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◎ポスト菅は野田を軸に展開
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/archive/20110811
2011-08-11 07:30 永田町幹竹割り
またまた懲りない男の登場だ。何と議員148人も集めて元代表・小沢一郎が講演だ。言うまでもなくポスト菅をにらんでの党内けん制に出た。「おれの意向を無視しては決まらないぞ」というわけだが、無視できないところに民主党の抱える業(ごう)がある。月末28日と予想される代表選に向けて誰が先頭を切っているかというと、紛れもなく財務相・野田佳彦であろう。他に手を挙げている候補はまだ雑魚しかいないが、農水相・鹿野道彦らも近く立候補するだろう。今後半月の間に例え有力候補が現れても、先行した野田を軸に展開するものとみられる。最大のテーマが増税となるだろう。
その増税への対応で、この国を担える人物かどうかの判断が可能となる。小沢が増税に反対しているからと言って、こびを売ってすり寄ってまで政権を手に入れるとすれば、紛れもなく破綻したマニフェストと同じ因果関係が生じてしまう。政府の復興基本方針における復興事業の総額は23兆円。最初の5年間に19兆円を投入することになる。このうち赤字国債でまかなう復興債は10兆円を超える。この財源を増税以外でまかなうことは不可能であり、可能と主張するならば根拠を示す必要がある。しかし根拠は出てこない。無理にこじつければ、16・8兆円の財源が節約で出てくるとうそをつきまくって、破綻したマニフェストと全く同じことになるのだ。
こうした中で野田は10日発売の文藝春秋で税と社会保障の一体改革の実現に向けた覚悟を訴えている。野田は「大震災を理由に、財政健全化への取り組みを先延ばしにすることはできない。財政再建は未来への責任だ」と強調するとともに「覚悟を持ってこの一体改革を実現したい」と公約している。ただ後述するが、なぜか「消費税」と言う文言は使っていない。一方で代表選への立候補が取り沙汰される前外相・前原誠司や経産相・海江田万里は、消費増税路線とは一線を画している。前原は「日本がかかっているデフレという病気を脱却し、安定した経済成長に移るまでは増税すべきではない」と主張している。馬淵澄夫、小沢鋭仁も同様だ。
あきらかに120人を擁する小沢グループを意識しており、ここにも「小沢か、脱小沢か」の旧態依然たる力学が作用している。しかし未来永劫増税なしで対応できると見る国会議員は共産党以外にはいまい。煎じ詰めれば時間軸をどうとらえるかの問題なのだ。「今は反対」(馬淵)と言っているのであり、「10年代半ば」の実施時期を言う野田とどう違うのかと言えば、反対派はひたすら小沢にこびを売るための発言としか思えない。一方で政権運営の鍵を握る野党との関係では、自民党総裁・谷垣禎一が「野田さんの言動を見ると、思いつきをポンポン打ち上げる人ではない。ああいうキャラクターにはもう少し頑張ってもらう必要がある」とエールを送っていることがプラスであろう。
こうした中で小沢の真意はどこにあるのかを探ると、去る6月半ばに小沢は既に、野田に対して極秘裏に「代表選で消費税増税路線を凍結せよ」という“条件”を伝えているのだ。そういう背景をもとに野田の論文を見れば、「消費税」の文言がない意味が分かる。また政府・与党の社会保障改革検討本部が6月30日決定した「消費増税10%」の方針も「10年代半ば」とぼかしている。こういう時期には野田が政治家なら文春論文を小沢に先に見せて懐柔を図るものだが、その辺は霧の中だ。小沢は鳩山由起夫と「経済情勢が悪化する中、増税は支持を得られない」として、「ポスト菅」候補は増税慎重派が望ましいとの認識で一致したが、棒を飲んだような表現を避けている。10日も2009年衆院選マニフェストについて「個別の政策は大事だが、国民が本当に期待した原点は何なのか。お互いに心に問いかけないといけない」と、見直しを容認する発言をしている。
小沢は、まだ「増税の野田は駄目」と旗幟(きし)鮮明にしていないのだ。というのも、小沢にとって担ぐべき候補が見当たらないのが実情だろう。野田も「誰かから脱するとか、誰かを除くとかいう話は不毛だ。一番超えなくてはならないのは怨念の政治だ」として、明らかに小沢との融和路線を目指している。裁判を抱える小沢にとって敵対政権ほどまずいものは無い。敵対しなければよいのだ。号泣の海江田万里や存在感が希薄な鹿野道彦、基本的に泡沫の樽床伸二、馬淵、小沢鋭仁を支持するにはためらいがあろう。前原を押すとなれば一挙に野田は予断を許さなくなる。しかし野田以上に「反小沢」の言動を繰り返した前原である。いくら「増税に反対」と言っても推すだろうか。小沢は「菅以外なら誰でもいい」とも漏らしており、まだ白紙で様子見なのだろう。
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