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菅直人首相の退陣がようやく固まって、民主党は代表選に動き出した。といっても、民主党の「子ども手当存続ポスター」問題で特例公債法案の参院審議に不透明感が出てきたので、退陣の段取りが最後まで迷走する可能性は残っている。だがここは、ひとまず菅が退陣し、次の代表を選ぶ前提で考えよう。
代表選で焦点になるのは増税問題と大連立への対応、次いで原発・エネルギー政策だ。民主党が政権交代を果たした原動力が「脱官僚・政治主導」であった経緯を考えれば、本来なら公務員制度改革も争点にならなければならない。
野田の増税と大連立はセット
だが、脱官僚の旗はとっくにボロボロになってしまった。政権交代して2年も経っているのに、いまだに国家戦略室を設置する根拠法すら整えられず、国家戦略相を完全に形骸化させたまま放置している状態をみれば、もはや民主党が脱官僚・政治主導に本気で取り組むとは思えない。それでも政治主導を唱える候補もいるかもしれないが、口先だけなのは目に見えている。
以上から、候補者たちと焦点の政策を色分けすれば、増税を目指すのは野田であり、これに対して反増税は馬渕と小沢、それに樽床である。鹿野はいまのところ態度を鮮明にしていない。増税にも復興財源としての増税と社会保障財源としての本格増税という二通りの考え方がある。野田はどちらをとってもガチガチの増税派だ。まさに財務省路線そのままである。
馬渕と小沢は本格増税にも慎重なようだが、樽床は復興増税への反対を明言するにとどまっている。野田の増税と大連立志向はセットとみていい。増税を実現するためには法案を参院で通過させねばならず、そのためには自民、公明両党と大連立を組んだほうが手間を省けるからだ。逆に増税に熱心でないなら、大連立に熱心になる理由もなくなる。
原発・エネルギー政策はもちろん大事だ。だが、福島第一原発事故が収束しない中で、中長期的に脱原発依存の方向は変わりようがない。どの候補者もせいぜい「原発を稼働せざるをえないうちは安全性を高め、太陽光など再生可能エネルギーの普及を進める」程度の口当たりのいいお題目を唱えるだけだろう。こうしてみると結局、争点は増税一本に絞られてくる。
では、増税論者の野田が勝つ可能性はあるだろうか。私はないとみる。理由は単純だ。党内の大勢は増税に反対であるからだ。それは先の社会保障と税をめぐる党内論議や復興増税をめぐる論議であきらかになった。
増税派に情報が偏るマスコミ
社会保障と税の議論では、党の抜本改革調査会会長である仙谷由人代表代行(官房副長官)が必死に増税を訴えたが、そのたびに反対論が圧倒して何度も意見集約に失敗した。結局「2015年までに消費税を10%に引き上げる」という当初の目標を「2010年代半ばまでに10%まで引き上げる」と時期をあいまいにして後退させざるをえなくなった。
改革の成案は「2011年度中に必要な法制上の措置を講ずる」となっているが、その前段に「政府は日本銀行と一体となってデフレ脱却と経済活性化に向けた取り組みを行い、これを通じて経済状況を好転させることを条件として」という一文が入っている。これも反対派の成果である。
経済の見通しはどうかといえば、4〜6月期の国内総生産(GDP)は実質マイナス1.3%で4期連続のマイナス成長だった。鍵を握る物価はGDPデフレータが前年同期比マイナス2.2%で、こちらは7期連続の下落である。デフレ基調はまったく終わっていないどころか、むしろ一段と悪化傾向にある。これでは11年度中の景気好転など望むべくもない。
マスコミは岡田をはじめ執行部の大物たちを追っかけるので、いきおい増税派からの情報発信が多くなって、あたかも野田が優勢であるかのように見えがちだが、実際に数の勝負になれば、反対派が優勢になる可能性が高い。では反増税の馬渕や小沢が優勢かといえば、そうでもない。そもそも推薦人のハードルが高く、立候補できるかどうかも不透明なのだ。
となると、態度を鮮明にしていない鹿野、あるいはまだ立候補を表明していない「第三の候補」が鍵を握る可能性がある。情勢は流動的である。そこで、野田が勝った場合と反増税派の「ミスターX」が勝った場合に民主党がどうなるか考えてみよう。
野田が勝てば、党内の反増税派は11年度中の増税法案阻止に全力を挙げるだろう。なぜなら、いずれ2年以内に総選挙が迫っているからだ。それでなくても民主党人気が落ちているのに、そこに増税を掲げて総選挙では大敗北が避けられないと反増税派は考える。
野田は最重要公約が増税であるだけに、実現できないとなると打撃を受けるのは避けられない。先の「経済状況の好転」という条件はまずクリアできないから、どちらにせよ野田の増税路線が行き詰まるのは必至である。
誰が勝っても来年9月までの暫定政権
逆に、反増税派が勝てばどうなるか。この場合は岡田や仙谷はじめ現在の執行部のほとんどを敵に回す。となると、幹事長はもとより主要閣僚にも知名度のある民主党政治家を起用できない。人材不足がだれの目にもあきらかになるだろう。政策路線が違う大物をむりやり起用するような人事をすれば「代表選での公約はどうなったのか」という批判にさらされる。
党内で足の引っ張り合いが始まる可能性も高い。「どうせ来年9月までの暫定政権さ」と新政権の足元をみて、次の勝負にかける動きが始まるのだ。少なくとも、現執行部の何人かは確実に揺さぶりに動くはずだ。それが権力闘争を戦う政治家の野心である。
ようするに、野田が勝ってもミスターXが勝っても、民主党は袋小路に陥る。増税問題という政策路線での基本的対立を隠せなくなるからだ。もともと民主党は「予算組み替えと徹底した歳出削減で子ども手当などの政策財源を生み出す」と公約していた。「その後で増税が避けられないなら、総選挙で国民の信を問う」とも言っていた。
だが、出発点である予算組み替えと徹底した歳出削減に失敗したために、後の政策が首尾一貫しなくなってしまった。その挙げ句、自民、公明両党との3党合意でようやくこぎつけた主要政策の見直しでも「子ども手当は存続します」などと見苦しいポスターをつくるはめに陥っている。なぜそうなったかといえば、脱官僚と政治主導に失敗したからである。
今回の代表選は、破綻した民主党の政策路線がいよいよ党の内部崩壊に進むプロセスの始まりになる可能性が高い。(文中敬称略)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/16513
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