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ポスト菅の政治課題(田中良紹の国会探検)
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/08/post_271.html
菅総理の「目くらまし」に煽られて「解散風」を吹かせていたメディアがようやく「菅総理の辞任」を報じるようになった。「支持率が下がったため」とか「特例公債法案が成立の見通しになったから」と、菅総理の「急な心変わり」を解説するが、そもそも「解散」など出来るはずはなく、メディアは「虚勢」を見抜けなかっただけである。これで真夏の夜の夢は消え、選挙は2年後の衆参ダブルが濃厚となった。
前々回も書いたが「解散、解散」と騒いでも、現在、衆議院の「1票の格差」は2.44倍で09年の衆議院選挙時の2.3倍をさらに上回っている。その09年の衆議院選挙を最高裁は「違憲状態」と判断し是正を求めた。次の選挙までに定数是正は避けられない。一方の参議院も「1票の格差」は5倍を越えており、13年の選挙までに是正は絶対条件である。
しかし私の経験によると、定数是正は党利党略、個利個略が絡み合い、とても一筋縄ではいかない。大いなる政治力と知恵が必要になる。それが2年以内に成し遂げなければならない政治課題である。そして当然ながら震災からの復興は待ったなしの急務である。こちらは挙国一致体制を築けるかどうかが勝負である。
未曾有の災害に見舞われた時、政治リーダーは与野党を問わず危機に精通する政治家や現地に精通する政治家の知恵を集め、縦割りの行政機構をいかにまとめ上げるかの手腕が問われる。ところが手柄を独り占めしたかったのか、菅総理は「お友達」だけで危機に対応しようとした。
原発事故では法律によらない組織を作り、何をどうしているのかが外から見えない。国民のパニックを恐れてか情報は後手後手に回る。敵も味方もなく有為な人材を使いこなす政治的度量が見えず、自民党総裁にポストをちらつかせて協力を求めるなど逆に関係を悪化させた。それらのすべてが「菅おろし」を招く事になる。
しかし日本には「ころころ総理が代わるのはもう沢山」、「大震災の時に政争をするな」という国民感情があり、仕掛ける側は返り血を浴びる覚悟を要した。それでも状況を変えなければ復興は遅れるという意識が与野党に芽生え、それが尋常ではない「菅おろし」となった。そう考えると第三次補正予算を組んで復興の道筋を作るのは民主党政権と言うより挙国一致の体制で行なうのが筋である。
そして挙国一致は必ずしも民主党と自民党との大連立を意味しない。「菅おろし」の理由が政治リーダーとしての政治技術の未熟さにあるのなら、民主党と自民党の双方が受け入れ可能な人物で、期間限定で総理をやった後に権力に固執したくとも出来ない小勢力から政治力のある人間を担ぐ構想もありうる。例えば民主党と小政党が連立を組み、その小政党から一時的に総理を出す方法である。
メディアは近く予定される民主党代表選挙だけに注目し、顔ぶれや争点をあれこれ想定しているが、ここで選出される新代表は菅総理の残りの任期となる来年9月までを務めるに過ぎない。来年9月には党則による代表選挙が再び行なわれ、その時は今回と異なり一般党員も参加する本格的な選挙になる。従って今回はいわばつなぎの代表を決める選挙である。その代表が来年以降も継続するか交代するかはまだ分からない。
復興の次の課題は先ほど触れた定数是正である。それが政治力を要する事も説明した。従って来年以降の民主党代表にはそれをやり切る政治力が必要となる。そして1票の格差が是正され選挙の実施が可能になった時、想定されるのは衆参ダブル選挙だが、それが09年のように再び民主党と自民党とが雌雄を決する事になるのかが問題である。
民主党にはよくよく分かったようにマニフェストを巡る党内対立があり、自民党にも民主党と同様に党内対立が内在する。そして既に政界再編を想定し自民党を離れた小勢力もいる。来年までは震災対応で一致協力するが、その目途がつき選挙を意識するようになると諸勢力は核融合か核分裂によって次第に二つの潮流に収斂していく。軸が何になるかはまだ鮮明でないが、小選挙区制が維持される限り、軸は二つに収斂する。
この状況は07年に民主党の小沢代表が自民党の福田総理に大連立を呼びかけた時と似ている。あの時、メディアも民主党も国民も全くその意味を理解せず、大連立をひたすら「大政翼賛会」と非難した。まるで民主主義がなくなるかのような口ぶりだった。しかしその非難した連中が今ではこぞって大連立を是認している。まるで軍国主義が一夜で民主主義に変わったような恥知らずぶりである。
07年に小沢氏が大連立を画策したのは、まさに小選挙区制による二大政党制を確立するためだったと当時私はコラムに書いた。当時の民主党は参議院選挙で勝利をし、衆議院選挙での政権交代が目の前の状況だった。しかし残念ながら当時の民主党には政権を担当するだけの政治的技量がない。権力の座に就いた経験がないのだから仕方がなかった。
そのまま政権の座に就くと霞が関に翻弄され、アメリカに試されて収拾がつかなくなる可能性がある。そして民主党には自民党と同じく党内に政策的な対立がある。そこで大連立が画策された。民主党の若手議員を入閣させ、霞が関の内側を知らしめると同時に、権力のパワーゲームの阿吽の呼吸を覚えさせ、同時に自民党と合流させて政策的に近い者同士を融合させる。
衆議院選挙が近づけば、自民党と民主党とを改めて「ガラガラポン」して、二つの対立軸に収斂させる。その二つが戦えばこれまで以上にすっきりした二大政党になる。あの時の大連立構想を私はそう見ていた。しかし周囲の大反対で構想は頓挫し、経験のない政治家たちが権力の座に就き、それが今日の結果を招いた。
目の前の震災復興で全政治勢力が協力体制を組み、その後否応なく選挙を意識する定数是正によって改めて二つの政治潮流が作られる。それがポスト菅の政治課題であり、政権交代を積み重ねていくためには必要な事なのである。
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