＞日本の国債よりもはるかに格付けは上。

格付け会社の格付けにどれほどの確かさがあるのかはともかく、日本国債と米国国債の“収益性”を較べれば、日本国債の高さは明瞭である。

それは、１９７０年に二人の投資家が１万米ドルを元手に、一人は５年物米国債、片方は５年物日本国債を購入し、利子及び償還された額を再び同じ国債を買いつないでいき、２０１１年にいくらの米ドルを手にすることができるかという問題である。

米国債に投資した人は、平均利回りが６％とすると、７万ドルを手にする。
日本国債に投資する人は、１万ドルを３６０万円（１ドル＝３６０円）に転換し国債を購入する。平均利回りが２％としても７９４万円になるから、１ドル＝８０円として９．９万ドルを手にする。

日本国債に投資した人は、米国債に投資した人より２.９万ドル、４１％も大きな米ドルを手にする。

この話は、９５年の円高局面後から２００７年にかけての“円安”＆“低金利”状況では通用しない。
この時期に限定すれば、日本国債を買うよりも米国債を買ったほうがずっと収益性が高い。
だからこそ、大きな円安要因となった円キャリー取引が跋扈したわけである。
低金利の円を借りて高金利のドルやユーロ建て債券で利ザヤを稼ぐ投機的「円キャリー取引」が膨らんだ２００１年から２００７年までの“円安”状況が異常なのであり、現在の“円高”状況はそれが修正され正常に戻ったものと言える。

長期トレンドである円高は、日本国債を「魅力ある商品」にしているのである。

＞したたかな中国でさえ、日本の購入額以上に買っている。
＞他の国々も大量に購入。
＞他国がほとんど買ってくれない日本の国債とはエライ違いだ。
＞利率も高いしね。

日本政府や中国政府が米国債を買うのは、それに対する信認や商品の魅力性によるものではない。

両国とも、米国への輸出が経済成長や経済維持の絶対的条件になっているからである。（日本の対中輸出も中国の対米輸出に支えられている部分が大きい）

日本や中国が対米輸出で稼いだもの米国債の購入というかたちで米国に貫流しなければ、米国経済は、日本や中国からの輸入を維持することができなくなる。

中国政府はともかく、日本政府は利率の低い短期債で保有し売ることを考えてもいないのだから、信認や商品の魅力性を気にしているわけでもない。
米国債購入の原資になった輸出代金（米ドル）相当分の円貨は企業に渡っているのだから、外国為替特別会計の勘定は塩漬けにしたっていいものだ。

米国債が外貨準備として買われるのは、資源を中心にドル建てで取引される商品が多いことによる。

米国債が買われる最大の理由は、“国際基軸通貨発行権”を拠り所に、じゃぶじゃぶ商品を輸入してくれる米国に多くの国民経済が依存していることである。

＞GDP比での財政赤字の割合も日本よりもはるかに低い。
＞つまり、日本の国債を買うよりははるかにマシでしょう。
＞客観的に考えれば。

国債の利払い及び償還の安全性（確実性）という観点で言えば、財政赤字や政府債務残高のGDP比よりも、国債が自国通貨建てで発行されているかどうかが大きく関わっている。

ギリシアなどの国債が大きな問題になっているのは、ギリシア政府に発行権がないユーロで利払いや償還をしなければならないからである。
（８０年代まで中南米でけっこう起きたデフォルト問題も、ドル建て債務ゆえである）

米国も日本も、国債は自国通貨建てで発行しているから、インフレや為替レートで価値が目減りすることはあっても、利払いや償還ができないということはない。
（米国で起きた７月末の“危機”は、「できない」のではなく、「しない」という政治問題である）

ＧＤＰの１．７倍もの政府債務があり、税収と同じかそれを超える国債を毎年発行して財政運営を行っているのに、インフレどころかデフレが続いている“奇妙な国民経済”の改善を考えることが日本政府の最重要課題である。

それを行わずに財政再建を追えば日本経済は疲弊し、それこそ手のつけられないインフレと“円安”が進行し、現在を超える大きな災いをもたらすことになる。