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菅首相周辺が「改革派官僚」古賀茂明氏に接触していた「経産省3幹部更迭」の裏事情 海江田大臣がすぐ後任を発表できなかった理由
現代ビジネス ニュースの真相 2011年08月05日(金)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/14821
海江田万里経済産業相が松永和夫経産事務次官と寺坂信昭原子力安全・保安院長、細野哲弘資源エネルギー庁長官の3人を更迭した。更迭劇は一見すると、海江田が経産省首脳たちに原発事故とそれに関連する不祥事の詰め腹を切らせたように見える。
ところが、中身はまったく違う。
形ばかり3人を辞めさせたが、海江田は松永次官の後任に安達健祐経済産業政策局長の昇格を認めた。経産省事務方とすれば、官僚の権益をぎりぎりで守るのに成功したのである。3人はいずれ優雅に天下りするだろう。「身を捨てて省益を守った3人」として賞賛されるに違いない。
ただ更迭劇には、いささか奇妙な点もある。
歯切れの悪い海江田経産相の会見
それは朝日新聞4日付け朝刊から始まった。1面トップで「首相は3首脳を更迭する方向で海江田経産相と最終調整に入った」と書いた後、リード(前文)の最後で「海江田氏も3首脳を更迭後、速やかに辞任する考えだ」と結んでいた。
朝日といえば、このところ菅直人首相との蜜月ぶりが話題になっている。朝日が脱原発の社説特集を組んだ7月13日当日、菅が脱原発で記者会見したのを皮切りに、29日にも朝日がエネルギー政策の工程表づくりを特ダネで書くと、その夜に菅が会見で裏打ちするといった具合だ。
朝日が更迭を報じると、海江田は朝9時半過ぎから緊急会見を開いて「人心一新は1カ月くらい前から考えていた。詳しい人事の中身は後刻、みなさまに明らかにする」「首相には2日に報告した」と語った。
そのうえで「次官とエネ庁長官、保安院長は含まれるか」との質問に「そう考えてもらって結構だ」と述べている。記者の「首相は了承したのか」という質問には「人事権者は私なので、首相には報告したということ」と答え、自身の進退については「私一人で決めさせてもらう」と語った。
この会見をどうみるか。
まず、いかにも歯切れが悪い。3人の更迭なら更迭とはっきり言えばいいのに「そう受け止めてもらって結構だ」などと言っている。これはなぜか。ポイントは後任人事にあったとみる。
更迭をはっきり認めるなら当然、後任人事に触れなければならない。だが、後任については「ちょっとしばらく。閣内、政府としての手続きもあるので」と口を濁している。
その後、午後になって安達の昇格が発表された。
経過から言えば、2日に首相に報告しているのだから、そこで了解が得られていれば、朝の緊急会見の段階で後任を含めて発表するのも可能だったはずだ。ところが朝は口を濁して、午後になってから発表した。4日まで2日間も人事が宙ぶらりんの状態になっている。
そうなったのは、4日朝の段階で菅の了解が得られていなかった可能性がある。
古賀茂明氏にかかってきた電話
実は、それを裏付ける傍証もある。
首相官邸サイドは先週から、改革派官僚として知られた古賀茂明官房付審議官に数回にわたって電話し、事務次官更迭を前提にした経産省人事について相談していた。そこでは次官の後任だけでなく、海江田経産相が辞任した後の後任経産相についても話が出たもようだ。
このタイミングで古賀に相談したのは、当然、古賀自身の起用についも視野に入っていたとみていいだろう。少なくとも、官邸サイドが「改革派の起用は論外」とは考えていなかった証拠である。
経産省のスパイとなる官僚は官邸にいくらでもいるから、官邸サイドが古賀に接触したのは経産省も知っていたはずだ。そんな動きを察知して、経産省が先回りして松永ら3人のクビを自ら差し出し、引き換えに後任人事を牛耳ろうとしたのではないか。
2日に海江田が官邸を訪ねて菅に後任を含めた人事案リストを提示した段階では、問題が決着していなかった。朝日が4日朝にスクープしてから、経産省は一挙に勝負に出て同日午後、なんとか安達昇格の発表にこぎつけた。そんなところではないか。
少なくとも菅の官邸と海江田・経産省が最初から一枚岩だったとは思えない。そうだとすると、官邸が古賀に接触した理由の説明がつかないからだ。
いずれにせよ経産省は安達昇格でほっと胸をなで下ろしているはずだ。「もしも改革派の登用が決まっていたら、大変だった」と思っているに違いない。経産省の勝利である。
〔PHOTO〕gettyimages
だが、海江田の勝利とは言えない。これで海江田が完全に経産省に取り込まれたことが明らかになってしまったからだ。海江田は代表選出馬を考えているだろうが、こんな調子ではせっかく正念場の舞台ができたのに、自ら土俵を降りてしまったようなものだ。
菅の勝利にもならない。菅政権は曲がりなりにも原発・エネルギー政策の見直しを掲げているのに、今回の人事で肝心の経産省が従来の原発依存路線擁護に走るのを容認した格好になってしまったからだ。
このあたりが菅の限界である。せっかく政策見直しを言ったのだから、それにふさわしい陣容を整えればいいのに、肝心かなめのところで妥協してしまう。そういう「口だけ改革」の姿勢を国民はとっくに見極めている。
今回の更迭劇は菅政権の得点になるどころか、まったく逆に、あらためて失望感を広げる結果に終わった。やはり菅に大きな改革は無理なのだ。
(文中敬称略)
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