共通認識になりつつある、その事実を如実に物語っているのが、9月13日に野田が衆院本会議で行った所信表明演説の一節だ。
「政治に求められるのは、いつの世も『正心誠意』の4文字があるのみです」
野田が演説で繰り返した「正心誠意」という言葉は、もともとの原稿では通常の「誠心誠意」だったという。ところが野田は、「これは『正心』のほうがいい」と言って、自ら原稿に手を入れて修正した。
この「正心誠意」は、幕末から明治維新の激動期を生き抜いた「最後の幕臣」勝海舟の語録『氷川清話』に収録されている言葉だ。野田は歴史小説ファンとして知られ、勝海舟が政治の要諦として語った「正心誠意」を、あえて自らの所信表明演説で使ったかに見えた。
だが、これは政官関係者を驚愕させた。
「勝事務次官は、『勝海舟の末裔』と言われています。野田首相は、わざわざ原稿を手直ししてまで、勝海舟の『正心誠意』という言葉を演説にはめ込んだ。官邸内では、『そこまでして勝事務次官と財務省に媚を売るのか』と、衝撃を受けたスタッフも多かったのです」(官邸関係者)
実は、勝次官が海舟の末裔かどうかは定かではない。本人も、メディアの取材に対し「違う」と否定したことがある。ただし、「あえて大っぴらに否定してはこなかった」(財務省関係者)ため、「海舟の末裔伝説」は、いまだ一人歩きしている。
野田はあえて、あの所信演説をすることによって、勝に対してはっきりと「私はあなたとともに歩みます」と熱烈ラブコールを送ったのだ。
では何を一緒にやるというのか。勝は財務省の意思を体現する主計畑のスーパーエリートだ。そして、財務省の長年の悲願と言えば、「消費税の増税」に他ならない。
みんなの党・江田憲司幹事長はこう語る。
「財政再建だとか理由をつけていますが、財務省がなぜ増税をしたがるかと言えば、自分たちが差配できるおカネを増やし、かつての栄華を取り戻したい、というのが理由です。
財務省は旧大蔵省の時代から国家権力そのものであり、国を動かすのは自分たちだという自負が非常に強かった。何しろ、憲法上は内閣に権限がある予算編成すら、自分たちの権限だと言い張っているくらいです。
私は橋本龍太郎内閣で、旧大蔵省から金融行政を分離させる財金分離などの行革に携わりましたが、当時、為替資金課長の身ながら、水面下で大蔵省の組織を守るために動いていたのが、勝さんでした」
勝栄二郎、61歳。「最後の大物次官」と呼ばれ、財務省にとっては切り札的な存在だ。
勝は'75年に旧大蔵省に入省し、選りすぐりのエリートが集まる財務省の中でも、さらにエリート中のエリートの証である、主計局畑を長く歩んできた。
'97年に主計局公共事業担当主計官、'98年に主計局主計官兼主計局総務課、'00年には官房文書課長。'02年に主計局次長となり、'07年に理財局長、'08年に官房長、'09年には主計局長と順調に階段を上り続け、昨年7月、ついに満を持して事務次官に就任した。
趣味はサッカーで、旧大蔵省時代に省内サッカー部を創設したという。イングランドのプレミアリーグとドイツのブンデスリーガの大ファンで、大きな試合の際には深夜までテレビに齧り付くことも。世界一となったなでしこジャパンに国民栄誉賞が贈られたのは、サッカー好きの勝氏のプッシュがあったからだ、と霞が関では噂されている。
4歳から高校1年生になるまでの少年時代を、ドイツで送ったため、「勝さんは、日本語よりドイツ語のほうが上手い」というジョークが財務省内にはある。実際、会議などでも発言は少なく、たとえしゃべってもボソボソとした話し方のため、部下たちは勝が何を言っているのか、聞き取るのに必死にならざるを得ない。そしてそれが「得体の知れなさ」に繋がり、勝への畏怖心が醸成される原因にもなっている。
恰幅の良い、温厚で篤実そうな風貌。公の場では笑顔を絶やさず、聞き上手でもあり、特に政治家に「勝好き」が多い。
かつて、政府が景気浮揚のための財政出動をしようとした際、主計局長だった勝がクビを縦にふらず、業を煮やした亀井静香金融担当相(当時)が、「勝のクビを切れ!」と当たり散らしたこともあった。
その亀井ですら、周囲にこう語っている。
「よく勝を呼びつけて怒鳴りつけるんだが、あいつは呼べばすぐにやってくる。可愛げがあるんだよ」
だが、勝とは果たして、可愛い≠ネどという表現で済まされるような、生ぬるい官僚なのか。旧大蔵省出身の民主党・田村謙治代議士は、笑顔の裏に隠された、勝の表向きとは違った強面の一面をこう評する。
「勝さんは、自分の気に入らない人材は全部、飛ばす。たとえば勝さんは最低3年は次官を務めると言われていますが、そのために、自分の1期下、2期下のエース候補は全部潰してきた。いまの財務省の幹部たちは、みな勝さんのお眼鏡にかなった、勝帝国≠フ子分たちなんですよ」
■勝が作った「内閣」
勝の力≠フ根源は、与野党を問わずあらゆる方面の政治家、識者、大手メディアとの人脈だ。前出の亀井のように、本来は増税反対の者ですら、個人レベルでの勝シンパは多い。
それは、勝が主計局の「実働部隊」として、長く現場での折衝や情報収集にあたってきたからだ。そして、「日本語がヘタ」と揶揄されたほどの素朴な語り口を逆に利用し、会った政治家を籠絡していく術を、勝は心得ている。財務省出身の和田隆志代議士(民主党)はこう語る。
「勝さんの力は、いわばソフトパワー≠ネんです。適当なおべんちゃらを言うのではなく、朴訥な口調で余計なことは一切言わず、政治家をその気にさせて、乗せるのが抜群に上手い。
私は財務副大臣の秘書官をしていた時代に勝さんと接点がありましたが、当時の勝さんは文書課長でした。文書課長というのは国会周りを捌く仕事で、財務金融委員会の理事ら、国会議員といちばん接触が多い役職の一つなんです。勝さんは、その当時から、個々の政治家を相当に研究していたと思います。しかも、ネットなどで適当に調べたのではなく、直に接点を持って確認しているのですから、これは強いですよね」
勝が、個々の政治家の特質を把握していることがよく分かるエピソードがある。'10年夏の参院選で、当時の菅直人首相は、唐突に消費税の増税問題を争点に取り上げ、物議を醸した。実はその背後にいたのも勝だというのだ。
「その直前、勝氏は菅前首相とその夫人・伸子さんとの会食の場を設けました。そこで、まずは伸子さんに対し財政再建の重要性を説いた。菅氏は周知のように、姉さん女房の伸子さんには頭が上がらない。『増税を成し遂げれば、菅首相は歴史に名が残る』という説得に伸子さんがその気になり、それが菅前首相の消費税発言に繋がった」(ジャーナリスト・須田慎一郎氏)
勝の掌の上で転がされているのは、政治家のみならず、新聞・テレビなど大手メディアも同様だ。勝が各報道機関の幹部を籠絡していることもあるが、
「政治家もマスコミも、財務省が管轄する国税庁が怖い。鳩山由紀夫元首相や小沢一郎元代表らも国税庁に脱税情報で尻尾を握られていると囁かれていますが、国税の査察を怖れるのはマスコミも同様です。だからビビッて、勝氏のことを書くことができない」(全国紙政治部デスク)
勝が主計局長だった当時、仙谷由人、枝野幸男ら民主党幹部が集まり、
「勝は個人であまりに力を持ち過ぎている。危険な存在だ。農水次官あたりに転出させてはどうか」という議論が真剣に行われたという。しかし、政権運営に未熟な民主党は、財務省=勝の助けがなければ予算編成をすることもできなかった。結局、勝を排除するどころか完全に屈服させられる形となり、勝が事務次官になったことで、「帝国の支配」が完成する。
そんな手練手管に長けた勝が政権交代以来、2年間かけて「教育」してきたのが、野田だった。
勝と野田を繋いだのは、旧大蔵省出身で、鳩山政権初期に財務大臣を務めていた藤井裕久だ。藤井が野田を財務副大臣にした際、「面倒を見てやってくれ」と、勝に頼んだのがきっかけだとされる。
そこからは勝の得意パターンである。野田に財政のイロハを手取り足取り教えるのと同時に、野田事務所に足繁く通い、秘書ともすっかり打ち解けてしまう。気がつけば、野田にとって勝はなくてはならない存在となり、同時に勝にとって野田は、「いざ」という時の隠しダマとなった。
それが花開いたのが先の民主党代表選だ。
「勝は、消費税引き上げ内閣≠フ誕生に向け、積極的に政界工作を行ったとされています。増税反対の小沢一郎元代表の後押しを受けた海江田万里前経産相が次期総理では、増税が遠のく。そこで、影の選対本部長として、秘密裏に民主党議員に働きかけた。『野田が1回目の投票で100票も取れたのは、財務省のおかげ』と、民主党議員たちは感想を言い合っていました」(全国紙政治部デスク)
■東電を潰して増税だあ
その結果は明らかだった。野田政権の誕生に伴い、政府・官邸はほぼ完全に、勝・財務省に占領されたのだ。
分かりやすいのは、勝の肝いりで行われた官邸の人事である。実質的に官僚機構のトップとなる事務方の官房副長官には、勝にとっては東京大学在学中からの盟友、竹歳誠・前国交事務次官が就任。異例の省庁から、異例の現役次官の横滑りという形で新しい官房副長官が誕生したことになる。
さらに、財務省の次期エースと目される主計局次長・太田充が、やはり勝の意向により首相秘書官として官邸に送り込まれた。
「太田さんは実質的に、財務省のナンバー3。このレベルの人材に秘書官で乗り込まれると、他の秘書官は何も言えない。この人事は勝さんの、『われわれのやることに口出しをさせない』という強い意志を感じます」(別の官邸スタッフ)
これらはすべて、「思うがままに操れる野田政権の間に、増税への道筋を必ずつける」という、勝と財務省の総力戦≠ヨの決意表明だと言えるだろう。
さらに、野田を通じた勝の人事の妙は政府内に止まらず、党にも及ぶ。民主党税調会長は、勝と野田を繋いだ藤井裕久。そして、党の政策を司る前原誠司政調会長の背後には、同じく勝とは増税路線で足並みを揃える、仙谷由人政調会長代行が控えている。
「それだけではありません。勝氏はさらに、寝業師がいない民主党議員の代わりに、自身の片腕である香川俊介官房長を、自民党の谷垣禎一総裁ら幹部のもとに通わせています。野党の協力がなければ増税はできませんから、『経験豊かな自民党の皆様の知見を求めたい』として、ひたすら低姿勢に出て谷垣氏らを転がし、増税への布石を打ち続けている」(財務省関係者)
2年前、鳩山由紀夫は政権交代を前に、「官僚主導との決別」「財務省支配の打破」「政治を国民の手に取り戻す」などと連呼した。
いったい、あの公約は何だったのか。民主党はこの2年、党内抗争に明け暮れて、首相はすでに3人目。国民がその体たらくに呆れているうちに、いつの間にか、この国は財務省とその帝国の王・勝によって、完全に乗っ取られてしまったのである。
「勝総理」による、財務省の復権と増税計画は、いまこうしている間にも着々と進行中だ。政府はすでに、震災復興財源として所得税や法人税、地方税などの増税を打ち出しているが、問題は消費税である。
財務省が消費税アップに執念を燃やすのは、それが、吹けば飛ぶような政権の帰趨に左右されない、恒久税だからだ。
野田政権幹部の1人は、消費税アップについて、
「現在、政府税制調査会で議論が行われている、東日本大震災の復興財源について、野田首相が『消費税は外す』と言い出したのが、重要なポイントだ」
として、勝=財務省が狙う驚くべきシナリオについて、こう語る。
「官邸と財務省は、東京電力の一時国有化を視野に入れて準備を進めている。東電は福島第一原発の事故の処理で、約2兆円の預金が今年度末には900億円台になると政府に報告しており、資金ショートを起こす可能性が高まっている。
東電は、電気料金の値上げで国有化を避けようとしているが、政府はそれを認めない。東電の優先株を国が引き受ける形での国有化が既定路線になりつつある。それはなぜか?『東電を潰さなければ増税ができない』からだ」
財務省にとって、消費税のアップは並大抵のことでは世論を納得させることができない難関である。そこで捻り出されたのが、このウルトラC的計画だという。
「原発事故への対応で、世論の集中砲火を浴びている東電に制裁を下すことになります。『国はやるべきことをやった』とアピールした上で、満を持して『社会保障の財源として消費税アップは必須だ』と、持ち出す。それこそが勝政権≠フ狙いです」(民主党幹部)
勝は、東京都内にある財務省の宿舎住まいだ。本誌は、朝9時前に自宅を出た勝に、直撃取材を試みた。
しかし、勝は記者の呼びかけに一瞬驚いた表情を見せたものの、取材の意図を告げても黙ったまま。そして、記者が差し出した名刺を受け取ることもなく、多くの政治家たちを虜にしている独特の笑みを浮かべながら、「ダメダメ」と言うかのように手を振ると、そのまま公用車に乗り込んで走り去った。
国民との約束を反故にし、官僚に支配され、その意のままに増税路線を突き進む政権のどこに、「正心誠意」があるのか。
縁もゆかりもない者たちに、勝手に血脈や語録を利用され、国民を騙す方便に使われた勝海舟も、泉下で呆れ果てているだろう。
(文中一部敬称略)
「週刊現代」2011年10月7日号より
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