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【田原総一朗の「ニュースの裏側」】輿石氏の幹事長起用は″ドジョウ″らしくない周到な人事
2011年09月09日07時00分 BLOGOS編集部
http://news.livedoor.com/article/detail/5847206/
不屈のジャーナリスト田原総一朗氏に注目のニュースを解説してもらう新シリーズ「田原総一朗の『ニュースの裏側』」。第1回は発足したばかりの野田内閣の人事と主要政策について語っていただいた。【取材:田野 幸伸・文:永田 正行(BLOGOS編集部)】
鳩山・菅内閣は自民党との違いを強調することに腐心しすぎた
―共同通信社の調査によると、野田内閣は62.8%と高い支持率を記録していますが、率直なご感想をお聞かせください
今まで支持率が低迷してきたのは、菅政権に原因がある。もともと低支持率だったが、6月5日の代議士総会における辞任表明後も3ヶ月間粘りに粘って政権を維持してきた。これに対する反発が、低支持率につながっていた。だから、現在の支持率は野田さんに対する期待というよりも菅内閣ではなくなったことに対する評価だと思う。
菅さんが代表選をやって、小沢さんに勝ったときも60%以上支持率があった。これも反小沢という強い感情があって、その反動で菅さんが支持を得た。これとほぼ同じ現象だろうね。
―いままでの民主党政権はトップの思いつきに振り回されてきたイメージがありますが
思いつきというより、鳩山さんも菅さんも「民主党内閣は自民党とは違うんだ」ということを示そうとし過ぎた。鳩山さんは当初様々なことを言ったよね。
例えば「自民党の予算は無駄遣いが多い。民主党が予算を組めば初年度で7兆円予算を減らす」と発言した。しかし、実際はほとんど減らなかった。また、「今まで日本はCO2を多く出しすぎたから、2020年にはCO2の25%削減する」と言った。これは今ほとんど問題になっていない。最も代表的なのは、「米軍の普天間基地を最低でも県外に移す」と発言したこと。これも結局できなかった。つまり自民党との違いを強調したいあまり、結果的に嘘をついたことになってしまった。
菅さんも同様に自民党との違いを打ち出そうと躍起になった。「脱原発」が代表的だよね。加えて、菅さんの欠点はチームプレーができない、ことごとく個人プレーだということ。
例えば、谷垣さんに電話して、「大連立をしたい。副総理をやってくれ」と頼む。こういう話は事前に党内での共有が必要だけど、何の相談もしていない。思いつきで、しかも電話でいきなり谷垣さんに言った。また、脱原発発言についても事前に民主党の幹部に何の相談もしていない。だから結局民主党の幹部はあれは個人的な見解ということになったんだ。
「自民党との違いを打ち出そうとしすぎた」、「チームプレーができなかった」。この2つが菅政権の欠点だったね。
これに対して、野田さんはチームプレーができる人物。自分でも自身のことをドジョウといっているが「飛んだり跳ねたりできない人」なんだ。また、民主党内での信頼度が高いことも野田さんの特徴だね。
いままでの鳩山、菅内閣は自民党との違いを強調しようとしすぎたから、野田さんの役割は、自民党と如何に強調していくかになるだろう。今、最も重要な問題は、東日本大震災からの復旧復興。これについて民主党と自民党、その他の政党との間に違いがあるはずはないんだから。
復興には、19兆円の予算が必要だと言われている。この19兆円のうち、第1、第2次補正予算で6兆円使っている。残りは13兆円。このうち10兆近くを第3次補正予算でやるだろう。
だから、野田内閣の最初の大きな課題が第3次補正予算。ここで復興のための予算に10兆ぐらい掛ける必要がある。これについては、自民党も考えに大きな違いはないはずなので、党利党略に走らず協調できるかが重要なテーマになる。
輿石氏の起用にみる野田総理の周到さ
―党内の役員人事についての印象はいかがでしょうか
一番大きいのは幹事長に輿石さんを起用したこと。輿石さんは小沢グループの中心で参議院の会長だ。この起用については賛否両論がある。僕は鹿野さんか輿石さんのどちらかとだと予想していた。世論は鹿野さんの方が受けが良かっただろう、中間派だから。
輿石さんの起用ついては、小沢さんが強く要求したんだと思うよ。輿石さんを起用したことで、周囲は失望したかもしれない。ただ、僕は「ドジョウ」らしくない周到な計算に基づいた人事だと思う。
まず小沢さんは自分の傀儡として海江田さんを立てた。その海江田さんが主張したことは4つあった。1つはマニフェストの復活。菅政権時代にマニフェストは、3党合意をやるために大幅に変更されている。これがけしからん、元に戻せという主張だ。2つめは、小沢さんの党員資格停止処分の即時解除。3つめは「復興財源として増税をするな」という反増税論。最後は菅政権が先送りしたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加に反対するというものだ。
順番に見ていくと、まず最初のマニュフェストの問題。輿石さんは菅政権での役員でもあったけど、このときに3党合意に賛成している。だから、いまさらマニュフェストを復活させるとは言えない。現に言わないしね、3党合意に賛成しているんだから。
2つめの小沢さんの処分については、輿石さんが幹事長に就任する際に、野田さんは、この件に触れるなという条件を出したのではないかな。輿石さんも最初は保留したものの、後に同意した。現に、その後記者会見では「党の決めたことは重視する」ということで、処分解除については事実上撤回している。これで最初の2つについては解消した。
問題は増税とTPPだが、これについては、政調会長に前原さん、政調会長代行に仙谷さんを起用していることが注目される。僕は政策については、この前原―仙谷ライン中心でやるんではないかと見ているんだ。つまり小沢グループには、とやかく言わせないという姿勢なのではないかと思う。
野田さんには、もう一つ懸念があったと思う。それはお金の問題。
民主党に入ってくる政党助成金などのお金は全部幹事長が握っている。小沢さんが代表の時、僕が鳩山幹事長に「お金を握っているんですか」と聞いたら「一銭も握っていない、全部代表が管理している」と言っていた。
小沢さんは代表のときも幹事長のときも党のお金をすべて握っていたんだろう。だから、派閥としての勢力も増した。つまり、野田さんは輿石さんが握ったお金が小沢さんに直結するんじゃないかということに懸念を抱いたんだ。
そこで、その監視役として樽床さんを起用した。また、岡田さんが幹事長のときに民主党のお金をガラス張りにしている。この方向性も維持するためにも、樽床さんを起用したと僕は見ている。
―国対委員長の平野さんについてはどうですか
ここには鳩山系の平野さんを起用することで「ノーサイド」をアピールしたのではないかと思う。
“岡田氏に財務大臣を打診した”は嘘
―閣僚人事の印象をお聞かせください
官房長官は岡田さんがなると思っていた。これは相当本気になって頼んだようだが、岡田さんが固辞したため、側近の藤村さんになった。僕は岡田さんか藤村さんがなると思っていたので、岡田さんが断って藤村さんになるというのは、ある意味妥当だろうね。
財務大臣が安住さん。これは“軽量”じゃないかといわれている。財務大臣は岡田さんに頼んだが、断られたからやむなく安住さんに頼んだといわれているが、これは嘘だね。こないだある番組に藤井裕久さん(民主党最高顧問)に来てもらったんだ。
藤井さんは野田さんと一番仲がいいというか親代わりのような人だけど、彼は「野田さんは岡田さんに財務大臣は頼んでいない」と言うんだ。官房長官は頼んだよ。しかし財務大臣は頼んでいないと。つまり、財務大臣は最初から安住さんでいこうと考えていたんだよ。しかし、こんな“軽量”でいいのかなという問題がある。しかも、9日からG7が始まるから、安住さんで大丈夫かという気持ちになる。
いろいろ取材をしてみると、野田さんは、最初から安住さんでいくつもりだったらしい。何故なら、なまじ権力がある岡田さんを財務大臣に据えると、自分の思い通り動かない可能性がある。だから、敢えて“軽量”と言われる安住さんを選んだ。つまり、野田さんの思い通り動く人物として安住さんを指名したんだ。
僕は、今後野田政権における財政問題は、野田さんと勝事務次官(財務省)が連携して取り組んでいくと思う。そして、そのつなぎ役として安住さんが入っている。実際に、G7で安住さんがどんな発言をすべきなのか、勝さんが特訓をしているそうだ。
―財務省内閣とも言われていますが、やはり増税路線は確実なのでしょうか
実は野田さんは、記者会見で初年度は増税はしないといっている。これは、安住さんがG7に行くにあたっての大きなメッセージだと思う。
野田さんの最初の大きな仕事は第3次補正予算。先ほど言ったとおり、ここで復興予算として10兆円近く予算を取る。野田さんはこの中に円高対策の予算も含ませるのではないかと僕は思う。G7で日本にとって一番重要なのは円高対策。中小企業の支援とか国内に工場を作る企業のための奨励金とかね。
今、世界で大量に国債を発行できるのは日本だけだ。アメリカも欧州も国債を発行することなんか出来ない。第3次補正で10兆円近い国債を発行するから、円高対策に協力してくれ、協調介入してくれとG7で主張するのではないか。そのための特訓を安住さんは今やっているんじゃないかな。
あと、僕はこの時発行した国債の少なからぬ量を日銀に買わせると思う。日銀には「円を売りドルを買う」という介入と「国債を買う」という2つの役割がある。これも野田―勝のコンビで積極的に進めるはずだ。これを実行するときに、力を持った人だとやりにくいから安住さんが財務大臣なんだろう。
―防衛大臣の一川さんについてはどうでしょう。
ここも疑問符がつく人事だね。本人は防衛問題について、何も知らない素人だといっている。今度の内閣の防衛における最大の問題は、普天間の米軍基地。日米同盟の進化とかいった抽象論は何の役にも立たない。
自民党が17年掛かって辺野古に決めた。これを鳩山さんがいい加減な決め方だといって、辺野古にしないといった。その後、宙に浮いているこの問題にどう蹴りをつけるのか。対米関係はこの一点に掛かっている。これも、一川さんにはとても対応できないから、外務大臣の玄葉さん、あるいは前原−仙谷ラインでやるんじゃないかと思っている。
メディアの「地味だ」という評価は狙い通り
―閣僚人事で他に注目すべき点はありますか。女性では小宮山さんが厚生大臣に就任していますが
彼女は、小沢さんが最も嫌っている議員。献金問題のときに、小沢さんはやめるべきとはっきりいった人だからね。輿石さんが幹事長になって、閣僚にも小沢グループから2人起用されているから、一方で小宮山さんを入れることで野田さんはバランスをとったんだろう。
あと、鹿野さんは不満だと思ってるだろうね。代表選における野田さん勝利は鹿野さんのおかげ。当初鹿野さんの持っている票数は海江田さんにいくはずだった。しかし、鹿野さんは小沢さんのあまりにもえげつないやり方に怒って、野田さんに投票した。その功績に対して鹿野さんの待遇がいまひとつだね。だから、鹿野さんのところは相当不満をもっているはずだ。
―輿石さんは参院からの起用になりますが
これは史上初だね。小沢さんの非常に強い要請があったんだろう。
僕は下手をすると小沢さんが離党するんじゃないかと思っていたんだ。今100人前後が離党したら野田内閣にとっては致命的だ。しかも、小沢さんが離党するならいいタイミングだったんだよ。1月になったら政党助成金がもらえなくなるから。そういう事情があったから、野田さんは輿石さんを幹事長に据えて離党を抑えたという風に僕は見ている。
―海外メディアの報道も含めて、全般的に閣僚が地味な顔ぶれだという意見もありますが
野田さんは敢えて“地味風”にしたんだと思う。自分をドジョウといったり、地味だ地味だと喧伝した。だから、狙い通りのスタートになったと言えるだろうね。
震災で生まれた“需要”を景気対策に活かせ
―国家戦略会議をつくって、経団連や日銀との連携を強化しているように見えますが、この辺りについてはいかがでしょう
最初に言ったとおり民主党政権はとにかく自民党との違いを強調してきた。その一つが脱官僚だけど、野田さんは官僚をどう使うかという風に考え方を切り替えている。また、前政権は「脱原発」を主張したため財界との関係も良くなかった。だから野田政権では「官僚をどう取り込むか」「財界とどう連携するのか」「野党とどう協調するのか」という3つがポイントになるだろうね。これが鳩山、菅との大きな違い。
―発足時に内閣が高い支持率を受ける一方で自民党の支持率はほとんど変化していませんが、これは何故ですか
何にもやってないからね。やってきたのは“菅イビリ”だけ。自民党がこの国をどうするのか、民主党とどう違うのかを協調してこなかった。言ってみれば、自民党は野党でしかなかったということだね。
―大連立の可能性はありますか
ないだろう。でも協調会議みたいに、超党派の委員会のようなものを作ると思うよ。大連立にならないか原因は選挙制度。小選挙区制は1区1人で対立してしまうから大連立がしづらい。
―野田さんの外国人からの献金問題についてはいかがですか
最初は自民党はそこを責めると思うが、僕は本当に知らなかったと思う。野田さんも野田事務所も。国籍がどこかなんて調べないから。
―大きなスキャンダルがない限り早期の解散はありえないのでしょうか
してる暇がない。来年度予算は12月いっぱいには概算を出さなきゃならない。でも、その来年度予算の第3次補正がまだ出来ていない。さらに再来年の予算は来年の夏には出さなきゃならないんだから、それ以前の解散はないでしょう。
―エネルギー政策については、いかかでしょう。野田さんは財界との関係を重視して原発の再稼動を主張していますが
これも前原−仙谷のラインが中心になってやると思う。それに加えて、僕は早くエネルギー戦略専門の機構を作るべきだと考えている。3.11以前、菅内閣では2030年には全電力の53%は原子力でやるといっていた。それはもう不可能な状況の中で、エネルギーを何で代替するのか。
僕ははっきりいって太陽や風力では無理だと思う。10%、15%は何とかなるかもしれないけど、原子力の不足分は埋められない。だから、そこを埋めるための戦略を作る機構をつくるべきだね。
僕は逆にこれはチャンスだと思っているだ。戦後日本はエネルギー戦略に力を入れてこなかった。石油石炭を買い、アメリカから原子力を導入してという風に自前のエネルギー戦略をやってこなかったんだ。だから、景気の悪いときにはイノベーションですよ。シュンペーターがいうようにね。エネルギー問題はイノベーションであり、現在はチャンスだと思う。
―景気回復については
これも今は逆にチャンスなんだ。震災で失われた財産は20兆ともいわれている。亡くなった方、被災された方には心からお悔やみを申し上げるけど、経済的視点から見ると、20兆円分の需要になる。だからむしろチャンスなんだと思うよ。
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