17. 2011年9月22日 15:05:51: gk1nfsKRX6
郵政については「黒字は私物化して赤字は公に押し付ける新自由主義経済の典型」ですね。 三井住友と日通は丸儲け。阿修羅で既に投稿されてますが、再掲。 郵便事業の巨額赤字はなぜ仕込まれたか ( 保坂展人のどこどこ日記) http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/189629016c3f73902cf9f79eb7d8ddc9 世の中には、「小泉改革」「郵政民営化」信者がまだまだいる。あたかも、画期的改革に着手したのに、肝心のところで「政権交代」によって改革が止まってしまったと嘆いている人たちがいる。このところ、日本郵政グループが直面しているのは、ペリカン便との経営統合後、信じられないことに毎年1000億円の赤字を計上していくだろうという郵便事業会社の経営危機問題である。筆者も昨年春まで総務省顧問をつとめていて、「郵政民営化の闇」を徹底検証する作業を担った。原口総務大臣の下に、郵政ガバナンス検証委員会が設置されて、総務省のホームページに「最終報告書」がアップされている。この問題は、どのように報告されているだろうか。 〔引用開始〕 郵政ガバナンス調査専門委員会報告書 JPEX事案 郵便事業会社と日本通運株式会社(以下、「日通」)の共同出資により、ゆうパック事業とペリカン便事業との統合をめざしてJPエクスプレス株式会社(以下、「JPEX」)が設立されたが、最終的にはゆうパック事業を郵便事業から切り離すことに関して総務省の認可が得られず、事業統合を断念、同社は清算することとなり多額の損失が発生した。その過程において以下のような事実があり、経営判断としての合理性を大きく逸脱していると認められる。 ・両事業の統合については、西川社長において、日本郵政の三井住友銀行出身者に担当させる一方、所要の検討も行わせず、かつ、統合に慎重であった郵便事業会社首脳陣に知らせないまま、平成19年10月5日、日本郵政・日通間の基本合意書を締結した。
・その後、郵便事業会社首脳陣は、統合後のJPEXの事業収支が確定できず、また、いずれにしろ多額の赤字が予想されたことから、直ちに統合を行うことに反対したにもかかわらず、西川社長において、同反対を押し切り、平成20年4月25日、日本郵政・郵便事業会社・日通間の統合基本合意書を締結させた。
・ 上記締結により、同年6月2日にJPEXが設立されたが、その後も、郵便事業会社において算出したところでは、JPEXの事業収支は統合後5年度の全てが赤字で、累積にかかる赤字は単独806億円・連結943億円に上ったにも関わらず、西川社長において、郵便事業会社がそのような数字を算出したこと自体を叱責したことから、これを受けて郵便事業会社において統合後4年度目に黒字化するなどの 事業収支を提出することを余儀なくされ、その結果として、同年8月28日、郵便事業会社・日通間で統合のための最終契約である株主間契約書が締結された。
・ その後、ペリカン便事業については、平成21年4月1日、JPEXに分割承継されたものの、ゆうパック事業については、総務省において、統合による郵便事業への影響等が判断しがたいことなどにより、同事業のJPEXへの分割承継を認可しなかったことから、郵便事業会社は、同年11月26日以降、JPEX事業の見直しを決定し、現状、平成22年7月のJPEX解散、同会社資産の郵便事業会社への承継を予定しているが、同解散時点での累積損失額の合計は983億円(平成22年2月 平成22事業年度事業計画認可申請時点の見込み額)と見込まれ、今のところでは、そのうち900億円前後は郵便事業会社が負担することになると思わ れる。
・ 上記株主間契約書締結についての日本郵政取締役会への報告の際の社外取締役の種々の有益な意見が執行側から無視された。
〔引用終了〕 何のために統合を急いだのか。西川社長(当時)の判断は理解に苦しむものであり、民間企業としての経営の効率性や収益の確保をふまえる慎重な姿勢の片鱗も見えない。このような経営判断がなぜ強引にされたのかを検証するための調査にも、西川氏らは協力しなかったと聞く。 より詳しい「検証総括報告書」を読むと唖然とする内容が綴られている。 〔引用開始〕 2 JPEX事案 本事案は、郵便事業株式会社(以下、「郵便事業会社」という)と日本通運株式会社(以下、「日通」という)の共同出資により設立(平成20年6月2日)された宅配便事業会社であるJPエクスプレス株式会社(以下、「JPEX」という)に関する事案であるところ、検証の結果の概要は以下のとおりである。 @ 日本郵政・日通間の基本合意書(平成19年10月5日)の関係
* 注目すべき事実等
・ ゆうパック事業とペリカン便事業との統合(以下、「本件事業統合」という)は公社当時から日通との連携を図るべく両者間で話し合われ、同統合のために共同出資子会社を作る案も出ていたものであるところ、日本郵政(準備企画会社)の設立後、ゆうパック事業を行っている郵便事業担当の團宏明当時日本郵政副社長(民営化後は郵便事業会社社長・以下「團社長」という)と北村憲雄当時同取締役(民営化後は郵便事業会社会長・以下「北村会長」という)
は日通との連携に慎重であったにもかかわらず、西川社長は、平成19年4月以降(同4月以降、西川社長が公社総裁を兼務)、日通との連携問題は日本郵政で取り扱うことにし、これを日本郵政の専務執行役の一人(三井住友銀行出身・以下、「A専務」という)と経営企画部門企画部次長(三井住友銀行出身・以下、「B次長」という)らに担当させることとした。 同時に、西川社長は、一旦は郵便事業会社から宅配便事業を切り分けることの困難性を理由に共同出資子会社ではなく日通からペリカン便事業を譲り受けて郵便事業会社にいわる「片寄せ」をすることを日通に申し入れるように指示したが、その後、これを日通に断られると、公社当時の共同出資子会社案に立ち戻っての交渉をA専務らに行わせた。
・ その結果、日通も同案を承知するや、西川社長は同年7月に日通社長と会談し、その際の合意に基づいて、同年10月1日の郵政民営化の直後の同月5日に、日本郵政と日通は、日本郵政ないしは郵便事業会社と日通の共同出資による会社において本件事業統合を行うこと、当該会社の事業収支予測を平成20年3月を目処に作成し、同年4月を目処に同統合についての最終契約(以下、単に「最終契約」という)を締結すること、同年10月を目処として当該会社(以下、同会社のことをその後の社名に従って「JPEX」という)を設立することを内容とする基本合意書(以下、「基本合意書」という)を締結した。
しかして、本件事業統合は、シェアの拡大により郵便事業会社の宅配便事業の成長を図るものではあったが、当時、ゆうパック事業とペリカン便事業は共に赤字と見積もられていた(本検証により、日本郵政から提出された当時の検討資料等から、同各事業の当時の各赤字見積額は相応に把握されているが、本検証が日本郵政グループのガバナンスに関するものであることからすれば、いわば第三者と言える日通の事業に関わる事項であることなどにより、具体的な同各赤字見積額についての記述は省略する)。
したがって、そのような両事業を統合して黒字化させるのは容易ではないことは明らかで、そのこともあって郵便事業会社の北村会長、團社長が同統合に慎重だったのであり、かつ、上記のとおり平成19年7月の際に、西川社長が日通と会談した際に、日通側から、日本郵政側の希望する同統合につき改めて確認しているほどであるから、同統合については、その可
否、統合した場合の黒字化の見込の如何、さらには黒字化のための具体的方策等を十二分に検討することが必要であった。 ちなみに、当時、先に公社担当者において案出した共同出資子会社案が存在したが、同案はそれまで事業の収益性などとは縁遠かった公社担当者によるものであり、西川社長自身が上記のとおり同案の前提であるゆうパック事業の切り出しの困難性を認識していたものであるほか、民営化の趣旨に照らしても、日本郵政にあってはA専務らが自ら上記検討を十二分に行う必要があったことは明らかである。
しかるに、日本郵政にあっては、平成19年4月になっていわば初めて日通との問題に取り組むことになったA専務らにおいて、急遽、外資系証券会社と相談・打合せを行った程度で、事業統合の可否あるいは黒字化のための具体的な方策についての所要の検討を行わないまま、公社当時の上記共同出資子会社案を前提として、同年10月5日に基本合意書を締結したものである。
このようなことから、JPEXについては、事業統合後の事業収支が全く想定できず、したがって同収支が存在しないまま、基本合意書が締結されることとなった。
・また、郵便事業会社との関係を見ても、ゆうパック事業は郵政民営化までは日本郵政の郵便事業担当に係る事業であり、かつ、同民営化後の郵便事業会社にとっても同事業(宅配便事業)の行く末は同会社の郵便事業に大きな影響を及ぼすものであるにもかかわらず、基本合意書の締結に至るまでの間、日通との交渉等は日本郵政のA専務らが取り仕切り、郵便事業会社の北村会長と團社長(同両名とも郵政民営化前の郵便・宅配便事業担当)が同年10月5日の基本合意書締結を知らされたのは、その数日前であり、かつ、その段階でも同合意書の内容自体は教えられなかったものである。
* ガバナンス上の問題点
・以上のとおり、本件事業統合については、その成功の困難性が明らかであるにもかからず、その可否あるいは所要の検討を何ら行わず、したがって同統合後の事業収支も出されることなく、また、郵便事業会社(民営化前は公社)の事業に関することであるにもかかわらず、関係各担当者をいわば埒外に置いて持株会社の独断により基本合意書の締結に至ったものであり、その内容並びに経緯において、経営判断としての合理性を大きく逸脱したものであることは明らかである。
・西川社長らが平成19年4月以降に本件事業統合に向けて急いだのは、あるいは郵政民営化の成果を早期に示し、その評価を高めたいとの思惑があったためではないかとも思われるが、仮にそれが事実として、そのような思惑が、ことを合理化しうるものではないことは勿論である。
〔続く〕
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