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「西松献金事件と陸山会事件の関係」(EJ第3146号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/227031023.html
2011年09月22日:{Electronic Journal}
フリージャーナリスト江川紹子氏は、陸山会裁判について「世界」10月号で次のように書いています。
(陸山会裁判の)判決当日は、おそらく様々な報道や論評が飛び交うだろう。わけても、小沢氏にまつわる「政治とカネ」の 問題、さらには小沢氏の今後の政治的影響力について、あれこれ取りざたされるに違いない。しかし忘れてはならないのは、 この刑事裁判は、小沢氏がクリーンか否かを決めるためのものではない、ということだ。無罪判決が出ればクリーン、有罪で あればダーティなどというものではない。だから、有罪判決が出たからといって、反小沢陣営が「ほらみろ、やっぱり小沢は ダーティだ」と騒ぎ立てるものではないし、逆に無罪判決が出ても、支援者が「小沢氏のクリーンさが証明された」と逆襲に 打って出るほどのことでもない。この裁判で求められているのは、土地の購入を巡ってのお金の出し入れについての記録が、 政治資金規正法に則って適切だったかどうかという、かなり事務的な判断になるからだ。
──「世界」10月号 江川紹子氏論文『「陸山会事件」とは何だったのか』
要するに、陸山会裁判で検察側がしつこく取り上げた水谷建設からの不法献金事件とは何の関わりもない、世田谷の土地の登記の時期をめぐる「期ずれ」をどう判断するかというきわめて事務手続的判断を求めるものであり、本来現職の国会議員を含む容疑者を3人も逮捕・起訴して取り調べる事件ではないのです。なぜかというと、訴因が「期ずれ」になっているからです。
そのことを新聞、テレビの記者クラブメディアは正確に伝えていない──いや、こと陸山会事件についての新聞、テレビの報道は極端にいうと、ウソの事実を平気で流しています。メディアみんなでやれば怖くないというわけです。狙いは「小沢排除」に絞られているのです。これでは、小沢氏は「天下の悪党」になってしまいます。もし、小沢氏が無罪になったら、新聞、メディアはどうこいう責任をとるのでしょうか。
陸山会事件は、次の2つの事件に分けて考えるべきです。
1.西松建設違法献金事件
2.世田谷の土地の登記時期のずれ/陸山会事件
「西松建設違法献金事件」とは何でしょうか。
これは西松建設の複数のOBを代表とする政治団体から陸山会が受け取った献金が政治資金規正法違反であるとするものです。
その西松建設の政治団体が実体のない西松建設のダミーであるというのが検察の主張です。この容疑により、検察は小沢氏の秘書の大久保隆則氏を逮捕したのです。事前の任意の事情聴取も一切なく、いきなり逮捕です。
大久保隆則氏が逮捕されたのは、2009年3月3日のことで小沢氏を代表とする民主党が解散総選挙を求めて、自民党の麻生政権を揺さぶっていた最中なのです。いつ選挙があってもおかしくないし、総選挙で民主党が勝つことはほぼ予想されていたのです。もし、民主党が選挙に勝つと、代表の小沢一郎氏が総理になることになります。
このタイミングで小沢氏の秘書は逮捕されたのです。これはどうみても民主党潰しであり、選挙妨害です。そのときは麻生政権による国策捜査ではないかという声が上がったのです。後で判明したことですが、当時の自民党にもはやそれだけの力はなく、官僚機構が「小沢だけは総理にしてはならない」としていきなり大久保秘書を逮捕し、記者クラブメディアを使って小沢潰しを仕掛けたのです。官僚機構としてはもはや選挙で民主党が勝つのは確実であったので、せめて小沢氏が総理になることだけを阻むことに重点を絞ったのです。これによって官僚機構がいかに小沢氏が総理になることを警戒していたかがわかると思います。
しかし、西松建設の政治団体から献金を受けていたのは小沢氏だけではないのです。ウィキペディアによると、自民党では二階俊博、尾身幸次、加藤紘一、藤井幸男、森喜朗、藤野公孝、山口俊一、加納時男、川崎二郎、山本公一、林幹雄、古賀誠、渡辺具能、民主党は小沢一郎、山岡賢次、改革クラブでは渡辺秀央、国民新党では自見庄三郎、自民系首長では村井仁などが同じ団体から、同様な会計処理で献金を受け取っていたのです。それなのに小沢氏の秘書だけが逮捕されたのです。
それに加えて当時の官僚のトップである漆間内閣副長官が次のように述べたことから、小沢氏を狙い撃ちしたものという印象が一層強くなったのです。
西松献金事件が自民党議員に捜査が波及することはない
──漆間内閣副長官
西松建設違法献金事件の裁判は、検察側にとって不利に展開し2010年になって、検察側証人からも西松建設のOBの団体は実体のあるものであって、ダミーではないことが明らかになってきたのです。このままいくと、大久保隆則氏の無罪は確実という情勢になってきたのです。
そうすると、東京地検特捜部は、2010年1月15日に小沢氏の元秘書である石川知裕、池田光智の両氏に加えて、大久保隆則氏を再び逮捕したのです。大久保氏の裁判がこのまま進むと、2月には無罪判決が出てしまうので、元秘書3人を逮捕し、起訴したのです。そのさい、大久保氏に対する訴因を変更し、陸山会事件として裁判をすることにしています。またしても参議院選挙の直前の逮捕・起訴です。しかし、陸山会事件の中身とは、不動産の登記時期を巡る「期ずれ」というとるに足らないものであったのです。
─── [日本の政治の現況/72]
≪画像および関連情報≫
●山崎行太郎氏の政治ブログより
「自民党には捜査は及びません」と東京地検特捜部の捜査の進展状況を某「政府高官」氏が、自信を持って断言したために、「小沢民主党党首秘書逮捕事件」の風向きが逆転してしまったのではないかと思わせるほどの激震が永田町周辺を駆け巡っているわけだが、その「失言」をしてしまった「政府高官」氏とは、言うまでもなく内閣官房副長官・漆間巌であるらしいが、漆間巌という人物の正体は、意外に知られていないのではなかろうか。内閣官房副長官とは、かつては田中内閣の後藤田正晴や、小泉内閣の石原信雄、古川貞二郎各氏等が勤めた、官邸と官僚を結びつける官僚事務方のトップという重要な役職だが、麻生内閣の内閣官房副長官・漆間巌氏の存在は、東京地検特捜部が、派手なラクダのコートを靡かせるという、きわめて田舎芝居がかったイデタチで開始した今回の「大捜査線」に対する「失言」でクローズアップされるまで、ほとんど注目されることはなかったと言っていい。
漆間官房副長官(当時)
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