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私は財政原理主義ではない
THE JOURNAL 田中良紹の「国会探検」2011年9月 3日 00:41
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/09/post_274.html
野田新総理は総理としての最初の記者会見で「私は財政原理主義ではない」と言った。復興財源は、徹底した歳出削減や国有財産の売却を行なった上で、それでも足りなければ時限的な増税を考えなければならないが、経済情勢も勘案しなければならないので、何が何でも増税する考えではないと言ったのである。
野田氏は代表選出馬を表明した時から「財務省の傀儡」と言われ、増税が目的の政権を作ると見られてきたが、党役員と閣僚の人事を見る限り、だいぶ様相が異なる。前回も書いたが代表選挙で「増税反対」を言った前原誠司氏を党の政策責任者にし、初入閣の安住淳氏を財務大臣にしたあたり、財務省にとってはなはだ不本意な人事ではないか。
もう一つ野田氏が代表選挙で掲げていた「大連立」も、「党内融和」の人事を見せつけられて自民党は乗る訳にいかなくなった。下手をすると自民党と公明党の間に楔が打ち込まれ、さらに自民党内の分裂を誘う手段になるかもしれない。「大連立」はもはや風前の灯火になったと私は見ている。それを分かった上で野田氏は「三党協議」を呼びかけている。野田新総理は自民党にとってなかなか油断のならない相手である。
今回の党役員、閣僚人事の注目点は「党内融和」と言われるが、それよりも岡田克也前幹事長を官房長官や財務大臣に起用するとさんざんメディアに書かせ、その上で本人が固辞したという理由でどこにも起用しなかった点が注目される。本当に固辞したのかどうか、裏側で何があったかは知らないが、私は岡田氏がこれまで幹事長として敷いた路線もいずれ変更されると見た。
また財務大臣、外務大臣という重要閣僚に、ご本人には申し訳ないが財政や外交に強いとは思えない安住淳氏と玄葉光一郎氏を充てた事にも注目した。将来に備えて党のホープに勉強させようという配慮かもしれないが、二人は宮城、福島という被災地の議員である。これに岩手選出の平野達男復興担当大臣を加えれば被災三県の議員が揃う。
こじ付けと思われるかもしれないが、私は被災地選出の議員を重要閣僚にしたいという心理が野田氏にあったのではないかと思う。それほどに野田内閣にとって震災からの復興が大仕事である。昔は「一内閣一仕事」と言い、自分の内閣で成し遂げるべき大仕事を一つに絞り、その代わりその仕事に全力を傾けて実現させるやり方が取られてきた。成し遂げれば次の課題は次の総理にバトンタッチするのである。
震災復興の次の課題は前にも書いたが定数是正と選挙制度改革である。これは震災復興とは別の意味で大変に難しい。党利党略、個利個略が絡み合い相当な政治力が必要となる。世界に例のない中選挙区制を変えて、政権交代が可能になる小選挙区制を作ったのは小沢一郎氏を中心とする議員グループだが、そのために万年与党を続けてきた自民党からは蛇蝎の如く嫌われた。自民党は事ある毎に中選挙区制への回帰を模索してきた。
小泉総理が郵政選挙で大勝した後、自民党と公明党の間では定員3人の中選挙区を150作る事が合意された。小沢路線の全面否定である。その合意が自公連立の背骨の部分にあった。ところが最近、公明党は中選挙区制を諦め、小選挙区比例代表連用制を言い出した。つまり自公連立の背骨はなくなった。小選挙区比例代表連用制はドイツなどが採用している比例重視の選挙制度である。
日本がアメリカやイギリス型の小選挙区制を続けるか、ドイツ型の小選挙区制に切り替えるか、その議論がこれから始まる。小選挙区制が導入されて15年、政権交代が実現して2年、わが国の政治構造の問題点が次第に浮き彫りにされてきた。それを踏まえた改革が野田政権の次の政権の課題となる。それは政界再編をも生み出す力仕事である。
それまで野田政権は「一内閣一仕事」のつもりで全力で震災復興と原発事故の収束に当ってもらいたい。これまでハイテンションのポピュリズム型政治が多かったので、日本の政治にもしばしのクールダウンが必要である。新総理の会見は久々に重心の低い政治を思わせた。
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