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世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(参議院議員 浜田和幸)
http://www.asyura2.com/11/senkyo118/msg/744.html
投稿者 忍 日時 2011 年 8 月 30 日 15:38:17: wSkXaMWcMRZGI
 

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(1)
未来トレンド分析シリーズ2011年4月25日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 「UG99」と呼ばれる小麦サビ病が世界の穀倉地帯を飲み込もうとしている。この病気は1999年にアフリカのウガンダで初めて発見されたカビが引き起こすもの。小麦の茎が枯れるという病気は29年の世界大恐慌の時期、アメリカでも発生し、当時はアメリカの小麦の収穫量が20%もダウンするという事態が生じた。

 また、62年にも小麦サビ病がアメリカを襲い、5%を超える穀倉地帯が被害を受けた。その後、こうした病気に対する抵抗力を持つ品種が次々と開発されたため、小麦が絶滅するような危機的状況は観測されなくなっていた。ところが、突然のごとくアフリカを舞台にし、小麦の茎に感染する新たな菌が生まれ、ケニアから世界各地に広がりつつある。

 すでにこの胞子が偏西風に乗りイランなど中東地域に広がり、さらにはパキスタン、インドという南アジアへも拡散し、このままいけば中国や東アジアへの感染が懸念される。かつてこの病気に悩まされたアメリカでは、農務省や各地の大学の研究者たちが警戒態勢を強化している。何しろ、現在のペースで被害が広がれば、世界全体で80%近くの小麦が壊滅的な打撃を受けることが想定されるからである。

 万が一の場合、全世界で30億人近くの人口が食糧危機に直面することになる。国連食糧農業機関(FAO)をはじめ欧米のアグリビジネスの間では、このUG99に対し抵抗力のある品種開発に取り組んでいるが、毒性が増しているため現時点では成功していない。モンサントやシンジェンタなど遺伝子組換え種子の開発メーカーでもビジネスチャンスと捉えているが、肝心の新製品の開発には5年程度の時間が必要と見られている。とはいえ、緊急対応の耐性品種の投入も徐々に進められている。いずれにせよ、各国の間では小麦の備蓄体制の強化が始まった。

 2009年3月にはメキシコに40カ国の小麦の専門家が集まり、UG99に対する国際的な防御態勢をいかに構築すべきか協議の場がもたれた。GPSを使った監視体制も29カ国で始まった。残念ながら、日本の対応はあまりにもスローである。農林水産省でも厚生労働省でも情報収集にはあたっているが、国内需要の90%を海外に依存しているにも関わらず、小麦をめぐる深刻な状況にどう対処すべきか基本戦略がないままだ。このままいけば、小麦価格の急騰は避けられず、新たな食糧パニックに突入しかねない。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(2)
未来トレンド分析シリーズ2011年4月26日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 アメリカのオレゴン州立大学の小麦の専門家、メアリー・バーンホーレン教授に言わせれば、「UG99は時限爆弾と同じ。すでにアフリカを席巻し紅海を経てイランから南アジアへ広がりつつある。これがロシア、中国そして北米に達するのは時間の問題」とのこと。これこそ世界の穀物生産にとって最大の脅威と言っても過言ではない。各国がその対策に血眼になっているにも関わらず、日本の場合は政府も消費者団体もまったくといっていいほど無関心のままである。

 東日本を襲った大地震が引き起こした大津波と福島原発の事故。その対応も急を要するが、世界的な食糧危機がわが国にも津波のごとく押し寄せてくる可能性が高いわけで、そのための防波堤を構築する必要があるだろう。

 2011年3月末、バングラデッシュではUG99の拡大を防ぐための緊急対策会議が開かれた。この病原菌は津波のごとく、エジプト、エチオピア、アフガニスタン、パキスタン、ネパールと広がり、アフリカから南アジアを飲み込む勢いである。コメと小麦に食生活を依存するバングラデッシュでは2010年、UG99に耐性を持つ品種の普及員を1,299人養成し、国内での対策に乗り出した。

 とはいえ、同国内の小麦栽培地の1.5%しか応急手当ができていないのが現状。新たな対策が話し合われたが、前途は厳しい模様である。一方、ネパールでも「ビジェイ(勝利の意味)」と呼ばれるUG99への耐性を持つ小麦の新品種を導入し始めた。

 メキシコに本部を構える国際トウモロコシ・小麦改良センターでは「少なくとも世界の小麦生産量は20%ほど減少するだろう」とし、「アジア、アフリカを中心にし、10億人を超える人々が生命の危険に直面する」と指摘。アメリカの小麦に関しても100億ドル以上の損失が発生するとの見通しを明らかにしている。当然のことながら、欧米の穀物メジャーや穀物価格を織り込んだ金融商品は投機的な動きを見せ始めているほどだ。

 日本では主に北海道で小麦の生産が行なわれているものの、本土の気候風土には適さないということで、海外からの輸入に頼りきってきた。その海外で小麦が大きな危機に直面し始めている。坐してパニック状態に直面するのか。それとも小麦に依存しない食生活に切り替えるのか。あるいはネパールやバングラデッシュで導入が進む、抵抗力の強い新たな品種の小麦を日本独自に開発する道を選ぶのか。震災対応に押し流され、世界の小麦市場において未曽有の混乱状態が発生しつつあることに、ほとんどの日本人が気付いていない現状では、選択も限られる。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(3)
未来トレンド分析シリーズ2011年4月27日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 ところで世界の人口は現在68億人。2050年までには90億人を突破し、早晩、100億人の大台に乗りそうだ。しかし一方、地球温暖化の影響とみられる異常気象の結果、食糧の生産が減少する傾向が顕著となりつつある。近年、北アフリカから中東にかけ、各地で食糧をめぐる暴動が発生した。民主化を求める「ジャスミン革命」もきっかけは食糧難であった。

 こうした危機的状況を克服するにはどうすればよいのか。ひとつの有効な手段と考えられているのが、遺伝子組換え作物の開発と導入である。アメリカは世界最大の穀物輸出国であるが、大豆やトウモロコシなどの大半はすでに遺伝子組換えとなっている。こうした作物は除草剤耐性や害虫抵抗性を人工的に与えられているため、農薬を散布する回数を減らすことが可能となり、農作業の負担が軽減でき、生産コストを下げるメリットを生み出すと期待されている。とはいえ、致命的な問題も多い。

 遺伝子組換え作物を積極的に導入している国の1つが南アフリカである。アメリカ本土以外では最も広範囲にわたり、遺伝子組換え農業が繰り広げられている。その南アフリカで09年3月、想定外の問題が起こった。トウモロコシ農家の間で8万2,000ヘクタールに及ぶトウモロコシがまったく実を結ばないという異常事態が発生し、多くの農民たちが経済的に大打撃を受けることになってしまったのである。外見からは何ら問題ないように見えるが、順調に成長していたはずのトウモロコシが皮をむいてみると中にはまったく実がなっていない。そんなわけで農家の間には衝撃が走った。

 実はこの遺伝子組換えトウモロコシの種を提供していたのはアメリカの大手種子メーカー、モンサントである。事態を重く見た同社では、さっそく補償の手続きを始めたが、この事件は遺伝子組換え作物の危険性について改めて警鐘を鳴らすことになった。

 同社の初期段階での反応は「おそらく、実験室で種子を製造する際に十分な養分を注入することができなかったことが原因ではないか」とのこと。とはいえ、モンサントの種子を購入し収穫を期待していた1,000軒の農家にとっては、実のなっていないトウモロコシでは市場に出すことができない。かつてない落胆と戸惑い、そして怒りの声が上がったのも当然であろう。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(4)
未来トレンド分析シリーズ2011年4月28日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 ヨハネスバーグにあるアフリカ・バイオセキュリティー・センターの所長マリアン・メイエット氏は「今回の事態は看過できない。政府に働きかけ、速やかにすべての遺伝子組換え作物の栽培を禁止したい」との声明を発表した。モンサントの側でも事態を放置すれば、世界的にも悪影響が及びかねないと判断した模様で、当面約300軒の農家に対し、被害に対する損害弁償を行ないたいと申し出た。

 メイエット氏曰く「モンサントは実験室の段階でのミスが原因だと軽く考えているようだ。しかし、我々の判断は違う。バイオテクノロジーによる食品事業そのものが本質的に危険な要素をはらんでいることが改めて明らかになったと受け止めている。この問題は単なる実験室のミスでは済まされない。我々は長年にわたり遺伝子組換え作物に関する技術には警告を発してきた。早晩、深刻な問題が発生する可能性を予期していたわけである。今回、その懸念が現実のものとなった」。

 南アフリカのスーパーマーケットチェーンであるウールワースでは、2000年から遺伝子組換え食物の販売を全面的に禁止している。それほど、消費者の間でも遺伝子組換え食品に対する警戒心が高まっていた。しかし現場の農家では、病害虫や雑草の除去に使う農薬に対して強い抵抗力を持つ遺伝子組換え種子に対する依存と期待は相変わらず高いままである。

 加えて、遺伝子組換え作物の場合には将来的に人間の健康にどのような問題がもたらされるか十分な検証が行なわれていない、という事実を忘れるわけにはいかないだろう。遺伝子組換えにより、かつて存在しなかったタンパク質が合成されるとか、タンパク質そのものの形状が変化する事例も明らかにされている。

 06年4月、インドでは殺虫作用を組み込んだ遺伝子組換え綿花を1週間食べ続けた羊の25%が死亡したとの報告があった。この「BTコットン」と呼ばれる遺伝子組換え綿花はモンサントが開発したものであるが、アメリカで使用が始まって以来、何万エーカーもの農地で植物の芽が奇形になるなど、想定外の問題が繰り返し発生したいわくつきの種子。そのためモンサントでは、農家への補償に数100万ドルを費やしたほどである。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(5)
未来トレンド分析シリーズ2011年5月 2日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 実はインドでは、2008年から09年にかけて遺伝子組換え作物によって前代未聞の農民の大量自殺という事件が引き起こされた。現地を訪れたイギリスのチャールズ皇太子はあまりのことに、世界に向けて遺伝子組換え作物の危険性を訴えたほどである。

 どういうことかといえば、インドにおいては穀物の収穫量が飛躍的に伸びるとの宣伝文句につられ、従来型の種子を使わず、遺伝子組換え種子を導入する農家が急速に増えていたのである。すでに数100万人の農民たちが小麦やコメ、トウモロコシなどさまざまな作物に遺伝子組換えの種子を使うようになっている。

 問題はこうした遺伝子組換えの種子は従来の種子と比べ値段が高く、場合によっては100倍以上もする。しかし、病害虫に強く収穫量も増えるために十分投資効果があるといわれ、多くの農家が借金をして、これらの種子を購入するようになった。先に述べたBTコットンなどもアメリカで異常な問題が発生していることが分かっていながら、モンサントはインドに対して大量に売り込みを図っていた。

 その結果、ニューデリーやムンバイという大都市周辺のみならず、ナグプールなど中央インドにおいても遺伝子組換え作物は急速に利用が進んだ。「魔法の種子」というキャッチコピーが受けたせいで、次々と農家は将来の高収入を期待し借金を重ねたのである。インドでは瞬く間に、遺伝子組換え作物の農地は1,700万エーカーに急拡大を遂げた。

 ところが、期待したように実を結ばない種子が相次いだのである。従来型の種子であれば、翌年再度植え付けを行なえば、実を結ぶ可能性はあったのだが、遺伝子組換え種子の場合には実を結ぶのは1回だけである。毎年新たに種子を買い続けなければならないように、種子の構造を遺伝子レベルで操作してあるからだ。宣伝通りに収穫量が上がれば農家も借金返済に支障はなかったと思われるが、遺伝子組換え作物の育て方は意外に難しい。病害虫や干ばつに強いと言われているが、化学肥料を大量に投入しなければ、期待されたような収穫が得られないという側面もある。結果的には2008年、多くのインドの農民たちはかつてない異常事態に直面してしまった。

 すでに12万5,000人もの農民たちが自殺したと報道されている。借金とりに追い立てられ、あるいはようやく実を結んだ穀物を試しに家族に食べさせたところ病気になってしまうというような事態が原因で、自ら命を絶つという悲惨な状態に陥ってしまった。この事態を間近に見たチャールズ皇太子は、すぐさま声明を発表した。曰く「遺伝子組換え作物は道義上の観点からも問題がある。世界各地で導入が進んでいるが、一度立ち止まって見直す必要があるだろう」 (Daily Mail Online, November 3, 2008) 。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(6)
未来トレンド分析シリーズ2011年5月 6日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 インド農務省においても、毎月1,000人以上もの農民が自殺を余儀なくされている状況は国家緊急事態であると受け止め、対策に乗り出している。このような悲劇を目の当たりにしたチャールズ皇太子は、その足で日本を訪問した。滞在中、同皇太子は遺伝子組換え作物の危険性について注意を喚起する発言を繰り返し行なったものの、日本のメディアはその発言を一言も報道することはなかった。

 実は、チャールズ皇太子が日本を訪問した時期は、アメリカ政府が毎年日本に対して提出する「年次改革要望書」が届いた時期と重なったのである。アメリカ政府が日本に突きつけた2008年度の要望書を見ると、アメリカ製の遺伝子組換え作物に対する日本市場の閉鎖性が問題視されている。また、日本の消費者が遺伝子組換え食品の安全性に疑問を抱いていることにも触れ、これは科学技術に対する理解が乏しいからであるとし、日本政府による日本の消費者に対する啓もう活動を強化するよう求めていた。この主張は現在もTPPの協議に継続されている。

 要は、アメリカ製の遺伝子組換え作物や食品をこれまで以上に買うように圧力をかけてきたのである。まさにその要望書が届いたのと機を同じくするようにチャールズ皇太子の警告が発せられた。アメリカ政府にとっては最悪のタイミングであろう。日本のメディアも本来であれば、アメリカの要望やイギリスのチャールズ皇太子の警告をともに紹介し、どちらが日本の消費者のためになるものか比較検討する材料を提供すべきであった。

 ところが、日本のメディアは結局どちらに関しても正面から取り上げることを避けたのである。これではメディアとしての責任も役割も自ら放棄したに等しい。現在日本では、遺伝子組換え作物を原料とする食品の原材料表示について、消極的な対応しか見られない。EUの表示と比べれば、日本の表示義務は存在していないも同然である。

 具体的にいえば、表示義務の範囲、あるいは遺伝子組換え作物の混入の許容率において日本とヨーロッパでは大きな違いがある。EUではすべての遺伝子組換え原料に表示の義務が課せられている。添加物であっても表示の必要があり、また使用料の多少にかかわらず、遺伝子組換え作物由来の原料表示を義務づける徹底ぶりだ。

 しかし、日本では原材料の上位3品目のみについて表示すればよいことになっている。しかも上位3品目であっても、その重量が全体の5%以下であれば、表示する義務がないとされており、"ザル法"と言っても過言ではない。


世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(7)
未来トレンド分析シリーズ2011年5月 9日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 醤油や食用油など、DNAやタンパク質の検出しにくいものについても、EUでは表示することが義務づけられている。しかし日本の場合には、トレーサビリティー法(米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)が導入されていないことから、醤油や食用油に関しても遺伝子組換え作物由来の原料であるかどうか確認できないとし、表示の義務は課せられていない。

 また、混入の許容率に関しては、EUでは0.9%以上の混入が確認されれば遺伝子組換え原料使用と明示しなければならない。しかし、日本の場合は5%までの混入を容認しているため、5%未満であれば、「この商品は遺伝子組換えではありません」と表示することが許されているのである。

 ことほど左様に、ヨーロッパと日本では遺伝子組換え作物や原材料に関する危機意識や情報開示のあり方に大きな違いが見られる。さらに言えば、外食産業における表示や情報提供の義務にも大差がある。EUでは、レストランや病院、あるいは学校給食など、あらゆる外食産業において遺伝子組換え作物が使われている場合には、その表示の義務が課せられている。他方、日本では外食産業においてはまったく表示や情報提供の義務がないのである。

 もちろん、家畜用の飼料や乳製品をはじめとする畜産品についても、ヨーロッパでは表示義務があるのに対し、我が国ではまったくそのような表示義務がないときている。これほど食の安全について問題が多発していながら、日本人は未だに安全はただで手に入ると思い込んでいるようだ。

 こうした状況のもとで、なし崩し的に遺伝子組換え作物が日本でも一般的に普及することには断固、反対せざるを得ない。とはいえ、すでに食糧の自給率がカロリーベースで40%近くまで落ち込んでいる日本は、遺伝子組換え食品に関しては世界最大の輸入国となっている。豆腐、醤油、油、スナック菓子、大豆タンパク、コーンスターチなど、日常的にわれわれの食生活に入り込んでいることは間違いない。また、家畜用の飼料に関しては、わが国はほぼ100%を輸入に頼っている。

 となれば、牛、豚、鶏など国産の食肉そのものも遺伝子組換え食品と言わざるを得ない。いくら遺伝子組換え作物や食品を食べないようにしようと思っても、現在の日本の食糧事情では不可能ということになる。国内の食糧自給体制を構築するしか、遺伝子組換え作物や食品のリスクから逃れる方法はないといえよう。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(8)
未来トレンド分析シリーズ2011年5月10日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 ところで、アメリカを代表するアグリビジネスは、そんなことにはお構いなしで新たな「種子戦争」に心血を注いでいるようだ。その主戦場は、現在も戦闘状況が継続しているイラクやアフガニスタン。もっと直截に言えば、イラクやアフガニスタンの農民が育ててきた穀物や野菜の種子を使えないようにし、モンサントが開発した種子にすべて置き換えさせようとする試みを進めているわけだ。

 実はアメリカは軍事戦略の一環として、これら諸国の農業の在り方を根底から変えようとしている。イラクでもアフガニスタンでも法律を変えさせ、アメリカが提供する種子を使わざるを得ない状況を作り出したのである。言い換えれば、伝統的な土着の種子を一掃し、アメリカの種子メーカーが開発した遺伝子組換え作物を全面的に導入する計画が静かに進行中といえよう。

 たとえば、アフガニスタンのケース。アメリカ軍の特殊部隊は民生部門を立ち上げ、アフガニスタンの市民や農民に対する職業訓練や雇用の機会を提供している。アフガニスタンの農民の間では芥子(けし)の実の栽培が盛んであった。いわゆる麻薬の原料だ。しかし、これは回り回ってアメリカに持ち込まれ、社会を内部から腐らせる原因にもなっている。そこでアメリカ軍は、アフガニスタンにおける芥子の実の栽培をやめさせるためにも、穀物栽培に転換するように教育や必要な援助を行なうことになったのである。

 アメリカ軍はそうした目的のために各地に農業訓練センターを立ち上げた。実際には米国国際援助庁(USAID)がこうした施設の運営にあたっている。とは言え、日常的な業務はアメリカのコンサル会社ケモニクスが担当。同社はUSAIDを主たる顧客として、世界各地でインフラ整備や農業関連プロジェクトを請け負ってきた。同社のドゥレイマン社長は「我々はアフガニスタンにおいて農業ルネッサンスをもたらしつつある」と胸を張る。

 あまり知られていないが、アフガニスタンは30年前には農業の輸出国であった。アメリカ軍はアフガニスタンへの侵攻に際し、「2007年までには同国が再び食糧に関して自給自足のできる体制に引き上げる」とうたっていた。しかし、今日の状況を見る限り、食糧の自給自足は「絵に描いた餅」に終わっている。

 その背景には戦争後の復興計画が進んではいるものの、実際にその恩恵を被っているのは地元の農民や市民ではなく、ケモニクスに代表されるアメリカの援助ビジネスに携わっている企業が中心となっているからだ。いずれにせよ、アフガニスタンの農業を復興させるために最も重要な資源は種子である。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(9)
未来トレンド分析シリーズ2011年5月11日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 2002年、アメリカとオーストラリア政府が資金を提供し、34の組織が協力し「国際農業リサーチ研究グループ」が誕生した。そしてこのグループの指導を受けるかたちで「アフガニスタンの農業復興のための未来の収穫コンソーシアム」と呼ばれる組織も旗揚げした。何と、その主たる活動はアフガニスタンの農民たちが長年にわたり育ててきた穀物の種子を捨てさせ、新たにアメリカが開発した種子を広めることであった。

 アメリカもヨーロッパ各国政府もアフガニスタンにおいて、自国に有利な新たな種子産業を育成しようと深慮遠謀を企てている。最終的にアメリカが勝利を収め、外国の企業やアグリビジネスに門戸が開放される際に、最も有利な条件でこの新興市場を押さえようと目論んでいることは間違いない。

 その目的を達成するため、アメリカ政府はわざわざ法律の改正まで行ない、アフガニスタンの農民たちが自分たちの種を保存し、次の年に植え付けることができないようにしたのである。2008年10月、国連食糧農業機関が音頭をとり、アフガニスタンの首都カブールでは「アフガニスタン全国種子協会」がお目見えした。まさにアメリカの目指す、自国製の種子をアフガニスタンで長期にわたり広めようとする計画の本格的スタートである。

 イラクにおける情勢も極めて似通っている。イラクは「文明のゆりかご」と呼ばれるほどで農業に関しても数千年の長い歴史を誇ってきた。しかし、イラク戦争が終わり米軍による占領統治が続くなかで、今やイラクはアメリカの小麦や米産業にとっては最大のお得意先となっている。アメリカ政府はイラクを占領することにより、石油だけではなく巨大な市場を手に入れたと言っても過言ではない。15億ドルに達する食糧マーケットがアメリカの企業に開放されたからである。

 短期間でイラクの農業や食糧流通システムはアメリカに全面的に依存するようになってしまった。米軍は穀物メジャー、カーギルの役員経験を持つアムスタッズ氏を引き抜き、米軍の対イラク農業支援事業の責任者に据えた。アフガニスタンで行なったのと同じように、米軍はイラクにおいても同国の法律を改正させ、アメリカからの輸入品、とくに食糧に関してアメリカ依存を強める政策を徹底的に実行したのである。

 その結果、イラクにおいては自前の農業生産や食糧ビジネスはほぼ壊滅状態に陥ってしまった。そうしたうえで、米軍はアメリカ産の種子を積極的に広めているわけだ。本来、イラクの農民たちが豊かな土壌や長い農業経験に基づき大切に伝承してきた種子を、すべて捨てさせたのである。イラクにとって小麦は最大の食糧源であったが、今ではアメリカの種子メーカーが提供する種子やアメリカの穀物会社から必要な小麦やトウモロコシなどを大量に輸入せざるを得ない状況に立ち至っている。

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(10)
未来トレンド分析シリーズ2011年5月12日 07:00 参議院議員 浜田和幸
 アメリカ政府は2006年以降、3億4,300万ドルを投入し、イラクに対する2つの新たな農業支援策を開始した。1つは「アグリビジネス育成計画」、もう1つは「民間セクター育成並びに雇用増進計画」である。いずれもUSAIDが始めたものだが、実際に日々の業務を推進するのはアメリカのルイス・バーガー・グループ。同社は世界最大規模を誇るインフラ整備や開発を専門とするコンサル会社である。

 これら2つのプログラムを通じて、イラクにおける新たな食糧産業に対する投資を加速させようと考えているようだ。しかも注目すべき動きは、こうした農業や職業訓練の計画がすべて軍事作戦のなかに組み込まれていることである。アメリカ政府はイラク復興支援の名目で2億5,000万ドルの予算を計上し、580を超える農業関連プロジェクトを展開している。問題はこれらのプロジェクトの97%以上が現地の米軍司令本部によって決済が行なわれていること。表向きは農業支援を通じての復興事業とされているが、実際に資金の流れやプロジェクトの進行状況を確認する立場にあるのは米軍なのである。

 オバマ大統領は選挙中の公約として、「大統領就任以降、16か月以内に米軍をイラクから撤退させる」と述べていた。しかし、国防総省では米軍の任務を農業支援にすり替えることで、この公約を骨抜きにする工作を実行しているのである。すでに国防総省では、2011年以降もイラクには7万人を超える米兵を駐留させる新たな計画を作成している。注目すべきは、これらの米軍は農業関連計画に従事することになっていること。非軍事的な目的を遂行するとのカモフラージュによって米軍の長期的な駐留を可能にしようというわけだ。オバマ大統領もそうした米軍の農業支援計画への関与を大枠で認めている。

 これこそ米軍の新たな海外戦略のソフトパワー化と言えよう。アメリカ政府は外交官やUSAIDの援助専門家を海外に多数派遣しているが、そうした人員にかかる費用より30倍以上もの資金を軍事目的に費やしている。しかも巧妙なカモフラージュにより、国防総省自体がアメリカの海外援助の20%以上をコントロールするまでになった。要はアメリカの軍事戦略に食糧農業政策が完全に飲み込まれているわけである。そのなかでとくに重要な役割を担っているのがアメリカの遺伝子組換え(GM)種子というわけだ。

 こうしたアメリカの食糧軍事一体化戦略が広がれば、世界の穀物市場はアメリカの思うように牛耳られることになりかねない。なぜなら、こうしたアメリカ製GM種子はイラク、アフガニスタンに留まらず世界中に売り込まれており、日本もその例外ではないからだ。

 冒頭に紹介したUG99についても、かつて米軍が生物化学兵器として実験を行なっていたとの情報もあり、自作自演との見方も出ている。アグリビジネスや投機筋の動きも連動しているようだ。ネパールやバングラデッシュでの導入が始まった新品種の小麦も実は、アメリカのUSAIDが普及の後押しを進めているもの。金融危機の損失を取り戻そうとするかのように、アメリカのスマートパワー集団が種子を大儲けのタネにすべく本格的に動き出したといえよう。

 その影響は日本にも静かな津波として押し寄せようとしている。震災復興支援とTPPを絡めようとするアメリカの強かな食糧戦略の真意を見極め、日本の国益を守る覚悟をもって貿易交渉に臨むことが必要だ。

http://www.data-max.co.jp/2011/04/post_14610.html
 

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コメント
 
01. 2011年8月30日 16:02:15: 7oRjaevU9M
日本へも放射能を帯びた食料に対する過度な恐怖心を植え付けて、米帝は大儲けを企んでいる。
放射能への正しい理解が必要だ。

(ご参考)
日本原子力文化振興財団
原子力文化 2011年8月号 特集〈インタビュー1〉
放射能汚染と食品  
―放射性物質は厳しく管理されている―
日本学術会議・副会長
唐木英明氏
http://www.jaero.or.jp/data/03syuppan/genshiryokubunka2011/tokushu201108/1108interview1.htm


02. 2011年8月30日 16:08:51: C3ndSoNipJ
特定の害虫?農薬?に耐性を持つ遺伝子組み換え作物。この方法で作物を育てようとするとメダカもたにしも住めない。野田泥鰌も住めない。

さらに生物の行動を決める一番の優先事項は自分の子孫を残すことである(全ての動植物はこの方向で動く、オスの行動もメスの選択性もこれを裏ずける)この能力が遺伝子組み換え作物にはなく一代限りである。このことは
・種を特定の企業から買わざるを得ない、それが永遠に続く。
・伝統的な農業のやり方が破壊される。
・新たな病虫害が起こったとき、対処方法があるとは限らない。
ことである。

農業がモンサント、カーギル等のアグリビジネス世界企業に支配されるということである。TPPに突き進むということはその方向に進むことなのだ。


03. 2011年8月30日 21:59:46: ksDUiOB5XY
TPP関係の情報をありがとうございます。
生態系破壊はそこまでひどく『人間を殺す』、TPはP恐ろしい条約ですね。
米企業は契約相手国に『種子を採る農業を許さない』で、やがてミツバチや虫が花粉を運ばず、人間の『思い上がり』が生態系破壊。虫も食わない農産品を人が口に入れて美味しいはずがない。遺伝子操作の毒野菜は次々と発展途上国の農民を死に追いやり、国家を食い殺すのが見えます。

アフガンで伊藤和也さんが砂漠に水を引き、菜の花が咲き乱れる畑に少女が笑顔で写る時になって、彼は射殺された。地元族長が結婚相手を世話するから永住してほしいと言う程だった。彼の農業技術が米に憎まれたと思う。

トルコの路傍のカウンター、コップに挿した赤と緑のニンジンと胡瓜を、夫は人参嫌いでも全部食べた。今も味が懐かしいと言うが、日本の人参は『種をとれない』から不味いのか?日本の国会議員はTPP締結し、自分は高級野菜だけを食べるのですか?
中央アジア砂漠の棺から出された『若い美人のミイラ』は、フェルトのポーチに『小麦の種』を持っていた写真。『種』を死出の旅路に(飢えないように)と入れた何千年以前から、人類が連綿と受け継ぐ『宝物=種』を、日本人は米に屈し捨てるのですか?国会議員の誰が腑抜けか、見分ける『良い踏み絵』にし投票します。


04. 2011年8月30日 23:35:03: EVskgte9f6
あのね。

かつてサトウキビが数%減産しただけで
砂糖市場は2倍にも跳ね上がった。

これは当時のソ連とアメリカの投機筋が引き起こしたこと。

金の亡者はどこまでいっても世界の迷惑でしかない。

アメリカだけと思うな。
そもそもモンサントという名前はアメリカ由来か?


05. 2011年8月31日 17:27:45: Y3zbOZUhPQ
「小麦の茎に感染する新たな菌が生まれ」
とありますが、誰かが実験室で作り出して
利用しているのでは?

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