http://www.asyura2.com/11/senkyo118/msg/174.html
Tweet |
http://diamond.jp/articles/-/13587
2011.08.17
■「能力も覚悟もない」首相は願い下げ
8月13日の『読売新聞』朝刊一面に、印象的な記事があった。「前原氏、不出馬の意向」という見出しの記事だが、この中に次のような文章がある。
「前原氏は周囲に『首相と閣僚では仕事の大変さが違う。私には能力も覚悟もない』と語っているという」
前原誠司氏については、古くは、民主党代表時代に起きた「永田メール事件」、政権が民主党に交代してからは、八ッ場ダムを巡る問題や、JALの処理、さらに尖閣列島沖の中国漁船の問題などで氏が見せた、はじめに勇ましくて、後から手に負えなくなって尻尾を巻く何度も見せた気の小さい番犬のような行動パターンを思い起こすと、「能力も覚悟もない」というご本人の言葉には、一分の反対意見の余地もない。正確無比な自己認識に敬意さえ覚える。
しかし、現職の議員で首相候補の声が掛かることもある政治家が、果たして、ここまで謙った物言いをするものなのか。この言葉を伝えた周囲の人物とはいったい誰なのか。記者は、どんな気持ちでこれを文字にしたのか。読売新聞のデスクは、どう考えてこの記事を載せることを了承したのか。文字になってみると、面白すぎる! 前原氏の顔が浮かぶと共に、笑いが込み上げてくる不思議な味わいの記事だ。
氏の発言の真偽(あるいは「真意」)はともあれ、菅直人氏の後の首相ポストは、前原氏のような政治家にとって、あまり魅力的なものではないらしい。選挙はしばらく先まで延ばすことが出来るが、衆参が「ねじれ」の状況にある中で、政権運営が思うに任せないから、ということだろうか。これは、所詮、自分の政策にも、政治家としての説得力にも自信がないという理解でいいだろう。確かに、能力と覚悟の両方が足りないのだ。
ご本人が明言したわけではないが、今代表になり首相になるよりも、来年の9月の民主党代表選挙で代表になって、選挙の顔となって総選挙を戦うシナリオの方が前原氏にとって魅力的であるらしいという観測がある。
しかし、一年少々で首相に必要な能力や覚悟が養われるはずもないし、これからまた短命政権を作ることが日本の政治にとっていいことだとはとても思えない。
外交一つを考えるとしても、来年は、米国大統領選挙をはじめとして、世界の主要国のトップが交代する可能性のある政治的に重要な年だ。この際に、日本首相が再び短期間で交代するかも知れないという状況では、外国の首脳は日本の首相と本音を晒した意見交換が出来ない。日本は、外交的に「そこにいない国」になってしまう。
こうした考えを持っているなら尚のこと、前原氏は、今回も来年も首相にならない方が国民のためだ。
■野田氏に経済は任せられない
世論調査の人気第1位が前出の前原氏であるという人材の払底ぶりが、民主党の最大の弱点だが、相対優位な候補者はいるし、首相・代表の候補に名乗り出ることで名前を売り、代表選後に要職を得る「樽床メソッド」(樽床伸二氏は、前々回の代表選に立候補して、敗戦後に国会対策委員長のポストを得た)の追随者も出て来そうだ。
目下、メディア党で最有力候補と伝えられることが多いのは、野田佳彦財務相だ。今や、すっかり復権して民主党政権に大きな影響力を持っている財務省の副大臣、大臣を務めて、それなりに経験を積んだことと、官僚からの評判がいいことがセールス・ポイントだ。
確かに、筆者も財務省の官僚が野田氏について「彼は、まあまあいいですよ。安定感がある」と言うのを聞いたことがある。
野田氏は、『文藝春秋』の9月号に「わが政権構想 今こそ『中庸』の政治を」という手記(文春のライターが聞き書きしたものだと推察するが、ご本人は内容を確認しているはずだ)を発表している。
この中に、「日本の製造業は震災前に四重苦に直面している、と言われてきました」という下りがあり、第一が「円高」、第二が「新興国の追い上げ」、第三が諸外国との「経済連携協定の遅れ」、第四が「国内市場の低迷」だと述べている。
これらも厳しい条件に違いないが、真に重要で政治と行政が大きく関わる「法人税率の相対的な高さ」と「規制によるビジネス展開の不自由さ」が挙げられていない点で、野田氏が、官僚寄りのポジションであることがよく分かる。
こうした認識の人物が首相では、日本経済の改善は全く期待し難いと言わざるを得ない。
また、経済の改善を論ずる以前に、財務省の政策に関わって来た野田氏には、現在のデフレと円高の状況に対する政策的責任がある。デフレ対策に関しては、日銀の金融緩和も重要だが、政策金利がゼロ金利になった点から先の金融緩和を有効に行うためには、何らかの財政的な政策の併用が必要になる。この点、野田氏が財務省に関わってきた過去2年の政策は、全く不十分だった。
3月の円高局面で異例の先進国の協調介入の実施に漕ぎ着けたことは、野田財務大臣にも貢献ありと見ていいのかも知れないが、これは、野田氏が偉かったというよりは、東日本大震災に対する先進諸国の同情の賜だろう。
しかも、その後の無策によって、協調介入の効果はすっかり剥落して、対ドルの円レートは震災直後の最高値(1ドル、76円25銭)に迫っている。野田氏の経済政策は不合格だ。
■連立増税政権は 悪夢
野田氏は、文藝春秋の手記でも「大連立型」の連立政権(自民党を含む連立政権)への期待を滲ませているが、その後、最近の発言にあっても、大震災からの復興を目的とした連立政権の樹立を希望する旨を述べている。『朝日新聞』(8月14日朝刊)の見出しでは、「野田氏 『救国内閣を』」となる。
今や、大連立の可否が、民主党代表選の大きな争点に浮上してきた。
仮に、野田氏が首相となり、民主・自民あるいは民主・自民・公明の連立政権が出来た場合に心配なのは、消費税率引き上げの早期実施にこの政権が利用される可能性だ。
野田氏は、消費税率の引き上げに対して「理解がある」(少なくとも後ろ向きでない)とされているし、現自民党総裁である谷垣禎一氏も消費税率の早期引き上げに対して積極的だ。菅直人現首相も消費税率引き上げ賛成派だったが、菅氏の場合は、自民党に信頼されるには、あまりに人望が無かった。
それにしても、財務大臣を経験する政治家を、次々と消費税率引き上げ派に染め直して行く財務省の大臣調教能力はたいしたものだ。
震災復興を旗印に野田氏の言う「救国内閣」が出来た場合、衆参院共に圧倒的な多数を握ることになるので、今度こそ、消費税率の早期引き上げが実現する可能性がある。民主党、自民党の党首の立場で考えると、それぞれ官僚と上手くやっていくためには消費税率の引き上げを実現したいが、政治的には、これを唱えると難局を招くのが悩みだ。「救国大連立内閣」でこれを処理してしまえば、後が楽になると考えても不思議ではない。両者が手を握る可能性、これを財務省が利用する可能性はある。
筆者は、
(1)将来、支出の大幅な削減に加えて増税が必要になること、
(2)日本の税金の中で消費税のウェイトを上げること、
の二点には反対しないが、
(A)デフレが問題である現状で増税を行うこと、
(B)支出削減の前に増税を決める手順で財政再建を行うこと、
の二点には強く反対する。
野田氏が首相になって、連立政権が実現した場合、この政権が財務省に担がれて、消費税率の早期引き上げに走ることが心配だ。
また、そもそも、内閣の方針が同時に国会の方針になり、政策や行政へのチェックが効かなくなる「大連立」には大きな不安を感じる。
野田佳彦氏は、手記の中で、地元での街頭演説の継続と回数を誇っている。であるなら、一つ一つの重要事項に関して、国民の前で堂々と議論を行うことに賭けるべきではないのか。首相候補として、筆者は彼を推さないが、首相になるか否かに関わらず、将来のある野田氏には「議論の人」であって欲しいと願う。
■その他の候補 に期待する
経済政策としては、デフレ対策に積極的で、且つ直ちに増税するのではない候補者、また、政局的には、民主党内の「親小沢・反小沢」といった政治的な駆け引きに距離を置く人、加えて、官僚の言いなりではなく、自分の言葉でオープンに議論が出来る人物はいないものか。
はっきり言って、過去の民主党代表経験者に、条件を満たす人物はいない。年齢だけで首相の資格を云々すべきではないと思うが、民主党は(自民党もだが)、そろそろ新しい世代にリーダーを渡した方がいいのではないか。
野田佳彦氏の手記が載っている『文藝春秋』(9月特別号)には、馬淵澄夫氏の「代表選 一匹狼の挑戦状」という手記が載っている。
馬淵氏は、既に代表選に出馬する意思を表明しているが、手記のタイトル通り「一匹狼」なので、立候補に必要な推薦人の20人が集められるかどうかが微妙な候補者であり、まだ有力候補視されていない。
しかし、手記を読むと、氏は上記の条件を相当程度満たしている。
「本来なら、『社会保障と税』ではなく、『成長と社会保障と税』を一体的に考えていかないといけないはずである」(『文藝春秋』9月号、109ページ)と述べ、消費税の「2015年度までに10%まで引き上げ」には明確に反対している。彼ならば、今の状況を任せてみて意味があるかも知れない、と期待させる要素がある。
民主党員は、今回、馬淵氏を選ぶ手もあるのではないか。現在名前が挙がっている候補者の中で選ぶとすれば、筆者なら馬淵氏に一票を投じてみたい(注;筆者は民主党員ではないから実際に投票することはない)。
また、馬淵氏以外にも、現実感覚と挑戦への意欲を持った人物がもっといてもいい。この際、候補者は、もっと出て来るべきだ。民主党の政治家としては、今の時期を逃すと、しばらく勝負に出られる時期がないかも知れない。遠慮や駆け引きを捨てて、今こそ、立つべき政治家がかなりの数いるのではないか。彼らは自らの政治家人生を不発弾に終わらせてもいいのだろうか。
これから首相になる人物には、鳩山・菅時代の失われた2年間を取り戻す政策の実行を期待したい。この際に頼るべきは、あらかじめの大連立政権といった枠組みではなく、個々の問題について国民に広く議論を晒すことによる支持の獲得だ。政策の実行によって国民の支持を得て、来年9月の代表選挙では問題なく再任されて、実績を問う形で、自らの手で解散総選挙に打って出るような強い首相の登場を希望したい。
政治的には、不運と失望の何とも多い近年の日本だが、たまにはポジティブなサプライズがあってもいいのではないか。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK118掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。