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「ノーサイドにしましょう、もう」
野田氏の民主党代表選勝利演説での、このフレーズは、ある種感動的だった。
また、キャラクター的には、泣き虫や法螺吹きが日本の総理になるより、どじょうの方が遥かによかったと言える。
◆どじょう総理の純情◆
しかし、問題は政策であり、特に財政経済政策である。
代表選では多少暈していたが、野田総理は就任と前後し、早速人事・体制・発言を通して持論である復興増税を含む増税路線に舵を切り始めた。
一部には、野田氏は財務副大臣、財務大臣時代を通して、財務省に洗脳されたとも言われているが、それは違う。
野田氏は、愛読書に以前から城山三郎の小説「男子の本懐」を挙げている。
同書は、戦前、金解禁と緊縮財政を断行した浜口雄幸と井上準之助を賛美する内容だが、文学の限界か城山の認識力の限界か、大不況を招き歴史的失策と言われるその経済政策への評価軸が欠落した作品である。
その「男子の本懐」に文学青年時代に感銘し座右の書とした野田氏の財政再建至上主義は筋金入りのものであり、藤井裕久元財務大臣と財務省が御し易しとして純情な野田氏に目を付けたというのが事の順序である。
さて、東日本大震災を経て経済財政政策はどうあるべきか。
「震災復興を一つの奇貨として、大胆な復興事業と金融緩和政策および新エネルギーを含む産業転換によって経済を活性化させ、それによる自然税収増によって長期復興国債の償還に当て、2010年代半ばに見込まれる社会保険のための消費税増税幅も可能な限り圧縮する。また事前に公務員給与削減や特殊法人整理を含む行財政改革を進め極力無駄を省いて置く」
経済学の常識からすれば、概ねこのような結論に落ち着くだろうし、事実今般の民主党代表選では野田氏を除く候補者の政策の平均もこのようなものだった。
野田氏だけが、「震災復興・経済対策と増税による財政再建を同時に進めなければ日本の再生はない」と主張した。
震災を受け多少の軌道修正をしたようだが、自民党の石破政調会長なども、基本的にこの経済対策と増税の同時2正面作戦論者であり、そこに大連立の芽がある。
しかし、軍事に於いても2正面作戦は下策であるように、事の順序を弁えない現下の経済状況での増税は大不況を招き失策に終わるだろう。
◆日本の癌細胞「既得権複合体」◆
それにも関わらず、何故、財務省のみならず、官僚組織全体、経団連等の経済団体、朝日・読売・毎日・日経等の大新聞と系列TV局は挙って増税、特に消費税増税に拘るのか。
それは、彼ら「増税翼賛会」はイコール、政・財・学・大手マスコミによって構成された日本の癌細胞とも言える「既得権複合体」だからである。
財務省を中心とした高級官僚、天下り特殊法人および国地方の一般公務員は言うまでもなく税金で食べており、安定的な消費税の増税を本能的に望んでいる。
銀行・電力・ガス・放送等の許認可事業者、記者クラブ制度と再販価格維持制度に守られる大手マスコミや一部の学者は、官僚組織とこれらに利権を持つ政治家によって形成された現下の体制の継続を望んでおり、その体制維持の主催者である官僚機構の「関連当事者」として意識して或いは無意識に消費税増税に賛成なのである。
また、同じ増税なら、所得税等と比べ彼ら高給取りに優しい消費税を選択する。
輸出分と海外事業分について消費税を払わなくてよいグローバル展開をする製造業も、法人税減税または現状維持とバーターで消費税増税を支持するのだ。
さてこの「既得権複合体」をぶち壊すにはどうしたらよいか。
直接的には、天下り全面禁止、公務員給与の民間単純平均との完全リンク、「特定許認可事業賃金等適正化法」の制定、電波利用権の入札制度導入、発送伝分離による電力自由化、排他的な記者クラブ制度の法律による解体等が挙げられる。
また、国民運動として、安易な消費税増税を主張するコメンテーター等のマーキングとスポンサーへの不買運動が考えられる。
何故、先進国の中で日本だけが、失われた20年を味わわねばならなかったのか。
何故、先進国の中で日本だけが、これほどまでの少子高齢化を迎えているのか。
何故、日本だけが、原発事故でここまで放射能塗れにならねばならなかったのか。
その答えは、「既得権複合体」による閉鎖社会の未来に希望を見出せないと共に、硬直化によって社会の各部がまともに機能していないからだ。
不幸にして震災に見舞われた今こそ、「増税翼賛会」=「既得権複合体」を破壊し、大胆な成長戦略を練り上げセーフティーネット構築と共に断行し創意と工夫が生かせる社会を構築すべき時だ。
それへの国民の覚醒なくして、2千年続いたこの国の未来はない。
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