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騙すほうが悪いか、騙されるほうが悪いか
飯島 勲 「リーダーの掟」
プレジデント 2011年7.18号
大半の政治家は、票とカネにしか興味がない。誰かと名刺交換をすれば、「こいつは票になるのか、カネになるのか」を瞬間的に判断する。
小泉元総理秘書官 飯島勲 写真=PANA
キーワード: リーダーの掟 飯島勲 選挙
政治家から届く「招待状」の意味
「ズルい菅、ワルの小沢、バカな鳩山」が定評となりつつある永田町……。(写真=PANA)
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「ズルい菅、ワルの小沢、バカな鳩山」が定評となりつつある永田町……。(写真=PANA)
政治家から政治資金集めパーティへの招待状がきたことはないだろうか。会の趣旨、日時、発起人の名前が連なっていて、「会費3万円」と書かれた文字の上に、わざわざ「ご招待」とスタンプが押されているそれだ。
なぜ、「ご招待」とだけある招待状を送ってこないのか。3万円を暗に払えと言われているような気がする。よく読むと、パーティの発起人が、5人も6人もいて、誰から送られてきたかよくわからない。推測するに、招待状に潜む政治家の意図はこうだ。
自分に信用がないと自覚がある。加えて、業界のドン、組織のボス、派閥のボスの名を発起人に入れておけば、関係団体や官庁、企業が一枚ぐらいはお付き合いで買うと信じている。発起人全員が出席することはまずないが、パーティにさえ来させれば、雰囲気にのまれて自分のことをすごい人間だと錯覚するだろう。どんなに情けない自分であっても、演壇に立った出席者はみな自分のことを手放しで褒めてくれるのだから。
パーティなど開かなくても立派に立法活動をしている政治家がいる以上、必要以上にお金を集める理由がどこにあるのだろう。しかしこの手口、どこかで見たことはないだろうか。
ペテン師。そして詐欺師だ。
人の良心につけ込む永田町の住民たちの本来の職業の名だ。
最近、鳩山由紀夫氏は、菅直人総理をこう呼んだが、その鳩山氏であっても、「(普天間移設に)腹案がある」と言って実はなかったり、「政治家を辞める」と言って辞めなかったり、と菅総理を責める資格のないような言動を繰り返していた。権謀術数蠢く永田町にあって、騙すほうも悪いが、騙されるほうはもっと悪いと思う。国民の生命と財産を預かる政治家にとって愚かであることは、すなわち罪なのだ。
政治家が騙される詐欺事件は後を絶たない。問題が表ざたになると地元での評判が地に落ちるために、明るみに出ていないことも多い。今回は、北海道の何の価値もない原野を何倍もの値段で買ってしまった実際の事件をお教えしたい。
大半の政治家は、票とカネにしか興味がない。誰かと名刺交換をすれば、「こいつは票になるのか、カネになるのか」を瞬間的に判断する。票にもカネにもならないとなると、すぐに興味を失い、その場だけやり過ごす露骨な態度に出る。だから、人気も出ないし自分の政治活動が安定しないのだが、愚かだからそのことに気づけない。
パーティ会場。ペテン師が、政治家に近寄る。
「ご紹介したい地元の資産家がいるので、のちほどお引き合わせしたい」
と、アポを取り付ける。
後日、さらに立派な身なりの人間(A)をつれてペテン師は国会の事務所に現れる。
「実は、北海道で豊富な石油が採れることがわかった。相談に乗ってほしい」
身構える政治家に対し、ペテン師は誠実そうに語りかける。
石油の第一発見者であるAは採掘権を得たが、地権者から周辺の土地の権利すべてを買いたいので、議員先生に力を貸してほしいというのだ。
半信半疑の政治家であったが、ひとまず、現地に視察に来てくれないかと誘う。議員特権があり、北海道への飛行機代が無料(もちろんエコノミークラスではない)の政治家は快く引き受ける。宿泊費もAに出せと要求するだろう。
北海道の原野である。空港から数時間、道なき道を車で走り続け、やっとクルマが止まった。
Aは政治家に言う、
「ここから30分ほど歩きます」
日ごろ、運動という運動をしていない政治家は渋い顔をするが、石油利権にからめるのならば、と歩きだす。最近のガソリンの高騰も頭から離れず思わず微笑がこぼれる。
「着きました」
と、Aが言う。政治家が辺りを見回すと、黒い液体が周辺一体に水溜まりを作っている。Aは、カバンからおもむろに試験管を取り出すと、政治家にその黒い液体を入れるように促す。
政治家は、ジッと黒い液体を睨む。確かに、臭いといい、粘り気といい石油に見える。Aは、そこで、
「これを持ち帰って、その液体の正体を調べてもらいましょう。臭いをかいでいただければ、石油であることはわかっていただけると思います。しかし、問題は石油の質なのです。
現在まで、日本でも石油が採れる場所はたくさんありました。しかし、そこでうまくいかなかったのは、石油の質がよくなかったからなのです」
政治家は、確かにそうだ、とうなずき、いくつかの試験管に複数の個所から石油を採取し、栓をして、自分のカバンに大事そうに入れた。
憐れ! 政治家、強欲の末路
政治家はどこでペテンにかけられたか
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政治家はどこでペテンにかけられたか
札幌のすすき野の夜を十分に楽しんだ後、政治家は北海道を後にした。もちろん帰りの飛行機代も国民の税金だ。
帰ると、政治家は経済産業省の役人を呼んだ。
「極秘で、この試験管の中の液体を分析しなさい。おそらく石油ではないかと思われるが、その石油の質が、一般に流通しうるレベルなのかどうかまできっちり調べなさい。この調査の目的や理由などは決して探らないこと。私の言われたことを官僚が直ちに行う。これこそが政治主導だ」
1週間ほどたって、官僚は分析結果を持ってやってくる。
「どの試験管もほぼ同じ成分でした。どれも正真正銘の原油です。通常の方法で精製すれば一般のガソリンスタンドでも扱えるほどの上質の原油でした。先生、これをどこで手に入れたのですか」
「余計なことは聞かなくていい、もう下がってくれ」
政治家は、Aを国会事務所に呼ぶ。
「あの件だが、地権者とどんな話になっているのだ」
「地権者は、まだ石油が出ることを知らないのですが、私があの土地を買うことを不審に思って、土地を買う理由を教えないなら相場の5倍の値段で購入せよと言ってくるのです。20万坪もあるあの広大な原野をその値段で買うことはできません。そこで困って先生のところへご相談にあがったのです」
「それならば、私が直接その人と交渉してあげよう。その方の連絡先を教えなさい」
連絡先を知った政治家は、すぐに地権者に電話をかけ、「10倍の値段、1坪500円で20万坪を買う。1億円だ。ただし理由は聞くな」と持ちかけ、相談を受けたAからの石油利権の横取りをも狙う。
しかし――。実際に、北海道の原野に溜まっていた石油は、政治家が視察に来る前に、ペテン師が撒いたものだったのだ。強欲に満ちた政治家はそうとは気づかず、わざわざ公的な証明まで出させて罠にはまり込む。
この手口では、何一つ証拠が残らない。政治家は「理由も告げないことを条件」に土地を購入したにすぎない。
政治家事務所に陳情に来るような案件は、どうしようもないものばかりだ。企業にも、法律にも、銀行にも、見捨てられてからやってくる。官僚もそれを心得ていて、「政治家案件」の陳情は聞くだけ聞いて受け流すのが常道だ。しかし、愚かな政治家はすぐ騙されてしまう。
実はもう一つ、永田町を席巻した、いわゆる「M資金」と呼ばれる大型詐欺事件がある。実際の銀行、ホテルを舞台に、大規模な詐欺集団の手によって、大金がめまぐるしく動くダイナミックな事件だった。愚かな政治家はここでも間抜けな行動に出て大金を失う。本連載の読者諸賢が類似の詐欺に巻き込まれないため、詳述したいのだが、残念、紙数が尽きた。
※すべて雑誌掲載当時
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『小泉元総理秘書官が明かす 人生「裏ワザ」手帖』飯島勲著(プレジデント社)
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