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【岡田浩明の永田町便り】
火薬庫かかえる「どじょう内閣」 「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」シリーズ続編?
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110919/stt11091918010000-n1.htm
2011.9.19 18:00 産経新聞
東日本大震災で巨大津波が襲来した宮城県気仙沼市の沿岸部。荒涼とした大地に立ちすくんだ。上を向くと、3階部分まで窓ガラスが割れ、廃墟と化した建物。足元を見ると、山積みにされた口のあいた缶詰。まだ異臭もほのかに漂う。
今月10日。震災から半年を迎える前日、野田佳彦首相の被災地視察に同行した。「がれきはだいぶ撤去できた」と市職員は説明する。確かに、歳月の流れはさび付いた缶詰をみればわかるし、初秋の潮風にそよぐススキがその変化を教えてくれる。
県境を越えた岩手県陸前高田市では、さらにすさまじい光景が待ち受けていた。土台しか残っていない家屋、「ビルの2階や3階の高さ」(周辺住民)というがれきの山、無残な姿をさらけ出したままの市役所…。「日常生活を根こそぎ奪われ、ここから再出発するのか」。被災者の心境を察すると、足取りも自然に重くなった。
当の首相の心にはどう映ったのか。視察後、記者団にこう語った。
「リアルに肌で感じるものがたくさんあった。特に陸前高田の津波のエネルギーのすごさというものを目の当たりにした」。
物足りない。菅直人前首相と変わらない。被災地復興に向けた具体策を平成23年度第3次補正予算案や来年度予算編成で必要な措置を講じる考えも示したが、野田内閣の足元にひたひたと忍び寄る“津波”に気を取られているようだった。
震源地は鉢呂吉雄前経済産業相だ。その夜、被災地から帰京後、鉢呂氏の辞任会見に向かった。就任から9日目。スピード辞任の要因は「死の町」「放射能をうつす」と被災者感情を逆なでする暴言だ。「死の町」発言の真意を問われた鉢呂氏は、消え入りそうな声でこう釈明した。
「福島県民の皆さんを逆なでする言葉だった。私の率直な見たままの形で表現させていただいて、そういう言葉しか見つからなかった…」
絶句した。「言葉が見つからなかった」。釈明するにしても、その一言だけは最も口にしてはいけないと思ったからだ。選挙になれば有権者への訴えは同じ内容の繰り返し、国会論戦では用意された「官僚作文」の棒読みなどを見ても分かるが、「言葉が命」であるはずの政治家の言語力が確実に劣化している。
ただ、野田内閣を襲う津波は「鉢呂級」でとどまらない。第2波、第3波が押し寄せそうな空気が永田町に漂う。
一川保夫防衛相は就任早々、「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と失言、波紋を呼んだ。自民党の石破茂政調会長が「その一言をもって大臣解任に値する」とかみついたが、首相は16日の参院本会議で擁護した。
「一般国民を代表する政治家が国民の目線にたって物事を判断していくべきとの趣旨であったと承知している。特に指導はしていない。適切に仕事をしていただけると信じている」
一川氏のほか、野田政権の“時限爆弾”として名前が浮上するのは、マルチ商法(連鎖販売取引)関連業界との関係が取りざたされる山岡賢次消費者担当相(国家公安委員長と拉致問題担当相兼務)、口が悪く、謙虚さのかけらもない傲慢な態度を皮肉った「ちびっ子ギャング」こと安住淳財務相、子ども手当ての旗振り役で国会答弁でも「バラマキではない」と断言した一方、たばこ税論議で物議を醸した小宮山洋子厚生労働相。
少なくとも、この4閣僚が26日からの衆参予算委員会で野党の猛烈な追及に対し、どう防戦するかが見どころの一つだ。心ない官僚答弁で逃げるか、野党の挑発に乗って失言するか、それとも「野田政権の火薬庫」とまで呼ばれる評判をはね返す見事な答弁で野党をうならせるのか。
首相が松下政経塾に入塾する際、面接した元政経塾参与のみんなの党、江口克彦氏は16日の参院本会議の質疑、いわば「二度目の面接」で首相に同情しつつも、任命責任を問いただした。
「失言する閣僚、説明能力欠如の閣僚に囲まれ、日々、心を悩ませながら、活動されていることに深くご同情致します。しかし結局は首相自身の自業自得、国より国民、被災者より、党内融和を先行された報いだ」
政界の“津波”はいずれも首相の任命責任という形で返ってくる。首相の統治能力が試されるが、「相次ぐ失言、辞任ドミノ」という、これまで何度も繰り返されてきた「永田町新喜劇」の再演となれば、「どじょう内閣」の支持率急落は間違いなく、喜劇を通り越して悲劇になる。
さらに言えば、菅前首相の伸子夫人の著書を借りるまでもないが、「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの…」と言いたくもなる。
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