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野田佳彦首相の「増税路線」について、青森県黒石市在住のUさんから、次のようなメールをいただいた。「私が住んでいる黒石市は農業が中心の田舎で、市の経済は停滞し農業者を始め市民は皆文句を言っております。『今でも税金がまともに払えないぐらい生活が厳しいのに、なぜ増税するのか!』と。短絡的な増税は逆に税収を下げてしまうと思うのですが、如何にお考えでしょうか」
黒石市には、以前に訪問したことがあるので、懐かしい。落ち着いた風情のある街並みが思い出される。Uさんのおっしゃる通り、いま増税すれば、瞬間的には、税の増収になるかも知れない。けれども、国民の財布のヒモを固くし、経済活動を萎縮させてしまい、かえって、減収を招く危険があるのではないか。政府は、消費税の増税を2015年ごろに予定しているが、景気の回復が大前提になっており、これ自体が、実現不可能になるかも知れない。
第1、竹下登首相が1989年4月1日に消費税(3%)をスタートさせて以来、22年を経過して、途中、橋本龍太郎首相が1997年4月1日、税率を「3%→5%」に引き上げて、現在では「1%=2.5%」の増収になっていると言われていながら、この22年間の全体の税収は、大勢下降線をたどっている。この事実を財務官僚は、百も承知しているはずにもかかわらず、口から出てくる言葉は、バカの一つ覚えのような「増税」である。
東大法学部卒、国家公務員試験の最上位合格者しか入省できないのに、結局は、菅直人前首相が「財務官僚は、バカばっかり」と言ったのは、やはり本当であることが、証明されている。増税するほかに知恵が働かないらしい。ペーパー試験の秀才は、経済成長の名案をひねり出す、策按能力面では、鈍才なのだ。
それならばなおさら、西郷隆盛翁の「南洲翁遺訓の13」をいま一度、拳拳服膺すべきである。「租税を薄くして民を裕するは、即ち国力を養成する也。故に国家多端にして財用の足らざるを苦しむとも、租税の定制を確守し、上を損して下を虐げぬもの也」要するに、かつて大蔵省が所得倍増論を編み出した下村治さんを輩出したように、「第2、第3の下村治」を生み出す努力をする必要がある。
バブル経済崩壊後、景気回復を最も強く期待していたのが、財務官僚なればこそ、この努力を怠るべきではない。増税と言えば、米国のオバマ大統領が、ついに「金持ち増税」を前面に打ち出してきた。朝日新聞ちとちにasahi.Comは9月20日午前0時6分、「オバマ氏、赤字削減幅倍増を提案 10年で230兆円超」という見出しをつけて、次のように配信している。
「オバマ米大統領は19日の演説で、財政赤字の削減額について、すでに法制化したものを除いて今後10年で1.5兆ドルとした7月末の与野党合意から上積みし、2倍の3兆ドル(約230兆円)超とする提案をした。その半分は富裕層への増税で賄う内容で、今夏の米債務上限引き上げを巡る論議と同様に、野党・共和党側との厳しい対立は必至だ。
大統領は19日昼、『富裕層や大企業を含む皆が、公正な負担を負わなくてはならない』と訴えた。
政権高官によると、3兆ドル超の削減の内訳は、(1)高齢者向け医療制度での支出抑制を含む歳出削減で0.58兆ドル(2)富裕層の増税などの増収分が1.5兆ドル(3)イラクやアフガニスタンからの米軍撤退に伴う戦費の減少で1.1兆ドル、など」
ローマ帝国の衰亡ではないけれど、世界に冠たる米国帝国が滅んでは、いかに「金持ち」でも、心安らかには生きていけないだろう。平和で自由な国家体制という大きなフィールドがあってこそ、富裕階層も成り立ち得る。それにしても、米国ばかりでなく、欧州、さらには日本を含めて、経済不況、財政難という苦難に陥れているリーマン・ショックの大本となったあのサブプライム・ローンで大儲けして金持ちになった連中がいるはずである。
世界で400兆円規模とも言われた大損害の反対側には、400兆円大儲けした者がいてもおかしくないからである。少なくとも米国ではオバマ大統領が苦労している。このまま見て見ぬフリをして、放置しておけば、米国帝国の崩壊によって、富裕層も大変な目あう。となれば、いま富裕層に求められているのは、これまでに増しての「愛国心」であろう。富裕層が増税によって、真の愛国者であるかどうかが試されている。
この構図は、日本でも同様である。「広く薄く公平に」というのが、税の大原則だが、いまの国難とも言うべき、非常事態下では、「金持ち大増税により、「愛国心ありや、なしや」を徹底的に試す必要がある。これを私は、富裕層対象の「愛国税」と呼ぼう。
http://blog.goo.ne.jp/itagaki-eiken/e/cfb52fe06e5e19304ccac6c98362a4f1
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