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事なかれ主義を排す 〔田中康夫 にっぽん改国〕
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11/09/15 新党日本 田中康夫 :日刊ゲンダイ
初代文化庁長官を務めた今日出海(こんひでみ)氏がフランスに赴いた際、彼の名前を如何(いか)に発音するか、一悶着した記憶が甦ります。御存知、小説家で政治家で僧侶だった今東光(とうこう)氏の実弟です。
「コンcon」はフランス語で女性器を意味します。仕方なく公式会議の場では「イデミ・イマ」と紹介された、と伝えられます。ヒデミでなくイデミだったのは、Hを発音しないフランス語読みに倣ったのでしょう。と紹介したものの実は、真偽の程は定かではありません。何故って隣国イタリアでは、英語でwithに当たる前置詞としてconは頻繁に発音されているからです。「事勿(なか)れ」を旨とする日本の外務官僚の過剰反応だったのかも知れません。
「ゴーストタウン」ならば問題が生じず、「死の街」だと蜂の巣を突く騒ぎとなって、「被災者の心情に配慮を欠いた不適切な言動によって辞任した閣僚が出た事は、誠に残念でなりません」と所信表明演説で首相が頭を下げる奇っ怪ニッポン。「クレイジー」ならば許されて、その英単語を直訳すると袋叩きに遭う、本質という中味よりも表層という形式を重んじる不可解な社会です。
その昨日の所信表明演説の冒頭で「忘れてはならないものがあります」と3度も繰り返されました。「大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神」、「原発事故や被災者支援の最前線で格闘する人々の姿」、「被災者、取り分け福島の方々の抱く故郷への思い」の3つを挙げて。
が、「この国難のただ中を生きる私達が、決して忘れてはならないもの」は、もう一つ、「真実を語らぬ政治家の精神と姿」なのではありますまいか。「今の所はダイジョウビ」と述べ続けた前政権の官房長官は、地震発生直後から既に明らかに進行していたダイジョウビでない放射能の事態が今後、更に露呈しても猶(なお)、同じ科白(せりふ)を繰り返すのでしょうか。
それは、「財源は、次の世代に先送りする事無く」と述べながら、全ての決断は玉虫色に先送りする抽象論に留まり、「『正心誠意』が胸に響かぬ」(毎日新聞)「危機克服へ具体論欠く」(共同通信)「停滞打破の処方箋ほしい」(産経新聞)と論説されてしまった所信表明演説にも“ブーメランとして戻ってきます。
気鋭のジャーナリスト大藤理子女史の言を借りれば、「確かに演説は上手かったけど耳を掴むものではあっても心を掴むものではなかった」と今後も言われぬ様、期待するや切です。
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