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【大機小機】政治の混迷と政党交付金
[日本経済新聞 2011年9月8日朝刊]
ようやく新内閣が発足したが、近年の政治の混迷は目を覆うばかりである。個人的には立派な見識を持つ人材も多いのに、政党となると政策論争から離れた内紛と、挙党体制のかけ声の繰り返しである。
その一因は議員数や得票率を基準に毎年支給される政党交付金ではないか。各議員への約7300万円の支給とは別に、今年の交付額として、民主党は約168億円、自民党は約101億円を受け取る。国民1人当たり年間250円として算出され、1994年の制度導入以来の交付金総額は4430億円に達している。
企業に例えれば、従業員1人当たり年4千万〜5千万円にも及ぶ使途制限のない資金は、事務所経費などを除けば企業の課税・配当後の可処分利益に相当し、超優良企業も及ばない高効率組織である。
ならば、組織の目的が所属議員数の最大化となり、人気のない国家百年の計を目指すより、獲得票最大化に向けたバラマキ政策に傾く訳も理解できる。巨額資金の配分権限を巡る党内抗争も無理からぬところである。
本来の政治資金は政治家個人をよく知る支援者の意志の表れであり、それは真の民意や情報とともに高い志と実力のある政治家に集まる。支援者が資金提供をしてまで実現を目指す政策を、一律に賄賂や利益誘導と切り捨てることはできない。政治家への陳情も民意の表れとして国民の政治参加の一形態であり、米国ではロビイストは有力者がそろう登録制の職業である。
企業や団体の政治献金が規制された代替措置としての政党交付金は、有権者の支援がない場合にも政治活動を可能にし、政治家と支援者との距離を離れさせ、国民の政治への無関心を招いたのではないか。資金を持つ政党の意向が政治の方向を決め、政治家個人の政策立案遂行能力も低下して、ますます民意から離れてゆく。過剰な規制は角を矯めて牛を殺す結果にもなる。
もちろん、政治献金は賄賂や不正とは無縁でなくてはならないが、有権者が志の高い政治家を育て支援しやすい制度も必要である。税金を使う政党交付金は政党には恩恵だろうが、代わりに国民の政治への信頼という最も大切な資産を失わせたのではないか。
野田新首相は浪人中、地元中小企業の人々の支援を得ていたという。政治の原点を知るリーダーの下で、政治の信頼回復を期待したい。(桃李)
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