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「財務官僚に、経済成長の発想なし」
9月13日の野田首相の所信表明演説を聞いて、先ず浮かんだ率直な感想だ。
恐らくは財務官僚の作文に野田氏が自分のフレーズを散りばめて出来たであろうその演説全文を改めて読み返し、筆者なりに意訳すると以下の通りである。
◆所信表明演説<意訳>◆
●南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼び掛け続けた遠藤未希さんをはじめ、原発事故対応をする東電職員や、復旧に従事する自治体職員らの行為に示された東日本大震災の中での日本人の気高き精神を忘れてはならない。
●大震災からの復旧・復興において、上記のような気高き精神に報いるための国民の側の最大の貢献・義務は財政健全化(増税)である。
この実現へ向け、自分は「正心誠意」行動するので、政府も企業も個人も、全ての国民が心を合わせて、力を合わせて、これに立ち向かおうではないか。
●なお、復旧・復興と日本経済の建て直しに於いて、経済成長と財政健全化(増税)は、車の両輪として同時に進めて行かねばならず、成長戦略と歳出削減等を歳入改革(増税)に先行して進める事は決してあってはならない。
(参考:野田佳彦首相所信表明演説全文 http://www.47news.jp/47topics/e/219971.php)
中でも演説からは、財務省の経済成長と歳出削減等と歳入改革(増税)を同時に進める事への強い拘りが読み取れる。
「経済成長して後の増税」とは口が裂けても言わない。
これは、経済成長を実現させる自信がなく、それを条件とすると悲願の増税が出来なくなるからというのが素直な見方だ。
震災復興と将来の社会保障のために資金が必要なのは事実である。
しかし、現状の日本経済のデフレ・低成長を考えれば、十分な経済成長を実現させる前に増税を行えば経済が失速することは、ほぼ確実だ。
これは、民間会社に置き換えてみれば、容易に分かる事である。
中長期計画の販売量の確実性が低いため、経理部・財務部が値上げを提案するようなものである。
販売量を増やす前に値上げをすれば、販売量がさらに落ち込み、販売量×単価=売上高が減少するというのは、企業経営では常識以前だ。
◆官僚よ、本義に帰れ◆
そもそも数百年に一度という大災害に対して、しかもインフラ整備が中心の震災復興に増税は必要なく、インフラの耐用年数60年償還の建設国債(もしくは復興債)を発行し日銀が引き受ければ済む事であり、復興税の発想自体が無意味だ。
確かに将来の社会保障のため巨額な費用が掛かる事は事実だが、これも震災復興を契機に新エネルギーを含む成長戦略を立案実行し、2〜3%程度のインフレ目標を設定し日銀に国債引き受け等で実行させ、名目GDP3〜4%以上の成長を成就させれば2010年半ばに予定されている増税幅は大幅に圧縮できるか、そもそも増税が不要となる。
復興計画と成長戦略の中身と実行手段を衆知を集めて練り上げて、スピードを持って臨めば決して無理な事ではない。
(思い切った少子化対策で出生率を上げ、成長戦略のヘルスケア産業の育成を寝たきり介護ではなく健康増進で現役世代を拡大する方向へシフトすれば、財政は更に改善出来る)
増税に走る財務省であるが、国の台所を預かる資金繰り係として、役割上の使命感としては心情的には理解出来ないこともない。
だが、むしろ財務省は経済成長の阻止に動いているのがより実態に近いのではないか。
「日本が経済成長したら、増税が出来なくなる」
「日本が経済成長したら、官僚の権限が相対的に小さくなる」
「日本が経済成長し民間が潤えば、待遇上の優越感がなくなり逆に劣等感を抱く」
頑なに、経済成長を増税に先行させない姿勢を見ると、本音ではこのような事を考えているのではないかとの疑念が湧かざるを得ない。
もしそうであるなら、言葉は悪いが、残念ながら勝栄二郎事務次官以下の財務官僚は、船体を食い散らし沈没させる「日本丸のフナクイムシ」と言わざるを得まい。
TV各局で少なからぬニュースキャスター達が、あたかも増税は既定路線であるかのような巧みな司会進行をし、大手新聞各紙が社説で増税反対は非国民のように誘導し、既得権複合体が増税翼賛会と化し跋扈する昨今ではあるが、日本沈没を座して待つわけには行かない。
官僚よ、本義に帰れ。
志ある者は、安易な増税に対し声を上げよ。
経済成長での復興と繁栄の実現に向け、国家の大義を果たせ。
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