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このところ政権をめぐる環境が急激に変わって、菅直人首相の進退は窮まったようである。その大きな要因は3つある。いずれも菅首相にとって誤算とも言えるものだろう。
退陣3条件成立、事実上の代表選開始…急転直下で高まった首相の孤立感
(1)首相が示した退陣3条件が一気に整いつつあること。
条件の1つとされた第2次補正予算は7月25日に成立しているが、与野党双方の妥協によって、特例公債法案と再生可能エネルギー買い取り法案の成立にもメドが立った。特に、特例公債法案の早期成立はきわめて困難とみられていたが、急転直下、民主、自民、公明の3党が歩み寄り、今国会で成立させることに合意した。
公明党が政権への協力姿勢で、自民党と微妙な違いを見せてきたことが、公明との連携を重視する自民党を軟化させたと言われるが、同時に、米国債の格下げ問題が強く後押ししたのだろう。
(2)首相退陣を前提とした民主党代表選が事実上始まってしまったこと。
決定的だったのは、月刊誌を通じての野田佳彦財務相の実質的な出馬表明だ。野田氏は内閣の最重要閣僚であること。そして、菅首相への批判を極力抑制してきた数少ない閣僚であること。その野田氏が首相の延命に立ちはだかったことは大きな衝撃に違いない。これで首相の延命に協力する閣僚はいなくなり、首相の孤立感は一段と深まった。
さらに、この時期での野田氏の出馬が明るみに出たことは、ついに財務省が菅首相を見離したと受け取ることもできよう。今の首相からすると、財務省が離れることは、霞ヶ関からも退陣を迫られたようなものだ。
(3)大手メディアが菅退陣で足並みを揃えたこと。
特に、首相に好意的と思われてきた朝日新聞が、ここに来て論調を大きく変えた印象がある。首相は「朝日よ、お前もか!」の印象だろう。朝日8月10日付は、「首相、退陣表明の意向」をトップの見出しとし、「首相陥落」の見出しさえ踊っている。これは8月8日発表の朝日の世論調査結果と無関係ではないだろう。
脱原発依存を表明した菅首相の発言を「評価する」 人が61%もあるのに、内閣支持率はさらに低下して14%となったのである。すなわち、脱原発の是非と菅首相の是非は多くの人たちにとって別個の問題であることが一層はっきりしたのだ。むしろ、菅首相が脱原発を叫ぶと、せっかくの脱原発の流れを弱めかねない状況となりつつある。
しかし、ここは、退陣の際に何も言い訳をせず、何ら功績を誇ることなく自然体で退くべきだろう。捨てゼリフを吐くのではなく、淡々と建設的な提言を残していくことを最後に期待する。
http://diamond.jp/articles/-/13549
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