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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110905-00000001-gendaibiz-pol
事務方人事も財務省のやりたい放題ーー「増税を吹き飛ばす18兆円の日銀引き受け」を阻止する野田増税内閣の「財務省シフト」/高橋 洋一
野田政権が先週発足した。内閣支持率も大幅にアップして上々のスタートだ。
輿石東氏を幹事長に据え、党内融和を図った。輿石氏は日教組を支持基盤としており、組織決定には従う人だ。小沢氏とも近いが、最も御しやすい人なので、党内融和の観点からみれば最適解に近い。
そして民主党内に重点的な人員配置している。政調会長に前原誠司氏をもってきて、すべての政策が原則、政調会長の事前承認が必要とした。しかも、仙谷由人氏を政調会長代理に起用する方針だ。
このように党の重厚布陣になると、政府は軽量級でもいいとの考え方になっても不思議でない。その好例が安住淳財務相だ。
財務省の仕事の範囲は広い。予算、税制、関税制度、国債、財政投融資、国庫、通貨、国有財産、たばこ・塩、国際政策、政策金融・金融危機管理と日本経済の多岐にわたっている。財務相は守備範囲が広く、国政全般に関連しているために、他の省での大臣経験者が多くベテラン議員が多かった。40代で財務相に就任したのは田中角栄氏以来である。
政策として目先重要なのは円高対策と第三次補正予算だ。9日からフランス・マルセイユでG7が開催されるし、第三次補正予算も10月中旬までには出さないとまずい。
ただし、やることはすでに決まっていて、改めて政策通の財務相をもってくることもない。政策は財務省官僚に丸投げでいいということなのだろう。
野田政権では国家戦略会議を作るが、ねじれ国会ではいくら政府内で議論してもあまり意味ない。せいぜい政府内で財務省の決定に権威付けするだけの御用機関になるだけだろう。
*** 首相秘書官人事も財務省主導 ***
政策を財務省官僚に丸投げして、財務省官僚がうまく政府部内を回せるように、事務方人事は財務省のやりたい放題だ。
その一つは官僚の最高ポストである内閣官房副長官ポスト。竹歳誠氏であるが、異例の現職国交省次官であるばかりか、このポストは安倍政権を除いて歴代内閣では旧内務省系省庁が独占していたのに国交省出身として初めてだ。一時は、読売新聞に天下った前財務事務次官の丹呉泰健氏という噂もあった。それではあまりに財務省人事がみえみえということで、結局、現財務事務次官と親しいとされる竹歳誠氏に落ち着いた。
それに、首相秘書官人事も財務省主導だった。菅政権の時には厚労省の山崎史郎氏の入省年次が一番高かった。一般社会では入省年次なんてたいしたことないように思うが、役人社会では年功序列なので入省年次は重要だ。私が総理補佐官補として官邸にいたときにも、座席表には名前とともに、入省名と入省年次がしっかり書き込まれていた。
いずれにしても、首相秘書官で年次が高い人が全体を取り仕切る慣行がある。これまで、菅政権と麻生政権を除いて財務省からの秘書官の入省年次が最も高かった。今回の秘書官人事では、厚労省の入省年次を下げ、財務省内エース級で主計局次長だった太田充氏を官邸に出して、この「入省年次逆転」を「正常化」した。
なお、財務省は省内人事で「増税シフト」敷き、省を上げてのサポート体制になっている。内閣官房(官邸)に出向させていた税務畑エースの佐藤慎一氏を呼び戻し、省内司令塔の総務審議官とした。また、国会対策が中心で財務省トップエリートへの登竜門である文書課長であった星野次彦氏を主税局審議官とし、公共担当主計官であった井上裕之氏を異例の主税局税制一課長(基幹税を担当)にした。
政治的に見れば、以上のような、野田政権の重量級党人事、それと閣僚は軽量級だが財務省の充実した政府人事は、かなり巧妙だ。それなりに安定感がある。
*** 18兆円の日銀引き受けで増税は吹き飛ぶ ***
政策からみれば、この仕組みでどのようなことが予想されるのか、第三次補正予算を例にとってシミュレーションしてみよう。
規模は5年間で13兆円とかいわれているが、望ましいのは、被災地で自由に使えるおカネを積むことである。ただし、今のような中央集権では、中央官庁が予算要求するしかない。
それでも財源さえあれば、補正予算は簡単に組める。復興債でつなぎ資金調達するのだが、復興債の償還財源では、3兆円程度と想定されている税外収入と歳出削減による捻出分を兆円単位で上乗せし、それ以外は基幹税増税というのが財務省シナリオだ。
ということは、補正規模13兆円、基幹税増税9兆円、税外収入3兆円、歳出カット1兆円が基本形で、補正規模が増えれば、その分基幹税増税が増えるというのが、政府案になるだろう。
そこで、民主党内プロセスが政調ではじまる。
民主党内には増税に反対する者が多い。先の代表戦でも、海江田万里、馬淵澄夫氏は増税に反対する立場で、政府内にも入っていない。前原政調会長も増税に反対していた。
となると、党内からは、税外収入と歳出カットを増やす案が出てくる。その中で、有力なのは、今年度予算ですでに決まっている日銀引受枠30兆円のうちまだ未使用の18兆円である(詳しくは5月30日付けの本コラム参照)。
この話は、震災直後から本コラムで何回も指摘したら、その後国会でも質問が出て、当時の野田財務相がその事実を知らなかったことでも有名だ。いささか脱線するが、野田氏の側近政治家によれば、野田氏はその事実の指摘にとても困ったと漏らしていたようだ。
代表戦に出馬した政治家の間でも知られていることなので、民主党内の政調プロセスでも必ずできるはずだ。この18兆円の日銀引受で、基幹税増税は吹っ飛ぶ。
*** すでに事実上の増税大連立は始まっている ***
これに対して、日銀引受は禁じ手であるという幼稚な話がある。現に、安住財務相は就任後の記者会見で語っている。毎年行われていること、すでに今年度予算でも認められて予算書でも書かれている事実すら財務官僚に教えてもらっていないようだ。
さらに、次には償還財源にならないという反論があるだろう。しかし、日銀引受でベースマネーが増えて、それはシニョレッジ(通貨発行益)となって、日銀納付金という形で税外収入になる。会計上のテクニックによりベースマネー増が一気に全額納付金とならないが、もし日銀引受の代わりにそれと経済的には同等な政府紙幣を発行した場合を考えてみればいい。
日銀引受ではハイパーインフレになるという批判は、今年度で認められて引受枠ではベースマネー増にならないので、それもあたらない。
むしろ、この18兆円の日銀引受枠を使わないと、円高はさらに一層進展する。このロジックは、8月22日付けの本コラムを参照してほしいが、円ドルレートは円の量とドルの量の相対関係で決まるので、円の量を増やせば希少価値が低くなり円安になるからだ。
この18兆円の日銀引受枠の活用は、今の予算のままで、新たな法律措置も不必要で政府の判断だけできる。しかも、財源問題、円高問題、さらにデフレ脱却の一石三鳥になる。逆にいえば、この政策をやらないとすれば、政府の不作為は大問題だ。
しかし、増税を志向する野田体制では、民主党内でこの妙案が採用される可能性は少ない。仮に民主党内で採用されたとしても、野田政権としては増税反対の意向を多少飲んで与野党協議に持って行くという戦法が可能だからだ。
今の自民党は、復興増税にすでに賛成の立場だ。7月8日の震災特命委員会の中間報告で基幹税の増税を求めている。この点、野田政権は、反増税の多い民主党内よりむしろ自民党のほうが増税という政策では一致している。このため、主戦場である党内を抑えてつつ、そのまま与野党協議で増税へ舵取りするために、党での重量級人事になっていると思えばわかりやすい。
その萌芽はすでにある。復興基本法と東電賠償法で、ともに自民党の修正を民主党が丸呑みすることによって成立している。復興基本法では、復興債の償還財源が言及され、今の復興増税の布石になっている。東電賠償法では、国民負担を減らすような法的整理でなく、国の責任という名目によって国民負担が増えるような条項が追加されている。
すでに、増税や電力料金引き上げという政策では、民主党と自民党はすでに事実上「大連立」をとっているようなものだ。しかも、それらの法案審議では密室審議によって国民負担増が決定付けられ、表の国会審議はほとんど行われなかった。
これらのやり方で、第3次補正予算や償還財源確保のための増税法案が、事実上の民主党と自民党の「大連立」によって決まられる可能性もある。
これを打ち破るのは、今の予算のままで、新たな法律措置も不必要で政府の判断だけできる18兆円の日銀引受枠の活用である。ところが、野田総理も困ったこの事実さえ、財務省のポチ新聞は報じない。私は何回でも言う。
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