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http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=aTK.0cDR5ppo
ジョブズ氏辞任に騒然、菅首相退陣に冷淡な理由−ペセック
8月29日(ブルームバーグ):首相退任が一企業の最高経営責任者(CEO)辞任よりも小さなニュースにしかならないとしたら、それは何かがおかしいということだろう。菅直人首相とアップルのスティーブ・ジョブズ氏がまさにそのケースだ。
ジョブズ氏がアップルの最高経営責任者(CEO)を辞任するという発表に、市場はすぐさま反応した。一方、菅首相の退陣表明にはほとんど波も立たない。ジョブズ氏がアップルCEOに返り咲いた1997年から今までに、日本では9人の首相が登板し、降板した。来週には10人目の出番だ。
一企業のトップと世界第3の経済大国の首脳を比べるのは奇妙かもしれない。それにしても、アップルがどうなるかに大騒ぎする国際社会が菅首相退陣には見向きもしない現状は、日本にとって何を意味するのだろう。
それは、世界が日本経済を無視し始めているということだ。アジアで最大の市場の1つであることや、その通貨が域内で最も国際化されていることは問題ではない。他の場所でより良いリターンを得られる投資家たちにとって、日本はあまりにも機能不全だ。日本の格下げが今後も続くとみられるのはこういうわけだ。
さまざまな疑問があるが中でも今最も重要なのは、日本は政治的に不安定なのか、それとも安定し過ぎているのかということだ。
難攻不落
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは先週日本の格付けを「Aa3」に1段階引き下げた際、政治的不安定を指摘した。しかし、日本の問題はむしろ、次々と入れ替わる首相たちのビジョンや政策を全て跳ね返す難攻不落の構造なのだ。
日本の国を動かしているのは実は首相ではない。新しい首相もすぐにこの歯がゆい事実に気付くことだろう。菅首相は3月11日の東日本大震災後のリーダーシップに対する批判から退任に追い込まれたということになっているが、変化をもたらそうと試みる政治家をお払い箱にする日本の政治の回転扉によって押し出されたというのが真実だ。
市民運動家出身の菅首相は事実上日本を支配している階級である官僚との闘いを掲げて就任した。決定権を官僚の手から取り戻す政治主導を確立するとともに、官僚たちの特権を廃し、監督対象の企業や公益会社に退職後に天下るという腐敗した習慣を撤廃することを望んだ。福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の原因はそのような癒着にあったと言えるだろう。
自動操縦
名前も顔もない集団が日本を支配し、あらゆる変化に抵抗している。数十年かけて築き上げた領有権を脅かすような変化は断固として阻止する。この結果、首相が手動操縦に切り替えようとしても官僚制度による自動操縦が続くことになる。
菅政権も発足当初には「事業仕分け」で官僚を震え上がらせたが、取り組みはすぐにしぼんだ。福島原発の事故を受けて、強大な原子力発電業界に切り込んだことも政権の寿命を縮めた。
日本の政治の回転扉の回り方はますます目まぐるしくなっている。次期首相が指名された時点で、最近の首相の平均在任期間は1年を切るだろう。政治主導を掲げた民主党をあざ笑う官僚たちの高笑いが聞こえそうだ。
日本は安全で識字率が高く平均寿命も長い。比較的格差の少ない社会・経済構造を持ち、国として機能している。しかし、日本の周囲で世界は急速に変わりつつあり、経済活性化に日本が真剣になるのを待っていてはくれない。
競争力
日本はゼロ金利と世界最大級の公的債務によるカンフル注射なしに成長することを学ばなければならない。高齢化に備えて移民を受け入れることや、雇用創造につながる起業を促す税制への改革、女性の能力活用も必要だ。競争力を高めなければならない。
これらは現在、始まってもいない。官僚の下で変化は生じないのだから、迷路のような見えにくい日本の権力構造を破壊するビジョンと勇気、粘り強さを持ったリーダーが必要だ。数カ月ごとに首相の首をすげ替えていては実現できない。
ジョブズ氏の辞任が菅首相の退任より重要視されたのはこういうわけだ。アップルには良かれ悪しかれ変化が起ころうとしていることを、投資家は知っている。日本について同じことは言えない。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
記事に関する記者への問い合わせ先:William Pesek in Tokyo at wpesek@bloomberg.net
記事に関する記者への問い合わせ先:James Greiff at jgreiff@bloomberg.net
更新日時: 2011/08/29 07:00 JST
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