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小沢を争点化しようとする日本記者クラブの思考停止
http://ameblo.jp/aratakyo/day-20110828.html
2011年08月28日(日) 永田町異聞
「脱」か「親」か、相変わらず小沢が争点では情けないと言いながら、この対立を煽っているのが新聞、テレビといった大マスコミだ。
つまらぬ政局報道にうつつを抜かすことをやめないかぎり、まともな政策論議など展開されるはずがない。
5人の民主党代表選候補者が顔をそろえた日本記者クラブの共同記者会見で、テレビでおなじみのベテラン記者が長々と時間を割いて質問したのは、小沢一郎氏の党員資格停止を解除するかどうかといったレベルの話だった。
この国で、政策論議が盛り上がるためには、記者が政策について突っ込んだ質問をし、通りいっぺんではない答えを引き出し、それを詳しく、わかりやすく、そして複眼的に吟味した記事やニュースにして伝えるほか手だてはない。
さて、この共同記者会見。ひょっとしたら世間が大記者と信じているかもしれない面々の質問にしばし耳を傾けてみよう。
質問者は日本記者クラブの企画委員である読売の橋本五郎氏や朝日の星浩氏ら4人だ。
最初に質問した橋本五郎氏が、民主党政権の体たらくを責めたてたあと、小沢氏が支持を明らかにしたという海江田氏に矛先を向けた。
「党員資格停止中の方が大きな影響力を持っている。異様な光景だ。どう考えているのか」
橋本氏に続き、他のベテラン記者たちも海江田氏に対し、小沢関連の質問を集中的にぶつけた。たとえばこんなのがあった。
「小沢さんは海江田さんを支持するということだが、小沢さんは数をバックに神輿をかつぐ人だ。参院の輿石氏、西岡氏を担ごうとして断られた。総理大臣になるにあたって。あなたは第三の神輿でいいのか」
筆者にはこの質問の意図がよくわからない。海江田氏がどう答えていいか戸惑うのはあたりまえだ。
星氏はこのテーマにことのほか熱心だった。
「小沢氏の党員資格停止を即座に解除するつもりか、場合によっては幹事長にする可能性を排除しないのか」「小沢さんは秘書三人が逮捕起訴され公判中で、本人は強制起訴された。いまだに国会での説明はない。どうお考えか」「一般の公務員は起訴されたら休職する。小沢さんもそうあるべきだが、どう思うか」
これでは、若い記者たちの質問内容が貧困になるのもやむを得まい。今の日本で、何が政治の優先課題なのかが分かっていない。
そもそも小沢氏の元秘書三人については、東京地検特捜部の供述調書の多くを、東京地裁が証拠価値のないものと判定しており、無罪になる可能性が高まっている。彼らが無罪であれば、共謀を問われた小沢氏も無罪となって当り前である。
そんな状況を知りながら、この国難のおりに、いまだに「小沢問題」を引きずろうとするこの国の大ジャーナリズムの姿勢には暗澹たる思いを禁じ得ない。
政局記者ばかりが幅を利かすこの国のマスコミ界の惨憺たる状況について、筆者は2009年12月22日の当ブログに「フルオープン小沢会見にみる政策記者の不在」と題する記事を書いた。小沢氏が幹事長だったころだ。それを以下に転載する。
◇◇◇
小沢幹事長というと、マスコミ嫌いのイメージが強いが、その週一度の定例記者会見は、記者クラブ加盟社のみならず、全てのメディアに開放されている。
「別に好きじゃないけど、フルオープンにやるべきだと思っている。今後もその方針を変える考えはありません」
昨日の会見でも、フリーランス、外国人ジャーナリストがふつうに質問していた。記者クラブ加盟社しか相手にしない自民党では見られない光景だ。
もちろん、ネットで動画が配信されており、リアルタイムでも、録画でも見ることができる。
こういう時代になってくると、質問内容も国民に丸わかりだから、記者たるもの、ほんとうに大変だ。
「小沢幹事長が前面に出ることによって、女性のアレルギーが起こる懸念がないかということについてのお考えを」(朝日新聞の記者)
貴重な時間を割くほどの質問とは思えないが、女性に嫌われている小沢氏が目立つのは選挙にマイナスなのでは、という意味のようだ。
小沢氏が憮然として「僕がオモテに出るとはどういうこと?」と聞き返すと、「政府に要望を出しましたね」。
これに対して小沢氏は「幹事長がみんなの要望を政府に伝えなきゃ職務怠慢でしょうが」。
女性のアレルギーについては「それはしょうがないね、不徳のいたすところだね」。
こういった不毛な言葉のやり取りでいたずらに時が過ぎてゆく。
不思議なのは、党から政府に要望した政策の中身についての質問がいっさい無いということだ。
「マニフェストの変更を盛り込んだ政府への要請について、幹事長が説明する機会を設けられなかった理由をお願いします」(TBSの記者)
政策変更の説明の場がないことを問題視するだけで、なぜか政策の中身には斬り込まない。
その場で聞けばいいではないか。短時間でも、ズバリと核心をつくのが記者の腕ではないか。
政策を官僚に丸投げし、党内の権力争いに明け暮れてきた長い自民党政権の間に、この国では「政局記者」はゴロゴロ育っても、「政策記者」がほとんど不在なのである。
敏腕といわれるベテラン記者や、マスコミ出身の評論家、学者のほとんどは、自民党の有力政治家に食い込んで、政局についての本音や、暗躍ぶりをさぐるのが巧みだったわけで、政策に詳しいわけではなかった。
マニフェスト選挙、政治主導で、政治家に政策立案能力が求められるようになったいま、記者の取材のありようも変わっていくのが自然である。
ただ「闇将軍に支配されるシロウト政権」とか「小沢独裁」とかいう、ワンパターンの報道では、いずれ読者、視聴者に飽きられるだろう。
◇◇◇
以上、若い記者を念頭においた記事だったが、模範となるべき大先輩記者の思考停止のほうが深刻かもしれない。
日本記者クラブの共同会見は、若い記者が育たない原因をベテラン記者がきっちり示してくれたという点で、意義深いものであった。一方、そのお粗末な質問内容は、誰が総理にふさわしいかを見極めたい国民にとって無意味なものでもあった。
活発な政策論議が行われていないことを嘆く前に、マスコミ自体が政策を重視する報道姿勢に転換し、まともな質問ができるよう記者を鍛え上げてゆくことが肝心なのではないか。
新 恭 (ツイッターアカウント:aratakyo)
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