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田中角栄と小沢の違いは「情」あるかないか
「赤ん坊が高熱を出して医者に見せようにも、トンネルがあれば三十分とかからないで行けるのに、トンネルがなくてガッポガッポと腰までつかる三メートルもの雪の中を一日かかってさ。母ちゃんの背中で赤ちゃんが死んでいたんだ。実際にあった話だ。それを聞いた角さんは声をあげて泣いていた」
これは「月刊日本」に掲載されている松田賢弥の「小沢一郎は角栄になれなかった!!」の中で、田中角栄の元後援会幹部が語っている言葉である。
昭和38年(1963年)、新潟を襲った「三八豪雪」では山間部の雪は3メートルを超え、死者は約210人におよんだ。角栄は「雪は災害だ」と言い切って渋る中央官僚に援助を認めさせた。
詰まるところ角栄と小沢の違いは、「情」があるかないかであろう。角栄の地元が岩手だったら、東日本大震災直後に飛んでいって、何よりも東北の復興が最優先だと、ブルドーザーと称された腕力と政治力でがれきの山を片付け始めたに違いない。
それに比して小沢は何もやってくれないと地元から怨嗟の声が出ている。小沢の力の源泉は永田町での強引な政治力にあった。だが、その豪腕もいよいよ風前の灯火になってきたようだ。「週刊文春」でノンフィクション・ライター森功がレポートしている。
さしもの豪腕も落ち目と見切った登石裁判長「元秘書有罪」
9月26日(2011年)、東京地裁・登石郁朗裁判長は小沢の元秘書3人に対して有罪判決をいい渡した。問われていたのは準大手ゼネコン「西松建設」のダミー政治団体による世田谷の土地取引を巡る政治資金収支報告書の虚偽記載である。登石裁判長は水谷建設からの裏献金についてもこう断じた。
「合計一億円を小沢事務所が要求し、被告人石川と同大久保が受け取ったことは、合理的な疑いなく認められる」とし、犯行動機を「被告らはゼネコンとの癒着が公になることを恐れ、犯行におよんだ」
登石裁判長は小沢がこれまで曖昧な説明に終始していることに対しても、「四億円を用意した小沢の供述も変遷を繰り返しており…信用できない」と指摘し、「被告らは法の趣旨を踏みにじり、政治活動や政治資金に対する国民の不信を増大させた社会的影響を見過ごすことはできない。不合理な弁解を弄して責任を頑なに否認し、反省の姿勢を全く示していない」とした。
検察不信の嵐の中でこうした判決を出したのは、そうした流れを押しとどめようという政治的な意味合いが強いような気はする。また、裁判ではおなじみの「社会的な影響を見逃すことはできない」という常套句はいただけない。国民の政治不信を増大させているのは政治とカネの問題だけではないし、否認している被告が反省するわけはない。
この裁判を批判している側から、この判決が「あまりにも政治的」「検察に乗せられた司法の巻き返しだ」という声があがることも間違いない。だが、登石裁判長は永田町の勢力図や世論の動向などを十二分に考慮に入れ、こうした判決を下しても大丈夫と判断したのだろう。それは小沢一郎の政治力が確実に減じつつあるからである。
朝日新聞、読売新聞、NHK…次々指摘される「申告漏れ」
だが短い国会なのだから、小沢の証人喚問程度で時間を費やすのは止めるべきであろう。小沢の裁判も10月に始まるのだから。いまやるべきは財務省の首領・勝栄二郎事務次官が着々と増税のための布石を打ってきて、野田総理を始め閣僚たちはその手のひらの上でいいように踊らされ、「大増税」へと舵をいっぱいに切っていることへの批判ではないか。
その手のひらには当然ながらマスメディアも乗っていて「増税必要論」を声高に叫んでいるが、そうしなければならなくなったのは国税の税務調査だったと「週刊ポスト」は「財務省の研究」の中で書いている。
「朝日新聞は09年2月に東京国税局の税務調査で京都総局のカラ出張による架空経理の計上など約5億1800万円の申告漏れを指摘され、(中略)同年5月には、読売新聞東京本社も東京国税局の税務査察で推定2億7000万円の申告漏れを指摘されている。その前には日テレ、フジテレビ、NHKも申告漏れを指摘された」
読売新聞はその後、丹呉泰健・前財務事務次官を社外監査役に迎え、朝日新聞も「増税礼賛」の論調を強めていった。
「週刊新潮」は復興財源ばかりか1000兆円もの大借金を抱えた日本は増税なしにはもたないのは事実だが、その前にやるべきことがあるだろうと6点を挙げている。
「722人もいる国会議員の定数を半分にせよ!」「坊主丸儲け『宗教法人』課税なら4兆円が浮く」「72%も経費が控除される『お医者様』の優遇税制」「予備校も日本語学校も『学校法人』なら税金天国」「親方日の丸『公務員改革』『天下り禁止』は徹底されたか!」「特別会計400兆円は放置でいいのか!『財務省』」
JT株放出やたばこ税のアップだけで、あとは国民に負担を押しつけるのでは納得できるはずがない。増税に加えて、週刊文春がいうように「日本は5年以内に破綻する『第2次世界恐慌』の戦慄!」となるならば、東日本大震災の被災者はもちろんのこと、貧乏人はますます生き難くなってくるに違いない。新潮が要求しているいくつかをやり遂げたうえでの増税ならば致し方ないが、そうでなければ増税の前に解散総選挙で民意を問うべきである。
元木昌彦の深読み週刊誌
2011/9/29
http://www.j-cast.com/tv/2011/09/29108560.html?p=all
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