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野田内閣では、増税の問題よりも「3党合意」の順守か否かが大きな問題になるはずです。「3党合意」は裏を返せば、マニュフェストを守るか放棄するかの問題です。これだけは、小沢一郎氏は絶対に譲らないはずです。なぜなら、マニュフェストを放棄すれば、それは民主党が民主党でなくなることを意味しているからです。
民主党の主流派がマニュフェスト放棄を強行すると、小沢グループは党を割ると思われます。今までの小沢氏の政治行動から見ると、これは間違いがないことです。マニュフェストの放棄に関しては、小沢グループに限らず、党内に相当の抵抗があるのです。民主党参院議員の有田芳生氏は次のように述べています。
***私は小沢派ではない。だが結局、マニュフェストの意義を問うなら、政権交代を実現した当事者である小沢一郎に代表選を戦ってもらうほうがわかりやすかった。いまは党員資格停止中だが、裁判で冤罪が確定した場合、来年秋の代表選には出ることになるだろう。小沢一郎に総理大臣をやらせてみて、判断せねばならない。今の体たらくを見ていると、そう強く感じる。─民主党参院議員の有田芳生氏『週刊ポスト』9/9日号より
民主党のマニュフェストの目玉は何といっても「子ども手当」です。子ども手当については、EJ第3125号でも述べたように自民党には絶対できない政策です。『週刊ポスト』9/9日号に詳しい分析レポートが出ているので、これを参考にして再び子ども手当について紹介することにします。3党合意とは、基本的には2012年4月から子ども手当を廃止し、自公政権時代の児童手当を復活させることで合意するということです。
なお、3党合意には、合わせて他の政策──「高校授業料無償化」「高速道路の無料化」「農家戸別所得補償」の見直しにも言及しています。この3党合意について、2011年8月5日付の読売新聞は次のように報道しています。
***最初から財源の裏付けを欠いた無理な政策であり、加えて、東日本大震災では巨額の復興財源が必要になった以上、廃止するのは当然である。─2011年8月5日付読売新聞
野党、とくに自民党は何かというとすぐ「財源」といいますが当の自民党は今まで財源を決めずに今日まで膨大な赤字国債を出し続けてきたのです。そのため、日本は膨大な財政赤字を膨らませることになったのです。子ども手当について大新聞は、「財源の裏付けを欠いた無理な政策」ときめつけ、批判しています。民主党の政策というよりも、小沢氏の政策としての批判でしょう。さらに朝日新聞は8月に実施した世論調査において、次の質問
をし、賛成が過半数に達していることを伝えています。
***子ども手当をやめて児童手当に戻すことに賛成ですか 63% ─朝日新聞による2011年8月調査
しかし、この数字は本当に民意を反映しているのでしょうか。子ども手当の受給世帯は全体の20%程度なのですが、明らかにそういう世帯を中心に聞いていないと思われるからです。これでは、子ども手当に関するネガティブキャンペーンといわれても仕方がないでしょう。子ども手当を廃止し、児童手当に戻すといいますが、そもそも自公の児童手当と民主党の子ども手当は理念が違うのです。
自公の児童手当は、子育てはあくまで親がするものであり、行政はそれをサポートするという前提に立っています。しかし、子ども手当は、「社会で子どもを育てる」という理念に立っており、少子化対策として位置付けています。少子化対策について自公政権は、その重要性を認めながら、思い切った施策をまるでやってこなかったのです。
「社会で子どもを育てる」という理念であれば、所得制限などは設けるべきではないのです。それに子ども手当は、EJ第3125号でも強調したように、国民への「直接給付」というところに特徴があるのです。もし、自公時代の農業補助金のように「間接給付」で実施すると、経由する団体に既得権が発生してしまうからです。既得権益を作らないという意味でも「直接給付」にしているのです。
もともと日本は、子育てに対する支援をきちんとやってきていないのです。これに対してヨーロッパでは手厚い制度を設けているのです。橋本俊詔・同志社大学経済学部教授は、ヨーロッパの制度について次のように述べています。
***ヨーロッパ諸国では子供への現金給付が盛んだ。フランスは学費免除に加えて、第2子以降なら20歳になるまで2万〜3万円程度が給付される。スウェーデンでは、子供の数に応じて第1子の約2万円〜第5子以降の約6万円まで、産めば産むほどもらえる(16歳まで)。その甲斐あって、フランスは2・0スウェーデンは1・9(ともに08年)と高い出生率を誇っている。─橋本俊詔・同志社大学経済学部教授 『週刊ポスト』9/9日号より
民主党の子ども手当は、これを目指しているのです。しかし、国民に約束した特別会計にろくに切り込みもしないで「財源がない」として断念し、その理念を放棄するとは国民に対する裏切りです。── [日本の政治の現況/61]
≪関連情報≫子ども手当の財源について
民主党が野党時代から主張してきた政策であるが、財源の確保が明示されていないことが問題点として指摘されている。財源は初年度で2兆2500億円、翌年からは倍のの4兆5000億円ほど必要であり、その財源については、扶養控除等の廃止を充てるとされていた。これによって得られる税収増は扶養控除8000億円、配偶者控除6000億円であり子ども手当の必要経費には及ばない。国際通貨基金や経済協力開発機構などの国際経済機関からも見直しを求められている。国際通貨基金(IMF)は日本の財政赤字が国内総生産(GDP)に対して10・5%に達する見通しであると発表し、子ども手当など国債増発によりイギリスやアイルランドのように大規模な財政調整が必要になると指摘した。
──ウィキペディア
http://electronic-journal.seesaa.net/article/224496736.html
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