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個人的には、思ったほど世代間対立はないという印象だが、
それでも高齢者の割合が増えるほど、改革は難しくなっていき
規制緩和+社会保障歳出削減よりも、既得権維持+増税(インフレよりもデフレ)が好まれ、経済衰退が続くことになるのだろう
衰退する組織には必然的に現れるパターンだ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110829/222303/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>企業・経営>子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
「増税」と対立するのは「反増税」ではない 社会保障費の削減が政治的に主張されない理由
2011年9月1日 木曜日小黒 一正
「増税」vs「反増税」は本当の対立軸でない
今回のコラムに「社会保障費の削減が政治的に主張されない理由」というタイトルをつけた。ただし、筆者は「年金・医療・介護といった社会保障を“大幅に削減”するのが望ましい」と考えているわけではない。
政治の世界では「増税」vs「反増税」という対立軸が話題になることが多い。だが、これは本当の対立軸ではない。歳出の約半分に及ぶ財政赤字や、公的債務(対GDP)がもはや200%に達しつつある日本の財政状況を踏まえれば、本当の対立軸は「増税」vs「歳出削減」である。
このため、政治が歳出削減を重視する場合、社会保障予算の削減から逃避することは許されない。現状の財政・社会保障は持続可能でない。特に、社会保障予算は毎年1兆円以上のスピードで膨張している。経済学に「ノー・フリーランチ(ただ飯はない)」という言葉がある。何らかの便益を受けている経済社会が、そのコストを支払わない状況は基本的に維持できない。
つまり、「反増税」とは「社会保障の削減」を意味するはずである。「反増税」の立場に立つにもかかわらず、社会保障費の削減を主張しない政治は無責任である(当然、増税と歳出削減の両者を進める選択もある)。
社会保障の削減を主張する政治家や政党は少ない。唯一の例外は、聖域なき構造改革を謳い、年金・医療などの抑制を試みた小泉政権であろうか。だが、その抑制も「削減」には及ばなかった。毎年1兆円のスピードで膨張する社会保障予算を0.2兆円減らし、その伸びを0.8兆円程度に抑制したにすぎない。
しかし、この程度の抑制でも、マスメディアや医療関係者を中心に「このままでは医療崩壊を招く」との悲鳴が上がった。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110829/222303/graph01.jpg
若い世代は医療費の抑制、引退世代は医療費増の容認を求める構図
もし社会保障費の削減を諦める場合には増税が不可避となる。しかし、現行システムのままで増税をすると、引退世代が得をし、若い世代に過重な負担がかかってしまう可能性がある。というのは、今の年金・医療・介護といった社会保障システムは賦課方式を採用しているからだ。引退世代が受け取る社会保障給付は、基本的に、若い世代を含む勤労世代の負担(税や保険料)によって賄われる傾向を持つからである。
一方、引退世代の人口ボリュームが増加する中で、勤労世代の負担を抑制しようとすると、引退世代が受け取る社会保障給付は大幅に削減されてしまう。
このような状況に対して、どちらの世代も敏感になっている一つの証拠がある。最近の医療財源に関する調査において、「医療費抑制」(患者の医療利用に制限を積極的に設けて、医療費をできるだけ現状の水準に留めるべきである)を支持する割合だ。20歳〜39歳の世代では28.3%が支持するものの、60歳以上の世代ではこれが20%に低下する(図表1)。
逆に、「医療費増容認」(医療費の増加を抑える政策は必要だが、医療利用の制限が進むのは良くないので、医療費負担が増加することはしかたがない)を支持する割合は、60歳以上の世代では69%にも達するものの、20歳〜39歳の世代では59.5%に低下する。
「医療費増容認」の問は、その財源――増税、保険料増、自己負担増――についてたずねている。その結果が図表2である。この図表によると、年代別の差は少ないものの、増税について、20歳〜39歳の世代では27.5%が支持。この割合が、60歳以上の世代では42.5%にも上昇する。
増税の中身は明らかでないが、この調査に協力したアンケート回答者の多くは「消費税」を想定したと思われる。その際、増税(消費増税)を支持する割合が社会保障(年金・医療・介護)を必要とする引退世代の方が高い。
他方で、医療需要が多い60歳以上の世代は「自己負担増」を21.3%しか支持しないが、医療需要が少ない20歳〜30歳の世代では41.5%が支持している。自己負担増は医療保険の公的範囲の縮減であるから、実質的に社会保障費の削減と同じである。
以上のとおり、引退世代は増税などによって医療費増を容認、若い世代は自己負担増などによって医療費の抑制を望む構図になっている。これは、一種の対立にほかならない。
「政治の高齢化」、政治は対立軸を明確化にせよ
社会保障費の削減が政治的に主張されることは少ない。その理由は簡単で、民主主義のシステム上、人口ボリュームが大きい引退世代の政治力は、そうでない若い世代よりも強いためである。できるだけ多くの票を集める必要がある政治家や政党が、強い政治力を持つ引退世代が望まない社会保障費の削減を主張するのは得策ではない。これは、「政治の高齢化(Political Aging)」とも呼ぶべき現象である。
繰り返す。「増税」vs「反増税」は本当の対立軸ではない。その背後にある対立軸は「増税」vs「社会保障費の削減」であり、それは最終的に将来世代の利益を含む世代間の問題である。
今の政治には、この世代間にある対立を解きほぐし、財政・社会保障を持続可能性なシステムに再構築することが求められている(世代間対立を解きほぐす解決策の一つが「事前積立」)。 その際、「反増税」という言葉は中身が曖昧でよく分からない。対立軸を不透明のままにすることは政治の無責任だ。何を対立軸にするかは財政・社会保障改革の今後の議論の方向性を決定する一つの大きな要因となるはずである。
子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
この連載コラムは、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアムシリーズ)をふまえて、 財政・社会保障の再生や今後の成長戦略のあり方について考察していきます。国債の増発によって社会保障費を賄う現状は、ツケを私たちの子供たちに 回しているだけです。子供や孫たちに過剰な負担をかけないためにはどうするべきか? 財政の持続可能性のみでなく、財政負担の世代間公平も視点に入れて分析します。
また、子供や孫たちに成長の糧を残すためにはどうすべきか、も議論します。
楽しみにしてください。もちろん、皆様のご意見・ご感想も大歓迎です。
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小黒 一正(おぐろ・かずまさ)
一橋大学経済研究所世代間問題研究機構准教授。1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程終了(経済学博 士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、世界平和研究所主任研究員などを経て、2010年8月から現職。経済産業 研究所コンサルティングフェロー。専門は公共経済学。著書に『人口減少社会の社会保障制度改革の研究』(共著)、『世代間格差ってなんだ』(共著)などがある。
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