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『週間ポスト』9/2日号
平成23年8月22日(月)発売
小学館 通知
「小沢無罪の前に菅を降ろせ」と焦りまくった民自公 (表紙)
政界最深層レポート
「野田本命」「大連立」報道の大謀略を暴く!
「脱小沢」暗黒代表選全内幕
グダグダ政局の真相がスカッとわかる
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新聞・テレビの報道によると、野田某という目立たない政治家が次期首相最有力で、民主党代表選の焦点は自公との「大連立」だそうだ。そんなバカな!
もう政・官・報の談合で決まる無能総理はたくさんだ。国民を本当の政治から遠ざける嘘を一つずつ暴いていこう。
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「官房機密費を使い切りたい」
次の政権は、大震災からの復興と、今なお放射能漏れが続く原発事故の収束が最優先の課題であることは論を待たない。
にもかかわらず、民主党と自民党の執布部は手を取り合って野田佳彦・財務相の擁立に動いた。
新聞・テレビは一斉に民主党代表選の「本命候補」だと喧伝している。
これといった政治的実績もないどころか、暴力団関連企業からの疑惑献金があり、かつては「永田メール騒動」を主導して党の存続を危うくし、現在はというと、官僚のいいなりに増税を進める急先鋒である。
「次の総理大臣に誰がふさわしいと思うか」という大メディアの世論調査でさえ、4%(読売)、1・7%(NHK)と国民にとっては「いったい誰?」状態だ。しかし、読売は〈野田氏 民主 代表選出馬へ〉、朝日は〈野田氏 代表選出馬へ〉といずれも1面で報じ、他の候補の出馬表明はべ夕記事という特別扱い≠ネのだ。
メディアと民主、自民の両執行部を野田支援に駆り立てたのは、小沢一郎・元民主党代表の復権の動きだった。本誌は前号で『秘書無罪で小沢総理』と題し、菅首相が8月末まで退陣表明をせず、代表選が小沢氏の秘書公判判決(9月26日)の後に延びた場合、小沢氏自身の公判も即時無罪になって代表選に出馬できる可能性があることを指摘した。
本誌前号発売日の翌日(8月9日)、大新聞は「野田氏出馬」を大きく報じ、政界は小沢出馬阻止のための菅おろし≠ノ動く。
「菅総理の退陣をこれ以上延ばすわけにはいかない」
民主、自民、公明3党の幹事長会談で、自民党の石原伸晃・幹事長はそう語って民主党マニフェスト見直しの3党確認文書をまとめ、首相の退陣条件である特例公債法案などを急転直下、今国会で成立させることで合意した。
8月10日には本誌の指摘通り、小沢氏の初公判の日程が「10月6日」と早まることが決定したが、その前に菅首相が国会で法案が成立すれば退陣することを表明。その日、反小沢派の菅側近は勝ち誇ったようにこう語った。
「もっと粘るつもりだった総理は不本意だろうけど、これで『週刊ポスト』が報じた小沢出馬のシナリオは消えたね」
まあいわせておこう。そんなことより見逃してはならないのは、この反国民政権の火事場泥棒≠ナある。
内閣が代わる際、常に話題に上るのが官房機密費の処理だ。機密費は毎月1億円ずつ現金で官邸の金庫に収められ、内閣交代時には、官房長官が使い切り、金庫を空にして出ていくのが政界の不文律だ。昨年秋の代表選では、現職総理の菅陣営が多額の機密費を流用して多数派工作やメディア工作を展開したことを本誌は報じた。
今回の代表選でも同様に軍資金≠ェ飛び交っている。
現在、官房機密費を握っているのは党内で野田氏と同盟を組む枝野幸男・官房長官や仙谷由人・官房副長官ら凌雲会(前原グループ)である。
菅首相が退陣を明言してからほどなく、民主党の広報戦略にかかわる広告代理店関係者に、官邸スタッフの一人から連絡が入ったという。
「菅総理が辞める前に、いまある機密費を使い切りたい。こちらに有利な世論を喚起できるようないいアイデアを出して欲しい」
(写真)「小沢」を意識している面々(左上から時計回りに、野田氏、玄葉光一郎氏、仙谷氏、菅氏、馬淵氏)
機密費の支出権を持つ枝野長官ら官邸中枢が、自分たちに都合がいい新首相をつくるため、メディア工作に機密費を投入する相談だったというのである。
それと軌を一にして、大新聞には連日、「野田本命」の記事が躍り始めた。代表選から小沢氏を排除せよという論調には、ますますエンジンがかかった。
〈菅、小沢両氏に鳩山由紀夫前首相のトロイカは今回、行動を慎むべきだ〉(11日朝日社説)
〈近く刑事裁判の被告席に座る小沢が、新首相決定の主導権を握るとすれば、異常なことである〉 (13日毎日『近間遠見』)
── 昨年秋の代表選そっくりの脱小沢キャンペーンが繰り返されている。
その結果、今回の民主党代表選は、「総理大臣を野党が選ぶ」──という議院内閣制を逸脱した前代未聞の手続きで進められようとしている。
本命≠フ野田氏は自民、公明に「救国連立」を呼びかけた。大メディアも、〈自民、公明両党は民主党代表選候補の政策や公約を見極め、どの候補なら連携できるのか、表明することを検討してはどうか〉(12日読売社説)と、野党が与党の党首を逆指名≠キることを提案してバックアップしている。
マニフェスト叩きの真意
さらに自民党と新聞・テレビは、政権交代の原動力となった民主党のマニフェスト「子ども手当」「高校授業料無償化」「高速道路無料化」「農業戸別所得補償」をバラマキ4Kと呼んで批判。あたかもマニフェストのせいで震災復興が遅れているかのように報じ、国民に政権交代前に戻そう≠ニ暗に呼びかけている。
しかし、どんなに与野党執行部やメディアが偽の世論を作ろうと腐心しても、民主党支持者の多くが「政権交代の原点に戻れ」と訴えていることは間違いない。
自公時代の所得制限のある児童手当は、金持ちから低所得世帯への「所得の再分配」政策だった。一方、民主党は所得制限をなくし、中学生以下の子どもに一律支給することで「社会全体で子育てする」という全く新しい理念を打ち出した。
自民、メディア、そして霞が閑が攻撃する4政策には共通する理念がある。自公時代の農業補助金のように役所が天下り団体を通じて慈意的に業界に金を配分する間接給付から。国民に直接給付することで役人の権益を縮小し、特定集団の既得権を破壊して「公正な社会」をつくるという考え方だ。高速道路や教育に費やされる税金も、そのメリットを等しく国民が享受しようというのが本来のマニフェストだった。
だが、そうした既得権の破壊は、その仕組みを作り上げた自民党や公明党、霞が関、大メディアには脅威なのだ。
民主党マニフェスト策定のブレーンの1人、山崎養世・成長戦略組合研究所理事長が指摘する。
「自公政権は構造的に地方を貧しくする政策をとってきた。高速料金ひとつを例にとっても首都高は安く、地方は高い。だから民主党はまず高速無料化で大都市と地方の格差をなくし、地域が自立して豊かになる社会をつくることを国作りの目標にした。地域が潤えば、地域の人口も増える。国民益にもなる。ところが、政治家、官僚、マスゴミが、無料化したらJRが困る、おれの業界が困るからとよってたかって高速無料化をつぶした」
民主党の仙谷−岡田執行部はそれら利権派に屈し、子ども手当に所得制限を設けて児童手当に戻すといったマニフェスト撤回の3党合意を結んだ。「増税はしない」という公約も転換して霞が関が望む増税に舵を切った。その執行部派の御輿(みこし)が野田氏である。
執行部支持派のある東京都区議は、堂々とこういってのけた。
「もうマニフェストはなかったことになっている。子ども手当の見直しも、財源がないから仕方がないと国民は理解している」
それに対して、小沢氏を含む反執行部派は「公約は守るべき」とマニフェスト撤回を厳しく批判しており、代表選の最大の争点にしようとしている。
木内孝胤・代議士は地元有権者の怒りを肌で感じている。
「地元の支持者はマニフェストが間違っていたとは思っていません。話を聞くと『子ども手当をなぜやめるんだ』『政策の旗を降ろすのか』『増税の前に徹底的に財源探しをしたのか』という失望の声です。同僚議員たちもそれをひしひしと感じている」
この動きと主張がメディアで紹介されることは、ほとんどない(当然だ)。
それどころか読売は社説でこう書いた。
〈小沢一郎元代表や鳩山前首相は政権公約の見直しの是非を争点にしようとしているが、それは許されない〉(12日)
「小沢の意中の人」の探り合い
大メディアが報じる代表選の情勢も大嘘である。代表選の中心にいるのは、実は小沢氏だ。
初公判の日程が決まった日、小沢氏は民主党有志の勉強会で、こう訴えた。
「政党の公約を国民に示し、国民がそれを了とすることで、政党と国民との契約が成立し、政権が成立する。この政権公約、マニフェストは、主権者たる国民との契約だから非常に重い」
──この日の勉強会には衆参の民主党議員146人が参加し、「小沢健在」を見せつけた。参加した側近議員が語る。
「勉強会には小沢グループの幹部16人がわざと出席を見合わせていた。小沢さんは『本当は160人以上だな』と手応えを感じている様子だった」
小沢氏は過3回、若手議員と会合を開いているのをはじめ、個人事務所を議員であれば誰でもアポなしで入れるように解放している。
そこには連日、思わぬ珍客が顔を見せている。
「小沢事務所には、代表選に意欲を持つ議員が次々にお忍びで訪れている。しかし、小沢さんは熱心に意見を聞いているだけ。今はマニフェスト順守、増税反対という民主党の原点回帰に賛同する勢力を250人ほど固め、勝ちを確実にしてから候補者を絞るつもりです」(同前)
小沢ガールズの一人が事務所を訪れたとき、ちょうど代表候補の一人、馬淵澄夫氏が小沢氏と会談していた。小沢氏が声をかけた。「○○ちゃん、代表選は誰にするんだ?」
「もちろん、馬淵さんです」
そう社交辞令を返すと、小沢氏は、「お前、この間は原口(一博)だっていってたじゃないか。いい加減だな」と大笑いしたという。
民主党内で「本命は野田」という者は野田グループくらいで、いまや「小沢の意中の人」を探る情報戦が繰り広げられているのである。
小沢氏のプレーンはこう読み解く。
「小沢さんの目的は党全体をもう一度、政権交代の初心に立ち返らせることだ。
野田さんにも側近を通じて
『増税路線を凍結し、マニフェストの原点に戻るなら支援も可能だ』と再三、説得してきた。結局、野田さんは踏み切れなかったが、執行部派の有力候補である前原誠司氏が増税慎重論に転じたのは小沢氏の意図を理解したからだ」
ただし別の小沢側近は、
「前原はない。オヤジの本命は、まだ名前の出ていない男だ」と、もったいつけて語った。
岡由幹事長ら執行部派は、自民党側に、「8月26日に菅首相を正式退陣表明させ、28日に代表選を実施、党首会議で政策協定をむすび、月内に首班指名を終わらせたい」と申し入れている。
「岡田さんは時間をかければ小沢支持派がもっと増えて野田さんが不利になるので短期決戦を仕掛けようとしている」(自民党役員)
興味深いことに、自民党内では、町村信孝氏、伊吹文明氏、古賀誠民ら政党政治の酸いも甘いも噛み分けた古狸≠スちが、大連立に異論を唱えている。
平沢勝栄・代議士が反対の理由を単刀直入に語る。
「わが党には政権に加わりたがっている人たちがいるが、それはポストが欲しいからだ。震災直後ならともかく、いまさら救国連立というのは国民の選択肢を奪う政党政治の否定です。自民党は野党として解散・総選挙を迫るべきなのです」
与野党の主流派と大メディアが手を組んで役人のいうがままの政治を推し進め、それを与野党の非主流派が批判するというねじれ国会≠アそが今の日本を不幸にしている。
代表選で問われるのは、まずは正常な政治の回復なのだ。
(写真)自民党でも執行部が浮いている
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