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野田政権発足1週間。前原・仙谷・藤井トリオの「責任分担型」内閣は増税をめぐって「責任回避・混乱型」になるのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/18900
2011年09月09日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」:現代ビジネス
野田佳彦政権が発足して9日で一週間になる。
閣僚や副大臣、党人事などが一段落して政権の枠組みが固まった。肝心の政策決定について、野田首相はどうやら菅直人前首相の「独断専行・失速型」を排して「責任分担型」を選んだようだ。
それは前原誠司政調会長と仙谷由人政調会長代行、藤井裕久党税制調査会長を決めた人事、そして最重要課題である増税問題をこの3人のラインに丸投げした点に表れている。野田は予算案と法案、条約案について閣議決定の前に政調会長の了承を前提とする方針も決めた。
藤井は党税調会長を引き受けるに際して事実上、前原から一任を取り付けたようだ。増税問題については藤井が事実上、取り扱いの決定権を握る責任者である。
■法的根拠がない国家戦略会議
これとは別に、野田は古川元久を経済財政相兼国家戦略相に据えた。古川は大臣就任後の会見で民間人を含めた「国家戦略会議」の創設に言及している。既存の経済財政諮問会議を看板の付け替えで復活させる構想であるようだ。
だが、こちらは政策決定の本筋ではない。名前が立派だから政権の司令塔になるかのように見えるが所詮、政権の見栄えをよくする舞台装置の域を出ないだろう。
それには理由がある。
そもそも国家戦略室自体がさっぱり機能していない。
国家戦略室は当初、脱官僚・政治主導路線を実現する要の組織になるはずだったが、既存の内閣官房や内閣府、さらには内閣官房長官との仕事の切り分け、権限を決められなかったために、かけ声とは裏腹に盲腸のような組織になってしまった。
いまだに設置根拠は「内閣総理大臣決定」のままであり(閣議決定が設置根拠と報じた新聞もあるが誤り)根拠法がない。言い換えれば、首相が「置きたい」というから置いているだけで、霞が関からみれば「あってもなくてもいいお飾り組織」にすぎないのだ。
もしも、この国家戦略室を土台に国家戦略会議をつくるとなると、再び国家戦略会議の設置根拠が問題になる。またまた内閣総理大臣決定でつくるなら、お飾りのうえにお飾りを重ねるようなもので、それこそ、そこらの政府審議会と変わらなくなる。
霞が関からみれば法的権限がないのだから、司令塔でもなんでもない。大臣や有識者のおしゃべり会議である。
■財務省にとっては身内ばかり
そうではなく、既存の経済財政諮問会議を土台に国家戦略会議をつくるなら、やはり法的根拠が直ちに問題になる。諮問会議はちゃんと内閣府設置法という法律に基づいた組織であるからだ。国家戦略会議を諮問会議の後釜として位置づけようとすれば、内閣府設置法の改正手続きが不可欠になるのだ。
民主党は国家戦略室の法的根拠を書いた政治主導確立法案を成立させられず結局、取り下げた経緯からみて、新たに国家戦略会議を創設するために法改正を目指したとしても、ねじれ国会の下では難航が必至だ。
日程的にみると、財務省にとって復興増税は3次補正とセットで決める案件であり、社会保障財源としての消費税引き上げも来年3月までに法整備する案件だ。つまり議論はすぐ始めなくてはならない。
なんとか急場の閣議決定で国家戦略会議をつくったとしても、十分な議論はできない。
そもそも国家戦略会議のメンバーに想定されている首相はもちろん、安住淳財務相も古川経財相兼国家戦略相も増税派であり、財務省からみれば「身内」ばかりだ。初めから「格好を整える」ための場にすぎないのだ。
諮問会議にならって構成を考えるなら、増税に異論を唱えそうな小沢一郎元代表グループの山岡賢次国家公安委員長や一川保夫防衛相は経済財政問題に関係なく、したがって会議メンバーになりそうもない。初めから外してある。
■早くもぶれ始めた野田首相
そこで本筋に戻ろう。
増税路線の要は先にみた前原、仙谷、藤井のラインだ。
藤井が仕切る党税調ですっきり増税が決まれば、前原がお墨付きを与えて内閣に上げ、閣議決定の運びになる。だが、そう簡単ではない。民主党議員によれば、反増税派は議員全体の4分の3の300人前後に上るという。逆に言えば、増税派は残り100人である。
反増税派は概して新人議員が多く、選挙基盤も固まっていない。いずれ2年後までには必ず総選挙が控えている事情を考えれば、増税の旗で選挙を戦うのに躊躇するのは当然だろう。
党税調だけではない。
7日の政府税制調査会では松原仁国土交通副大臣や森ゆうこ文部科学副大臣らから強い反対意見が飛び出した。はっきりした反増税派の両氏を副大臣に取り込んだのは、内閣の一員にして反対意見を封じ込める狙いがあったと思われるが、そうはならなかった。
野田は「前原・仙谷・藤井トリオ」の力を借りて増税反対論を党内段階に封じ込め、内閣はがっちり脇を固めて閣議決定に持ち込むシナリオを描いていただろう。国家戦略会議はその晴れ舞台という役割である。ところが、党で議論を始める前に政府の中から先に火の手が上がってしまった。
こうなると、政府税調の会長を務める安住の力量が問われる。安住1人で森や松原に対抗できるかどうか。野田は「主戦場は党」と見立てて増税派戦力の大半を党につぎ込んでみたものの、手薄になった政府税調が案外、主戦場になるかもしれない。
森や松原はいざとなれば、副大臣辞任というカードがある。政策論争は一皮むけば、熾烈な権力闘争そのものだ。増税のような選挙に直結する重要案件であればなおさらである。ということは、いずれ野田本人の胆力が試される局面が必ず来る。
野田は代表選で当初、大連立に「101回でもプロポーズする」と言っていたかと思えば、途中で「実務者協議の先に連立も視野に入る」とトーンダウンした。増税についても途中で「景気が悪ければできない」と軌道修正した。案外、ぶれるのだ。
前原・仙谷・藤井トリオに責任を分担させたはいいが、途中で本人がぶれると、政権はあっという間に混乱するに違いない。菅の「独断専行・失速型」から「責任分担」ではなく「責任回避・混乱型」になってしまうのだ。
さて、どうなるか。劇の幕は上がったばかりだ。ヤマ場は遠からずやってくる。
(文中敬称略)
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