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「脱原発」置き去りで「茶会」が台頭? 民主党代表選の憂鬱(きまぐれな日々)
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菅直人首相が事実上辞意を表明し、政権運営の気力が萎えた隙を経産官僚と北海道電力と北海道知事の高橋はるみに突かれて、定期点検中のはずなのに既にフル稼働していた北電泊原発3号機の営業運転が再開された。
特に8月に入ってからの原発推進・維持派の巻き返しはすさまじい。菅直人の辞意はそれに拍車をかけており、先月には来年夏の原発全基停止を前提としてNHK テレビで発言していた玄葉光一郎は、早くも「小型原発」推進論を口にして地金を出した。玄葉は福島3区選出の議員だが、次の総選挙では同区の有権者は玄葉を落選させてもらえないものか。
玄葉に限らず、民主党全体が原発推進・維持政党である事実がはっきりしてきた。民主党代表選は、一昨年5月の鳩山由紀夫代表選出や昨年6月の菅直人代表選出の時と同様、同党の執行部は短期でケリをつけるつもりらしいが、ここは今朝の朝日新聞社説が言うように、「最低でも1週間程度の論戦は必要」だと私も思う。いったい次の総理大臣は原発問題で、そして税制や社会保障の問題でいかなる政策をとるのか。鳩山由紀夫や菅直人のようには(中身は別として)知名度の高い政治家たちではなく、にもかかわらずほぼ間違いなく次期総理大臣になるのだから、その政策を国民に知らしめる必要があるだろう。
どうも岡田克也あたりは野田佳彦がボロを出さないうちに短期で野田に決めてしまおうと思っている様子がありありだが、それでは一昨年に鳩山由紀夫と小沢一郎がやったことと何も変わらない。一方、執行部が企む「菅抜き小沢抜き」に、当然ながら小沢一郎は反発する。
小沢は一昨日(17日)、あの悪名高い副島隆彦を「講師」に呼んで政治資金集めパーティーを行ったのだが(この事実だけでも小沢一郎が全く支持に値しない政治家であることは明白だろう)、民主党代表は「経験や知識があって命懸けでやる人でなければいけない」と述べたという。
例によってはっきりしたことは言わない小沢一郎だが、これは鹿野道彦か海江田万里のいずれかを指すのではないかと見られる。しかし、新進党最後の党首選で小沢一郎と争った鹿野道彦の支持を小沢一郎は渋っているようにも見える。海江田万里となると、これは玄海原発再稼働問題で菅直人と対立した「原発の守護神」だ。だが、政策なんか二の次三の次で、ひたすら「敵味方思考」しか行なわない小沢一郎にとっては、海江田万里という選択肢も「あり」なのだ。
なお、当ブログによくコメントする小沢信者が「小沢が推すのは実は横路孝弘ではないか」とする希望的観測のコメントを当ブログに寄越したことがあるが、そんな気配は全くない。トリウム溶融塩原発推進論者の小沢一郎は、そもそも「脱原発」論者とはとうてい言えないだろう。ボスに平沼赳夫をいただく「地下原発推進議連」に参加している鳩山由紀夫ともども、小鳩派もまた執行部系と同様の「原発推進or維持派」とみなすべきだ。
はっきり言ってしまうと、民主党代表選では「脱原発」は論点にはならない。看板だけは「脱原発」の馬淵澄夫や前原誠司(出馬説が急浮上している)を含め、名前の挙がっている全員が「脱・脱原発」派だ。
私は現在、佐野眞一が1994年に書いた『巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀』(文春文庫、2000年;単行本初出は文藝春秋、1994年)を読んでいる。ちょうど正力が奮闘して日本初の原子炉が稼働したところまでを描いた第12章と第 13章を読み終えたところだ。文庫本で本文およそ1000頁にわたって描かれた長大な物語の4分の3にさしかかったところから、原発導入の物語が始まる。もちろん著者・佐野眞一の目を通した記述ではあるのだが、正力は決して政治的信念を持って原発を日本に導入したわけではなかった。正力とともに日本における原発の創始者と目される中曽根康弘にはまだ多少の政治的信念があったようだが、当時読売新聞社主から政界への進出を図り、衆議院選挙に初当選して自民党総裁の座を狙っていた正力松太郎にとっては、原発とは「次期総理・総裁にふさわしいスケールの大きな事業」でしかなかった。正力の読売新聞が展開した「原子力の平和利用」キャンペーンは、アメリカからメジャーリーガーを呼んで読売ジャイアンツを立ち上げ、阪神タイガースとの「天覧試合」でプロ野球を国民的人気スポーツにしたプロ野球事業と同じ手口で行なわれた。だから読売新聞というかナベツネ(渡邉恒雄)にとっては原発もプロ野球も同じ彼らの「私物」なのであって、その悪しき伝統がナベツネの今も引き継がれていることは、読売の原発報道とプロ野球報道を見ていればよくわかる。
プロ野球のジャイアンツ戦の方は、これも正力松太郎が創設した民放テレビ地上波のゴールデンアワーの枠からほぼ弾き飛ばされるほど人気が落ちたが、原発推進ないし維持派の勢力も、長期的視野に立てば間違いなく低落していく。プロ野球と原発のいずれにおいても「抵抗勢力」となっている。両者を私物化している以上は当然だ。
以後はプロ野球の話は持ち出さずに原発のみの話をするが、問題は政官業の中枢近くにいればいるほど、これまで惰性で進められてきた原発政策を「止める」のが難しいと皆が思うことなのだろう。だから、政権をとった民主党議員のほぼ全員が「原発推進・維持派」になるのである。
こう書くと、小沢・鳩山派には「脱原発」の森ゆうこや川内博史だっているぞ、との反論が(小沢信者から)返ってくるかもしれない。だが、なぜ彼らは「ポスト菅」に名乗りを上げないのか。党内野党の気楽な立場だったから「脱原発」が言えただけなのではないか。私はそう思っている。当選回数など関係ない。正力松太郎は年をとって政界入りするなり自民党の総理総裁を目指した。だが民主党小沢派ではそうもいかない。小沢一郎の意向が絶対であり、小沢に逆らうことは決してできないからだ。
原発を論点から外すとなると、民主党代表選で論点に設定されるのは何か。もちろん税の問題であり、特に小鳩派の気を引こうとする候補者たちは「増税反対」を訴える。一方財務相の野田佳彦は「財政再建至上主義」の立場に立つ。
後者の「消費税増税による財政再建論」には私は大反対だ。それは前々から当ブログでも言っている。しかし、復興財源としての所得税と法人税の増税は是非行なうべきだと思う。国債を増発しなければならないのは仕方ないが、東日本大震災という大災害を受けた被災地を支援するためには、考えられるあらゆる手段で財源を捻出する必要があり、そのために所得税と法人税を一時増税するのはオーソドックスな政策なのではないか。
ところが「増税反対派」は、不況に苦しむ日本経済に悪影響を与えるとして「復興財源としての所得税と法人税の一時増税」にまで反対している。これではまるでアメリカの「ティーパーティー」(茶会)の思想ではないか。あるいは少し前の小泉・竹中時代や中川秀直ら自民党の「上げ潮派」が好む「トリクルダウン」の考え方ではないか。
現在、アメリカでは著名投資家のウォーレン・バフェット氏が15日付の米紙ニューヨーク・タイムズに寄せた論説で、議会に「甘やかされ」たくはないと述べ、米政府は富裕層にもっと税金を課すべきだと主張して話題になっている(下記URL参照)。
http://www.cnn.co.jp/business/30003702.html
この記事にもあるように、米オバマ大統領は「金持ち増税」の構想を持っている。そのオバマを批判するのは野党・共和党の経済右派である茶会だ。だが、日本では与党・民主党の中に「茶会」的勢力があって力を増している。
「増税反対」や「減税」というと、東日本大震災・東電原発事故の前に当ブログが批判のターゲットにしていた河村たかしが思い出されるが、なにも河村たかしだけではない。小沢一郎も、民主党代表に就任して「国民の生活が第一」のスローガンを打ち出したあとも、「所得税と住民税の半減」を民主党代表選の公約に掲げようとしたことがあった(下記URLの森田敬一郎氏のブログ記事を参照)。
http://morita-keiichiro.cocolog-nifty.com/hatsugen/2006/08/post_439b.html
つまり、小沢一郎こそ民主党「茶会勢力」の中心なのだ。「日本版茶会」を批判する際には小沢一郎批判が欠かせないと私が強く主張するゆえんである。そしてその小沢一郎のたくらみによって、民主党代表選の主要な争点は「税」の問題になり、「原発」は置き去りにされそうな雲行きだ。岡田克也ら原発推進派の執行部にとっても、「税」はともかく「原発」が争点にならないことは歓迎だろう。
かくして、誰が民主党代表に選ばれようが、菅直人内閣と比較しても確実に数段階低劣な内閣が誕生することだけは確かなので、夏バテがますますひどくなる今日この頃なのである。
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