http://www.asyura2.com/11/senkyo119/msg/605.html
Tweet |
津田栄 :経済評論家
今回の東日本大震災は、歴史に残る未曾有の被害をもたらしましたから、簡単に復
旧・復興できるものではないと思いますが、国民の目からは、野田首相が言うような
「復旧作業」が「かなり進展してきている」とは見えず、あまりにも遅くて停滞して
いると見えるのではないでしょうか。
もちろん、これだけの規模の災害ですから、どこまで復旧・復興をすれば順調なの
かという基準はありません。しかし、政府が発表した仮設住宅の計画にしても、約束
した時期までに被災者全員が完全入居できる状態ではありませんでしたし、がれきの
処理にしましても、がれきを撤去しても、一か所に集めるだけで、その後どのように
処理するか決められず、時間を空費するだけです。先日も、私の知り合いが、ボラン
ティアで宮城に行きましたが、とても復旧という状態ではないと言っていました。依
然としてがれきが側溝その他に詰まっていたり、津波で破壊された爪痕が残ったまま
で、被災地はだだっ広い空き地のような状況になっています。
そもそも、「復旧」は、壊れたり、傷んだりしたものを「もとどおりになること、
もとどおりにすること」であり、「復興」は、一旦衰えたものが「再び興ること、ま
た興すこと。もとどおりに盛んになること、また、盛んにすること」と辞書に載って
います。そうした定義から言えば、被災地は、もとどおりになっていませんから、復
旧とは到底言えませんし、復興には手もつけられていないといえましょう。むしろ、
現状は、復旧・復興に入る前の段階にあるといえるのではないでしょうか。
一方、復旧は、民間企業のレベルでは、予想以上のスピードでなされています。そ
れは、国際的な競争激化のなかで、時間のロスが致命的になるために、官の動きを待
たずにサプライチェーンの復旧を最優先に行われたためです。その点では、私の見方
は、間違っていたようです。しかし、復旧はできても、以前の水準を超えて、盛んに
なるところまではいっていません。もちろん、こうした企業は、輸出関連企業などで
あって、大手・中堅企業が中心です。ただし、水産業、農業、酪農とその加工販売な
どの関連産業などの地場の中小零細企業は、震災による壊滅的な被害からは、復旧ま
でに至っていないのが現状です。
どうして民と官ではこんなにスピード感が違うかですが、民は、競争の世界にいて、
こうした状況は非常事態であって、時間を無駄に過ごせば、信用を失うばかりでなく、
顧客を海外に奪われてしまって命取りになるという現実を知っているからであり、そ
れに対して、官は、競争がないために、非常事態という認識がなくて、内だけを見て
調整に時間をかけ過ぎていて、スピードがいかに重要かの理解がなく、二の次になっ
ているからです。個人的には、菅元首相は、個人の名誉欲から政局を利用してきたた
めに、補正予算を小出しにして、結局復旧・復興が遅れに遅れてしまったといえます。
それが、東北の被災者をはじめとする国民の政治への不信につながっているのではな
いでしょうか。
そして、復旧・復興において、何にもまして重要なのは、そこに住んでいる被災し
た住民の生活をいかに復旧させるかです。それを復旧の基本に置き、そこから復興を
考えるべきではないかと思います。しかし、今でさえ、被災した住民は、生活してい
くべき職場が得られず、明日が見えない状況で、先行きへの不安を強めています。そ
れでは、復旧・復興の対象であるべき住民がいなくなってしまいます。民主党政権は、
先の総選挙のマニフェストのスローガンを「国民の生活が第一。」としていましたが、
その視点から今回の復旧・復興はだれのためなのか、自ずと答えが出てくるはずです
が、菅前首相にはそうした意識はありませんでしたし、今度の野田首相も、最大かつ
最優先課題とする復旧・復興もだれのために行うのかという視点が所信表明から読み
取れません。
むしろ、野田首相は、本格的な復興を目指した第3次補正予算において、復旧・復
興の具体的なプランも示さず、そしてそれがいかに被災地と被災住民、そして国民に
明るい将来を抱かせるのかを示すようなことはせず、財源を全面に持ち出して、まず
復興資金を国民に要求しています。それは、まるで、美味しい料理を出しますからと
言って何を出すか具体的な料理名を示さないまま、まず料金を先払いして下さいと言
っているのに似ています。
野田首相は、菅前政権時に財務大臣をしていただけに、財務省の意見に染まってい
て、まず財源ありきに走っています。それでは、順序が全く逆です。まず、被災地と
被災住民、そして国民にとって夢のある復旧・復興の具体的なグランドデザインを示
し、そのためにいくら財源が必要か、あるいはそのために規制を廃止・緩和して経済
特区の創設や民間の資金力を借りて国民の負担をできるだけ減らして、それでも足り
ない財源がいくらかを説明して国民に求めるべきです。もちろん、被災住民の努力も
必要です。何から何まで政府など行政に頼ろうとする考えは捨てて、自分たちのため
の復旧・復興だという認識で自ら積極的に参加するべきであり、あるいは規制緩和を
嫌がって漁業権などの既得権益を守ろうとするなど後ろ向きな考えは止めるべきでし
ょう。
とにかく、野田首相は、今の被災地の状況について、被災住民にとって全く復旧も
復興もなされていない状況であるにもかかわらず、「復旧作業」が「発災当初から比
べれば、かなり進展してきている」という認識をしている時点で、被災住民の苦痛が
見えず他人事となっていて、まずは国家第一という官僚意識と同じレベルにあるとい
えます。そういう状況では、今後復旧・復興がどんな形になるかわかりませんが、そ
こには被災住民がいない復旧・復興になる可能性があって、あまり期待できるものに
ならないのではないかと思います。今の政府は、復旧・復興がなされていないという
実態を理解しなければ、何も前に進みませんし、むしろ国民負担を強いながら取り返
しのつかない無駄を生みだすかもしれません。そして、それは太平洋戦争時の軍部・
官僚・政治家がしでかしたような国民の犠牲と失敗を繰り返すことになるのではない
でしょうか。
最後に、300万人を超える失業者がいて、失業保険が支払われているにも拘わら
ず、今回の震災では自衛隊を10万人派遣してがれきの撤去をしましたが、こうした
失業者を半年ほど臨時に公務員として雇って、一気にがれきの処理を行えば、もっと
復旧・復興が早まっていたのではないかと思います。もちろん、それが難しいのかも
しれませんが、こうした非常事態であれば、国会でなにか動きがあってもいいような
ものですが、結局与党や野党の国会議員には非常時という認識がなく当事者意識が欠
けていたのかもしれません。それが、復旧・復興のスピード感のなさにつながってい
るのではないでしょうか。
また、財源について臨時増税を野田政権は打ち出していますが、国民の税金で公務
員を養っていますから、まず公務員の人数や給与などを削減すべきではないでしょう
か。民主党は公務員経費と国会議員を減らすとマニフェストに掲げているのですから、
国民に負担を求めるのであれば、まず公務員改革を実行したり、国会議員を減らすべ
きではないでしょうか。あるいは、非常時であることを考えて、臨時的に公務員の給
与カットや国会議員の給与の国庫返上など、国民の先頭に立つ姿勢を見せるべきでは
ないでしょうか。何もしない国会を見ていると、自ら身を切ることをせずただ国民に
負担を求めているのでは、いずれ国民は政治を見限るかもしれません。
経済評論家:津田栄
(私のコメント)
政党政治の限界か。党首がコロコロ変わり、実力者が出にくい状態で財務省、役所の言いなりだ。このままでは党首の作文で終わってしまうだろう。知恵者を近くに置いて実行させなきゃあ。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK119掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。