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菅首相の「脱原発」は本当に「脱原発」か
ジャーナリスト
野々山英一 Nonoyama Eiichi
http://www.jiji.com/jc/v?p=foresight_7701&rel=y&g=phl
Foresightコンテンツ 衆議院予算委員会で自民党の塩崎恭久氏(左)の質問に答弁する菅直人首相=2011年7月6日、東京・国会・衆院第1委員室【時事通信社】
7月6日の衆院予算委員会。松本龍復興担当相の辞任翌日の国会論戦は、菅直人首相の任命責任の追及に注目が集まっていた。
ところが、波乱は別のテーマの議論から起きた。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働問題だ。
海江田万里経産相は6月18日に、定期検査が終わった原発は再稼働するよう促す「安全宣言」を行なった。29日には佐賀県に乗りこみ、古川康知事や岸本英雄玄海町長らと会談し「安全性は国が責任を持つ」と玄海原発の再稼働を要請している。古川知事は「首相の意向を確認したい」として菅首相との直接会談で受け入れるかどうか決める考えを示していた。
海江田氏は7月6日の予算委員会で、塩崎恭久氏(自民)から安全宣言を出した経緯を問われると「特に事前に(首相に)相談したことはない」と発言した。この答弁が正しければ再稼働の前提となる安全宣言が、首相も知らないところで決まったことになる。野党席からは「絵に描いたような内閣不一致だ」「統一見解を出せ」などのやじが飛び、委員会室は騒然となった。
事の重大さに気づいたのか、海江田氏は午後の質疑で「事前に首相には伝えていた」と修正した。本当に菅首相が「安全宣言」を知っていたのかどうかは分からない。ただ、はっきりしているのは菅首相が、玄海原発の再稼働問題で表に出るのを極端に避けているということだ。
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遅すぎる「ストレステスト」
http://www.jiji.com/jc/v?p=foresight_7702
Foresightコンテンツ 九州電力玄海原子力発電所(奥)。4号機(左)、3号機の原子炉建屋が見える。玄海原発は2号機、3号機が定期点検中で2011年7月の運転再開を目指していたが、九州電力の「やらせメール」事件をきっかけに、白紙に戻った=2011年5月24日、佐賀・東松浦郡玄海【時事通信社】
菅首相は古川知事が求めている会談についても「基本的な考えをしっかりしなければ会っても申し上げられない」と当面は応じない考えだ。全原発を対象とした安全検査(ストレステスト)が近く行なわれることになり、それを待とうという理屈は分かるが、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の運転停止要請の時には記者会見までしたのとは対照的だ。これは自身が「脱原発の雄」として延命を図ろうとしているため、再稼働の判断をしたという印象を与えたくないからだ。原発事故後、4カ月近くたってから安全検査をやることにしたこと自体「自分が首相の在任中は、原発の再稼働は避けたい」という思いが反映しているとも受け止められている。
このような菅首相の「ご都合主義」に海江田氏は怒り心頭で、7日の参院予算委員会では「時期がきたら責任を取る」と辞任をほのめかした。いっこうに辞めようとしない菅首相に対する抗議の意味が込められているのは言うまでもない。
ところで、菅首相は本当に「脱原発」なのか。結論から言えば「そうではない」。
菅首相は昨年6月に就任して間もなく、新成長戦略をまとめた。戦略では「原子力の着実な推進」と位置づけ、原発の輸出を柱に据えていた。つまり原発推進だった。
その菅首相が考えをシフトさせたのは東京電力福島第一原発事故が原因だ。ただ深刻な被害に直面して考えが変わったというより、国民世論が「脱原発」に傾いたのを意識したと表現した方が正しい。時流に乗ることで、地に落ちた政権の求心力を再び高めようとしているという見方は、今や与野党の共通認識だ。
浜岡原発の停止要請、電力会社の発送電分離の検討、そして再生可能エネルギー特別措置法案などの「脱原発」路線のイメージが強い行動を矢継ぎ早に行なっていることからも、こういった思惑が透けてみえる。
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場当たり的な戦略
http://www.jiji.com/jc/v?p=foresight_7703
Foresightコンテンツ 会談に臨む菅直人首相(右)と国民新党の亀井静香代表。亀井氏は首相を支える貴重な人材だ=2011年7月11日、東京・首相官邸【時事通信社】
菅首相は、今年1月、今国会召集を前に、与野党が激しく対立しそうな法案は国会提出をできる限り見合わせるよう古川元久官房副長官(当時)らに指示。再生エネルギー法案も提出を見合わせることがほぼ決まっていた。ところが経済産業省が巻き返し、法案提出にこぎ着けたいきさつがある。
このエピソードは、2つの事実を示している。まず菅首相が、この法案に思い入れがなかったこと。そして法案の内容がストレートに「脱原発」に向かうものではないことだ。
太陽光や風力などによる発電の全量買い取りを電力会社に義務づける再生可能エネルギーの買い取り制度は、確かに、再生エネルギーによる発電増加の後押しをすることにはなるが、電力会社の地域独占の見直しや発送電分離とは何の関係もなく、コストは電力料金に上乗せされるから、電力業界も受け入れられる。原発を推進する立場の経産省も、温室効果ガス削減の一策として積極的に取り組んできた。「脱原発」とは関係ない。民主党はもちろん自民党ですら2009年の衆院選マニフェストで法案制定を約束している。その自民党の執行部が、成立に反対するかのような言動をとるのも問題ではあるが、同法案は本来、原発推進か、脱原発かの分水嶺となるような法案ではないのだ。
そもそも福島第一原発の事故以降、原発をこれまで通りに推進しようという政治家はいない。その流れの中で、菅首相は「脱原発解散」で窮地を抜け出そうとしていると言われるが、「脱原発」という言葉はあいまいだ。定期検査中の原発を再稼働させずに来年には事実上原発をなくしてしまうという考えから、再生可能エネルギーの普及を待って中長期的に原発依存を減らす考え、新規建設は行なわないが既存の原発は利用するという考えなど、幅は広い。そのあいまいさを利用しようという発想は、なかなかしたたかではある。だが、菅首相の場当たり的な戦略は反発を買い、その思惑は、国民にも完全に見透かされているようだ。毎日新聞が7月2、3日に行なった世論調査では内閣支持率は前回調査と比べて5ポイント下落して19%に。これでは、「脱原発解散」の現実味も薄らいでいくばかりだ。
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